28.やばい。やっちゃったよ
「なるほどだいたいの状況は理解しました」
アホ鎧とあんぽんたん鎧による、え?その説明でわかんの?というざっくりな説明にシエルはふむふむと何かを理解しているようだった。
「失礼、あなた、名前はなんというのですか?」
「ひっく、ひっく、うぅてんしぃ~?」
「いえ、僕の事ではなく……あなたの名前を知りたいのです」
「……うぅ神様~ユリアを助けて下さい~」青年はすがるような視線を天使……ではなくシエル送っている。
その視線にシエルはあきらめたような素振りをし、それはもぅまるで姉かのように急に笑顔を身にまとった。
「………わかりました。天使です。天の使いです。神からあなたの恋人を救うようにと使命を言い渡されました。現時点では彼女は生きています。でも生死に関わる状況であると下界におりる前に神は申されていました。」
「彼女の生死は貴方にかかっています。一緒に彼女を助けましょう。それに彼女も一番に貴方に助けて欲しいと願っているのではないのですか?」
「さぁ立って。泣いている場合じゃないでしょう?」
シエルの言葉をきいて青年ははっとしたように顔を上げた。そして崩れていた膝を建て直し前をむき歩き出す。
そんな彼にシエルがすっとハンカチを渡し
「そんな泣き崩れた顔じゃ彼女に会いにいけませんね」と笑いかけていた。
いや、どんな展開だよ。噂の王子はちげーなー。俺たちとは何がちがったんだよ。とアホとあんぽんたんはぼやいていた。
ハンカチを青年が受け取り、涙をふくと会ってから今までとは違う表情をしていた。
「取り乱してすみませんでした。最後に彼女が植えた花はこちらです」
と案内を再開し始める。
あー、こういう顔見たことあるなぁ。大事な使命を言い渡した時のシャキッとしたラナックの顔に似てる……。
なんてラナックを視界にうつすと
ラナックがシエルに話しかけるところだった
「彼女は生きてるといってしまって良かったのですか?死んでいるという可能性もありますよ。」
「現状での彼女の生死はわかりません。彼の行動で生死が別れると言っても、嘘ではないでしょう。それに今は彼が道案内してさえくれれば良いのではありませんか?」
すごいなぁシエル様、名前も知らない、会って5分の彼をこうも納得させるなんて
彼の方をみていると。
え?
今、眼があったような気がした。
こちらは鎧なのできちんと眼があったとわかるわけではないのだが。
優雅さじゃなく、天使でもなくて、城下を一緒に回った時みたいな、少しイタズラめいた笑みを、メイリーンは向けられた気がする。
全身に血液がめぐるのがわかる。頬に熱が集まるのがわかる。胸の高鳴りが自分では押さえられないのが、わかる。
うぅ……
一介の鎧をろうらくさせようだなんてシエル様。
なんて小悪魔……。
下を向きながら、地面を歩く私をみて、アホとあんぽんたんはあぁ、隊長落ち込んじまったよ。と話しながらついてきていた。
ちげーわ。ばか。
そう思うが、今は顔をあげられそうにない。
最後に植えてあった花に案内され、鎧組で辺りを探したが、他に植えてある花は見つからなかった。そして人がいる形跡も見当たらなかった。
「今までの待ち合わせ場所は森のふもとから、待ち合わせ場所まで彼のいった通りにいつでも花が2つずつ咲いていました。2てに別れてる時もありましたが。今回はかなりふもとの方で片方になっていますね。それに、真隣というほどでもでもなく。焦っていたのでしょうか?もしくは、フェイクをかけられて居るのでしょうか。そして、拐われたのであれば争った形跡があってもいいような気もしますが」
「あったのかもしれませんよ。君、ユリアさんを探しに毎日ここに通ったんじゃない?或いは1人じゃないときもあるのでは?」
「はい、俺は毎日探しにきてて、昨日は他の人と一緒に来たりもしてます……」
「そうすると、この辺はずいぶん踏みあとや捜索後が残るし、形跡が消えたと言うことも考えられるね」
ってやべ、ついいつもの調子で話してしまったー!!!おっさんしゃべり意識すんの忘れちゃってた!!あぁぁぁぁぁシエル様めっちゃこっち見てるぅぅぅぅぅーー!!
ららららなっくぅー!へるぷみー!!!
「となると、ここで探してても無駄かもな、今日はそろそろ日がくれる。一旦森を出よう。」
他の部下に話しかけるふりして、私とシエル様の間に入ってくれるとは
ナイスフォロー、ナイスアイデア!これはちゃんとアイリーナに報告しないと!
私のために率先的にシエル様と二人になってくれたし、私とシエル様の間に入ってくれたよ!っていっとくね!
とラナックに言うと。
すごく、マジな声で、ほんと黙ってて下さいと言われた。ほめたのに、あれ?おかしいな
待ち合わせの宿に戻るとユスタたちの鎧がいた。すごく目立ってる。街の人はすごく遠巻きに彼らを見てる。何だあの鎧達は。おぉついに魔王でもでたか。おぉ…くわばらくわばら。なんて様々な声が聞こえてくるが、ユスタ達は全く気にしてなかった。メンタル強すぎ流石かよ。
「おかえりなさいませ」
と、微笑みつつ(鎧なので自信はないが、声色てきに)首尾よくユスタたちが集めた情報を報告してくれた。
森に入る理由としては、山菜集めや秘密の恋仲、はたまた財宝探しという理由や行方不明者の捜索というものであった。
アホとあんぽんたんの思考がずばり解答でびっくり。
そして拐われた時間は昼夜とはず、複数だったり少数、1人で森にいったり、捜索にいったものまでもいなくなる始末。
しかし、拐われた人間は老人を除く、若い女性や子供など抵抗力が弱そうな人間だ。また女性で言えば美しい女性が狙われることが多かったそうだ。
作戦会議に移るまえに一度休憩をとろうという話し、寝るまえにまたみんなで集まろうということになった。
こういう街滞在のとき鎧野郎どもはみんな飲みに行ってくれるので非常に助かる。ラナックは顔バレせずに部下と飲んでいるのだから普通にすごい。そしてシエル様にも声かけていたし、部下も彼に行こうと誘っていた。あの感じではシエル様も一緒にのみにいくだろう。
つまるところこちらはこちらで好きにできるのである。いつものようにユスタが着替えを手伝ってくれる。ミエルダは姉に報告書をしたため中だ。
「お嬢様は今回のことどう思います?可能性としては熊とか狐とか山にいそうな動物の仕業というのと考えておられますか?」
「熊や狐、あと猪とか?がエモノを選ぶとは思えない。やっぱり人為的な何がが関わっているとおもうんだ。そもそも森では人が存在する痕跡を見つけられなかった。いくら視界が悪いからといって目撃者の目を毎回かいくぐっているのも…。視界が悪いのは人さらいも、此方も同じ条件なのに」
どこかの条件が違うにちがいない。
森で、街の人間が、いなくなる。
街の人間が被害にあってるのも事実だし、実際に人もいない。
「……本当に、森でいなくなるのかな?」
思い出せばふもとの入り口も街から遠かった。夜は街灯が少ない。森で人がいなくなるが、実際に見たものはいない。
「森に行く。と言って帰って来なければ、普通は森を探すよね……」
「ユスタっ!ちょっと行ってくるね!」
「え!お嬢様!きちんと服を!下着姿のままですよ!」
「あ!そうだった」
ばっとドアを開けた所ではっと我に返る。そいえばユスタが着替えを手伝ってくれている途中だ。
「うーん。その姿は……淑女としていただけないんじゃあないかなぁ……」
へ??
思った方向とは別の場所からの声。
服を持ってきたユスタがすごい青い顔をしている。
声の方向をむくと。
二人の男性。
1人は片腕とも呼べる部下。顔に手をあて、
あちゃー。やってしまった。という顔。
もう1人は
愛しい婚約者。
久々に鎧を通さず見るとすごく輝いて見える。
あぁ、今日2回目のデジャヴだな……。
メイリーンはただただ、冷や汗が止まらない。




