26.やばい。めんどいパターンきてるこれ
そんなこんなで自部隊にシエル様がいる。正確にはシエル様と、シエル様の従者。いつもシエル様の後についてくる人で背景になっている人である。
そして、自部隊といっても今回は、私、ラナック、ミエルダ、ユスタの4人を含む自部隊には計10人くらいしかいない。
いや、だってお話聞くだけだったからさ。戦でも紛争でもないから10人も多いくらいだよ。
でも100人くらいいれば有象無象私1人くらいいてもわかんないのになぁ。ほんとこうなった今としては1部隊ちゃんとつれてくるべきだったよ
それにしても凄い絵面。鎧、鎧、鎧、天使、従者、鎧、鎧、鎧といったような凄く鎧に囲まれている。シエル様は鎧に若干違いはあるけど誰に話かけたかわからなくなるね~と呑気に従者や鎧と話している。が、私からみるとどうみても鎧軍団のカツ上げ現場なんだよなぁ……。
「隊長俺らはどう動いたらいんですかね?」と鎧騎士の1人が声を上げた。
隊長と呼ばれてギクリとしたが、すかさずラナックが打ち合わせ内容を答えてくれた。
「まずはその森に入るのといなくなった人についての情報収集の2手に別れようと思う。ケーシィとジュンターとお前らは町で……」
はぁぁぁぁこれでシエル様も誤魔化せるといいけど。
事前の打ち合わせありき、とはいえど、心臓が持たないよ。それにしてもラナック……私が隊長とばれないようにするために皆に協力してもらうためとはいえ……あんな嘘つくなんて…………
事は30分前
ラナックが「俺を隊長と呼べ」といった際の事。
「え?ラナック副隊長が隊長ですか?今回は隊長いるのに?」
「隊長帰っちゃうんですか?」
鎧達から何故?という疑問がもちろん上がった。
「いや、その……だな」
帰らんけど、でも、シエル様がいて私は実は王女でして……ともいいにくい。今回集めた鎧たちは戦場仲間だが、もちろん私の正体は40のおっさんだと思ってる。
こんな事になるならエルウェン隊から何人か連れてくるべきだったかなぁ。私の正体ご存知だし。でも皆忙しいからなぁ…………
言い訳考えてなかったよ……
なんて言い訳をどうしたもんかと悩んでいると、
「お前ら、隊長の心境を考えてやれよ。隣国で天使とうたわれる王子様と隊長が会話する事になるんだぞ……お前らだけでなく、俺にも顔をさらけ出せない隊長が……目の前に見た目で天使と騒がれているがいたら、いくら器がデカイ隊長だとしても殺意わくだろ?お前ら神は不公平だと、天に抗い暴れだす隊長を止められるのか?」
ラナック?それどういうこと?私はめちゃんこ不細工って設定なの?
そんなの信じるわけ
「隊長……やっぱり……」
「たい……ちょー……」
「だからいつも鎧かぶってたんすね」
「すんません。さっき俺不躾なことを」
何故か皆それぞれ納得したような声や、仕草が見られた。
って!おい!!やっぱり……ってなに?その同情の眼差しなに?だからいつも鎧かぶってたんすね。じゃないし!!謝んな!!!不躾なことなんもないから!!!!
なんで信じるの?疑惑あったの?疑惑だったの!?ラナックの今の発言で確定されたの!?
なんたる不名誉!!!
と、めちゃくちゃ心の中で思ったが、実際に否定するわけにも鎧をとって顔を見せるわけにもいかず
「皆、苦労をかけるな…」
としか言えなかった。
そんな事が30分前に起こり、なんならシエル様とあまり近づかないように皆気を配ってくれている。
本当うちの部隊の奴らはいいやつらだよ。気づかいが泣けるけどね。
話は戻り、森と町の2手だが、危険があるため当然私は森。ラナックも森。
シエル様は町で情報収集をしてもらう予定だった。
「情報収集は従者に任せて僕も、森がいいなぁ」
……予定だった。予定は未定。そんな言葉を昔きいたかもしれない。言葉通りであると学んだ。
私から見ればシエル様はどう考えても情報収集が適任なのに何考えているのかさっぱりわからん。
「殿下に何かあると困るのですが」とラナックが食い下がるが聞き入れてもらえず、ラナックから必ず離れないからということで森組となる。
森組はさらに2手に別れるためラナック、シエル様と組んでもらい、私は別行動にしてもらった。
屋敷から少し離れると、もともと東側は農業が盛んでだだっぴろい土地が目立つ。目立つというか、それしかない。
馬でかけてそうも時間が立たないほどに、畑から木々が増えていく。近づけば近づくほど人は少なくなり、森への入り口つく頃には辺りに人気はない。入り口にはフェンスが張られてるくらいで、誰でも入れそうなフェンス扉があるだけ。
鍵もかかってないことに案内についてきた領主さえもびっくり。
森は生い茂る木々に太陽の光は遮られ、どこまでいってもうすら寒く、暗くもあり少々視界が悪い。道という道はなく、同じような木々に埋もれ、探索跡をつけないと帰り道がわからなくなってしまうようなところ。
迷う、はぐれる、または人さらいがおきそこから逃げるなどかなり難易度の高い所業だ。ともかくそのような事が起きたら命の保証はわからない。
「ラナック殿は今回の事件どう思います?我が国の人間が人さらいしてると思われますか?」
シエルは恐らくラナックとおぼしき鎧に話かける。自信がもてないのは、森が薄暗く、同じような鎧だと本当に誰が誰かわからないからである。
「そんな、意見は俺に聞かないで下さい。不用意な発言は争いをうむと教わっております。しかし、事実がどうであれうちの部隊が解決してみせますよ。むしろ俺たちの介入は、解決してこい、と同等であると思います」
メイリーン直属の騎士であるラナックはアイリーナの意図を正しく理解している。メイリーンは絶望した顔で言っていたのだ。「命令だった…」と。本人に言わせれば「あの顔……あの笑顔…失敗はゆるされない」だそうだ。それはまた面倒なことを命令されたもんだな。たまには断ってみたらどうかと思うが、力関係的に無理であろう。自分としてもあのお美しい方の笑顔が見れるのなら解決してみせようと思ってしまう。アイリーナ殿下に組まれたこの部隊は確かに今回の調査に長けていそうだ。戦力としても申し分ない。それはつまり、解決もしてこいということなのだろう。
「流石英雄王。求められることが違うんですね。僕も王子であり、王子である間は騎士として1部隊を任されているのですが、そこまで求められることはないですよ」感心したように、シエルは話す。
「ですが、殿下の国から殿下の話はよく噂で流れてきますよ。文武両道で素晴らしいお方であると」
ラナックがそう返すと、困ったようにシエルは笑う。
「文武両道という言葉を国境外で同じ物差しで計られてると困ります。僕の国で僕は文武両道と言われるのであって、武でいえば大国レビデバに比べたら一介の騎士と変わりません。僕たちのような中国家に対しても平等に考えてくれるというのもレビデバ国のいいところなんですけどね。それ故に歴史ある軍司国家でいえば、最強と唄われるレビデバ国家。その国の歴代の中でも随一と言われる騎士『戦争の英雄王』である御身はとても尊いですね。他国をも救ってくれる手腕。僕もとても感銘を受けているのです」
土や石がごろんごろんと転がってる森で、歩けるような道もないところを歩いていた。
が、急にシエルは足を止める。何かあったのか?それとも疲れたのか?と、ラナックがシエルの方を見ると
「本当に……尊いお人です」
そう話しながらシエルは視線を動かす。ラナックもその視線の先を追った。




