22.やばい。どう考えても甘い
昼食?の店を出た後から何だか、町の雰囲気が違う。どう違うのか目を凝らしてよくみると、兵士が多い。兵士だけではない、うちの騎士もいる。
「何か……あったのでしょうか?」
「そりゃ、何かあってるからね」
「え?」
「隣国の王子の僕と王女様が、今護衛の目の届かない場所にいるからだよ」
「ユスタさんを撒いてかれこれ3時間。全力で探して、くるであろう昼食の場所にもいなかったら、何かあったか心配になる人も、いるのかもね」
確かに、ユスタとはぐれてから結構たつ。戦場でよくおいていってるけど、必ずユスタは私をまず一番に探してくれる。そして開口一番に「お嬢様の実力は信じてますけど、それでも心配なのです!」と怒ってくる。
成る程。それと同じ状況なのね。
「夕方まで時間くれるかなぁと思っていたけど、僕がそんなに信用ないのか、過保護なのか。どっちもって事かなぁ」
「最後の日だし、もう少し誰にも邪魔されず二人っきりになりたかったけど、こんなけ目が多いと難しいね。さすがに僕も此方の城下図までは頭にいれてないからなぁ」
「見つかったらまた護衛つけさせられるもんなぁ。まいた意味ないもんなぁ。うーん」
はぁ……と少しため息をついたシエルは
「メイリーン。残念だけど帰ろっか」
そういいメイリーンの手をとり、兵士の方に歩こうとする。
かえ、る……。
そっか、確かに凄く探されてる。帰った方が良いのかも。
でも……
「メイリーン……?」
思い出すのは今日の出来事
石の店でシエルは経済を大事にしてると知った
大会ではシエルの観察力に驚いた
そのあと将来についても少し話して
お昼ご飯の時にはいつもと違う表情をみた
まだ3時間。でも、今日は凄く楽しい。
それが、もう、おしまい
メイリーンの足が全く動かない。鉛がついたように凄く重い。
不信に思ったシエルが再度メイリーンの名前を呼ぶ。
繋いだ手に力が入る。
「帰り……たく、ないです。もっと。もう少しでいいから、シエル様と一緒に……いたい」
わかってる。わがままだって思う。みんなに迷惑かけてるし……
でも……でも……
「メイ……リーン」
「………………」
しばし、二人の間に沈黙が流れる。
やっぱりダメかと思った時。シエルがため息をつきながらメイリーンに言う。
「はぁ……そんなさぁ、瞳揺らしてさぁ……。ずるくない?ずるいよね?全く……今に僕に拐われてもメイリーンは文句言えないよ。完璧に君が悪いよ」
「??」
「シエ、ル、様?」
何を責められているのかよく、わからない。
え?どういうこと?
なんて思っていると、タイミングよくシエルが答える。
「つまり」
シエルがまたメイリーンの手を引っ張る。今度は兵士がいた方と反対側
「僕も、もう少し君と二人でいれるように努力したいってこと」
「僕1人じゃうまく逃げられないけど、メイリーンと一緒なら土地勘あるし、なんとかなるでしょ。いや、なんとかする」
「だから、もう少しだけ、デート続けよう?」
ね?っといつものように笑ってくれた。
私、今日後何回彼に胸を締め付けられればいいんだろう。この甘い雰囲気に酔ってしまいそう。メイリーンは確かにそう思った。
その後は二人で、こそこそとまるでアサシンかのように動き回った。狭い路地を抜け、時にはでこぼことした道じゃない場所を通ったり、はたまた屋根の上をまたぐといった、貴族、ましてや王族らしからぬ行為をくり返した。
そして、たどり着いた場所は人気の少ない城下の北側にある寂れた教会。
の。
屋根の上。
ロマンチックになると思った?私は思った。ならなかった!!
あれ!おっかしぃな!教会ってファンタジーだと結婚の真似事したりすると思うんだけどなぁ!
でも、教会の中だと兵士が見回ったりしてるんだもん。それに王女や王子が屋根の上にいるなんて誰も思わないよね?そう思ってここにしたんだけど。
メイリーンは項垂れている。
こんなとこ、可愛げのある王女様がくるところじゃないなぁ……。しまった……。めちゃくちゃしまった。どうしよう。今から姉みたいに「高いところ、怖いわ、貴方が支えてくれなきゃ」って隣にいるシエル様にくっついたらいいのかな?
今更。
そう、今更。
散々道じゃない場所を通ってきたのに。しかもここにきて30分以上は経ってる。
白々しいな……。
それにああいうのは姉だから決まる。私がやってもなんだこいつってなる。ラナックに一度姉のマネしてみてやったことあるけど、かわいそうな者を見る目をされたのは忘れられない。
シエル様はどう思っているのだろう。
彼の方を見ると目が合う
「え?」
「風が気持ちよくて、良い場所だね。それに景色も良い」
しっかり目を合わせたあと、ふんわりといつものように笑う。
「メイリーンの家?っていうか城が結構遠くに見えるね。あそこってお昼ご飯食べたところかな?へぇ意外と中心部にあるんだぁ」
「……シエル様…楽しそうですね」
「僕は楽しいから。メイリーンも冒険してる見たいで楽しかったんじゃない?」
「……楽しかったです」
確かに楽しかった。壁をのぼるために工作したり、高すぎで流石にドレスのメイリーンでは登れないところはシエルが引き上げてくれたり。本当に冒険してるような気分だった。やはり自分は退屈な城よりも外が似合うのかもしれない
「凄く、楽しかったのです!」
「ふふ、だと思ってた」
「シエル様も楽しかったの嬉しいです」
「まぁ。僕の思う楽しいとメイリーンの思う楽しいは少し違うかもしれないけど。確かに冒険も楽しかったんだけどね」
「だって、表情が違うからさ、花畑とか湖とかあのときもどこか緊張しているようで、慣れなさそうな感じで、まぁ君はいつでも可愛くて愛しかったけど」
「さっきのメイリーンは凄く楽しそうだった。僕は楽しそうな君をみて、楽しいと思った」
「……シエル……様」
そんな風に、思ってくれて……
「それにさ」
「今、本当に二人っきりだと思わない?」
「護衛もいないし、周りに人もいない。教会の人間だって誰も僕らに気づかないでしょ」
ん?
「昨日の夜の続き、する?」
ん???
「あ、あの、シエル様?あの?」
急にシエルの雰囲気が変わる。凄く覚えている。これは図書館で会った時と似てる。めちゃくちゃ色気があって……。
わたわたとしていると、最初に奪われたのは手。座る時に重なりあわせていた手を握りなおされる。指と指を絡めるように繋がれると慣れないメイリーンはそれだけでどきどきしてしまう。
距離を詰めてきたシエルに次に奪われたのは腰。腕を回され、なんだか逃げられないようになってきた。
最後に奪われたのはやはり唇だった。
シエル様との2どめ口づけは、いつもユスタと食べるお菓子より、姉の作るお菓子より、
―――甘い。
何度か口付けを交わした後。
メイリーンはもう限界だと訴えた。これ以上は心臓が持たないことを伝えると。
「確かに僕も、もたなさそう。心臓ではないけど」
「それに日が沈みかけてるね。完全に沈むと危ないから。帰ろうか」
なんて言われ、子供扱いをされた
「私……夜道は怖くないですよ?」
と、ちょっと拗ねたように返すと
「怖いのは夜道じゃなくて、隣にいる僕になると思うなぁ?」
「???」
謎な返しかたをされた。
あ、なるほど、襲われたときに私がシエル様を守れない可能性がある、そういうことね。
確かにシエル様を守りきれないなんて凄く怖い。
「帰ろっか。メイリーン」
「いい思い出をありがとう。本当に今日は楽しかった。すごく心が満たされた」
「そんな、私こそ、楽しかったのです。いろんなシエル様をみれて、幸せでした。く、口付けも、その
、、う、嬉しかったで、す」
「うん。最後に爆弾落とすのやめようか、帰れなくなって困るの君なんだからね」
こうして、シエルとの城下デートは終わった。




