第十一話 成果
孤月は、作業中の根株を一つ一つ見定めていった。
土地神である孤月には、土の性質も、地中に張り巡らされた根の様子もよく分かる。
「この辺りの土は柔らかい」
「ここは根が深く張っている。人手が要るぞ」
それらの助言を頼りに、千夜は作業の段取りを組み直した。
まずは、少人数でも抜けそうな根株から片付ける。
手間の掛かる大きな根株は後回しにし、村人たちを三つの班に分けて効率よく作業を進めることにした。
孤月の助言があれば、無駄な力を使わずに済む。
千夜の指示のもと、村人たちはそれぞれの持ち場で懸命に働いた。
「っ……よいしょお!!」
同じ作業を繰り返すうちに、村人たちも次第に要領をつかみ、作業の手際がよくなっていった。
後半に差し掛かると、残された根株は次第に大きなものばかりになっていく。そこで千夜は、分散させていた三つの班を一つにまとめ、全員で取り掛かることにした。
中には、一本の根株を取り除くのに二時間以上かかるものもあった。それでも、孤月の助言を頼りに無駄な作業を省き、着実に根株を減らしていった。
そして、作業開始からおよそ四十五日。
村の男手十名を中心に、四町歩もの土地からようやく根株を取り除くことができた。
これほどの広さを、わずか一月半ほどで開墾できたのは異例のことだった。
「千夜さん……あんた、すごいよ……」
泥にまみれた村人の一人が、しみじみと呟いた。ほかの者たちも、疲労の色を浮かべながら達成感に満ちた顔をしている。
これほど大きな仕事を成し遂げられたのは、千夜の知恵と指揮があったからこそ。
村人たちは、改めて彼女の能力に感嘆していた。
「皆さんのお力があってのことです。それに……」
千夜は、少し離れた場所に立つ孤月へと目を向けた。
「皆さんの神様は、本当に頼もしいですね」
その言葉に、孤月は一瞬きょとんとした。
やがて、村人たちの視線に気づくと照れくさそうに頬を緩めた。
「ふ、ふん。当たり前だ」
そう言いながらも、その顔には隠しきれない喜びが浮かんでいた。
*
「……と、まぁ、こんなのは序章にすぎん。実に骨の折れる作業であった」
孤月はフンッと鼻を鳴らし、どこか自慢げに語った。
ここまでの話を聞いていた瑞穂は、しばらく考え込んだ後、ぽつりと口を開く。
「孤月様、うちの先祖に全然相手にされてないじゃないですか」
「…………」
孤月の顔から、すっと笑みが消えた。
「……その、人の気持ちを慮れぬところも、千夜そっくりだ」
強がるように苦言を呈する。
「そこではない!先祖の苦労を想像できんのか、お前は」
「いや、まぁ……すごくリーダーシップのある女性だったんだな、とは思いましたよ」
「そういう話をしているのではない!」
孤月は頭を抱えた。
まったく、近頃の人間ときたら、何でもかんでも恋だの愛だのと……。
千夜がどれほどの苦労を重ね、この村のために尽くしたのか、少しは分かってほしいものだ。
「それで、その後はどうなったんですか?」
瑞穂は悪びれる様子もなく、先を促した。
「……お前なぁ」
こちらの様子を物ともしない。その悪気のないところも、どこか似ている。
そんな特徴は遺伝しなくてもいいのに、と孤月は思った。
呆れたように彼女を見やった後、やがて小さく咳払いをする。
「……よかろう。続きを聞かせてやる」
そうして孤月は、再び遠い昔の出来事へと思いを馳せた。
ルレクチェです。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!
まだまだ手探りではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。
これからは、もう少しドキドキするような恋愛要素も増やしていく予定ですので、そちらも楽しみにしていただけたらと思います。
ご感想やアドバイスなども、お気軽にお寄せいただけると嬉しいです。
今後とも『狐神の開墾記』をよろしくお願いいたします!




