5.アリアの失態
その日もアリアは一人で中央の塔で結界を張っていた。フランク王子のお陰でその日も寝不足でコンディションは最悪であった。
眠たいな。そう思いながら欠伸をした、次の瞬間アリアは感じ取った。愚魔の集団の侵攻を。
アリアはジェンヌとリリーの話を思い出す。愚魔の数が増えていると。それでありながら国への攻撃は増えていなかった。その事実にアリアは不気味さを感じていた。まるで愚魔の軍団に統率者がいるのではないのかと。そして今確信する。統率者は存在する。そして今日、一斉に攻撃を命令してきたのだと。
アリアはすぐ様に通信魔術を使い結界の任務にあたっている聖女たちに連絡した。
「至急皆様に連絡します。東側より大群の愚魔が来ています。防衛体制を整えてください」
アリアの声に了解という言葉が返ってきた。
次いで、緊急時に備え等の仮眠室で待機している聖女たちに応援要請を送った。直後、大量の愚魔たちの攻撃が始まった。その規模は過去に類を見ないものであった。
それでもアリアの要請に応えた聖女たちがすぐに駆け付け、結界魔法に力添えしたため愚魔たちの猛攻に耐えることができていた。
これなら大丈夫。アリアがそう思った、その時であった。
アリアはあってはならない力を感じ取った。
(これって、内側からの攻撃!?)
アリアは確かに感じ取った。結界の内側からの攻撃。
結界は外側らからの攻撃に対するものである。内側からの攻撃は想定しておらず、恐ろしく脆い。
アリアがその攻撃を感じ取って十数秒後、結界の一部が破壊された。
破れた結界の隙間から大量の愚魔たちが国内に侵入した。アリアはすぐに全聖女に通信魔術で緊急事態を伝えた。間もなく、各地で国民に緊急避難を報せる鐘が鳴り響いた。
そしてアリアは、駆けつけていた二人の聖女に結界の役を頼むと、すぐに街へと出て、愚魔を浄化し始めた。結果、アリアは侵入した実に6割の愚魔を退治した。それでも侵入した愚魔を全て退治した時には、100人を超える死傷者を生んでしまっていた。
国内に侵入した愚魔の大群を退けたアリアは改めて考える。結界が破られた最大の要因である内部からの攻撃のことを。それはつまりは愚魔の侵入を許していたことになる。しかし、アリアはもうひとつの可能性を疑っていた……聖女の裏切りである。
(まさかね……)
考えを巡らすが誰もそんなことをするとは信じたくなかった。例えライバル関係のリリーであっても
事件の翌日、王の間にアリアは呼ばれていた。結界の要である党の中央の結界の任に当たっていたアリアの事情聴取を行うためである。王の間にはフルト国王、フランク王子そして聖女を引退し裏方に回った元聖女のお偉いさんたちが勢ぞろいしていた。
フルト国王はアリアに問う。
「聖女制度始まって以来の大失態だ。聖女たちが国を守るようになってからこの国は愚魔の侵入を許さなかった。こんな事件は大賢者ホローカスが退治した牛鬼以来である。残念ながら、今回の敵は牛鬼ほどのものではなかった。それを踏まえて今回の件、どう責任を取るつもりだ」
愚魔が侵入した後のアリアは鬼神の如くの活躍であった。それでもアリアに対するフルト国王の声は冷たかった。
アリアはどう言えばいいのか、言葉を選びながら口を開く。
「この度の失態は私の未熟ゆえのものであります。しかし。お聞きしてください。今回の攻撃は明かに意思があり、かつてない統率のとれた攻撃であり、そして……内部に侵入していたと思われる愚魔からの攻撃もありました。愚魔が国内に侵入していた。あってはならない事態ですどうか、一度内部調査をお願いします」
アリアの誠心誠意の言葉であった。だが、その言葉もフルト国王には届かなった。
フルト国王は顔を真っ赤にしていた。
「愚か者め!! 己の失態を認められないのか!! 内部からの攻撃などあるはずがない! 我が国は常に聖女たちの結界に守られていたのだからな! 貴様が破られる今日までは!!」
アリアは悟った、この国王は聞く耳を持たないと。それでも自身の考えを伝えようとした
「まことに申し話ありません。それでもどうか聞いてください。 外からの愚魔たちの攻撃だけなら耐えられえたはずです。しかし、内側からの攻撃があったため結界は破れました。どうか、内部調査をお願いいたします」
再度のお願いも、フルク国王には言い訳にしか聞こえなかった。
「もうよい!! 己の失態を素直に認めてくれればと思っていたが、まさかそんな虚言を言うとは!! 己の未熟さも認められないとは、醜い!! 貴様は国外追放の処分とする! 明日の朝までに我が国から出て行け!! 言うまでもないが我が息子との婚約は解消だ!!」
アリアは心底呆れた。
内側からの攻撃、それがあったのは確かである。それは愚魔が中に侵入していた、あるいはアリアはあえて言わなかったが聖女の誰かが裏切っている。どちらにしても決してあってはいけない非常事態である。その可能性があると忠告しているのに国王は考えるのをやめ、全ての責任をアリアあに押し付けたのだから当然である。
王がバカだと大変だ。しかし、国外追放はさすがに困る。アリアはどうすれば説得できるか考えを巡らしたが全てが手遅れであった。
フルト国王は既に退席し、アリアの処遇、国外通報は確定した。
アリアがその事実を受け入れるのに数秒かかった。
「あれ? マジで?」




