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魔女と聖女は紙一重  作者: 未々山田


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4.アリアの婚約

 アリアが聖女学院に入学してから約2年の月日が流れ、卒業の日を迎えた。


 修了式、式典の場。


「それではこれより、成績優秀者3名の表彰を行います。呼ばれたものは前へ。第三席、ジェンヌ・ダリア」


「はい」


「第二席リリー・モリス」


「はい」


「首席アリア・リア」


「はい」 3人は壇上に上がった。


 結局、2年の間にアリアとリリーの評価が覆ることはなかった。


 3人が賞状を受け取り式は終了した。


 アリア、リリー、ジェンヌを含めた11人が新たに聖女になった。




 式から1週間後。アリアたちは聖女見習いから正式な聖女となった。アリア目線で言えば、聖女という名の究極の肉体労働が始まった。


 アリアは当初、先輩聖女たちから学園入学時と同等の嫌がらせを受けることを覚悟をしていた。しかし、聖女たちは見習聖女たちとは違い、そんな嫌がらせは全くなかった。むしろ、歓迎された。


 理由は簡単だ、今の聖女たちはアリアは愚か、リリー、ジェンヌと比べても遥かに劣っていた。その自覚が聖女たちにあった。だからこそ、自分が王子の相手に選ばれ王妃になるということはないと理解し、ただただ強力な聖なる力を持つアリアが同僚になり仕事の負担を減らしてくれることを期待していた。


 アリアはその期待に見事に応えた。聖女たちは国に結界を張るために国のに中央にある塔に3人、北東、南東、南西、北西にある各見張り台に二人ずつ常時配属される。


 しかし、強すぎるアリアは良くも悪くも特別であった。アリアが聖女になって1週間後、アリアは一人で中央の塔を任されるようになった。


 このことは他の聖女たちにとってありがたいものであった。単純に勤務日数が減るのだから。だから嫌がらせはなかった。


 このことはアリアにとってどうかというと、別になんらの問題もなかった。


 アリアの能力的にひとりでも苦なく任務をこなせた。自身の力を認められ、先輩たちから嫌がらせを受けない環境。それはアリアにとって満足いく環境であった。


 アリアにとって満足のいく環境になって、約9か月後の事であった。


 結界の任を終え、帰路に向かう途中、外から戻ってきたジェンヌとリリーを見つけた。


「ジェンヌ、護衛任務だったの?」


 聖女の主な仕事は国を守るための結界を張ることであるが、外交のために城壁の外に出る王族の護衛の仕事もあった。他にも増えた愚魔を退治するため討伐の仕事などがある。


「あっ、アリアちゃん。うん、フランク王子の護衛で今戻ったところなの」


「お疲れ様。どうだった? 外の様子は? なんか厄介な愚魔増えたりしてなかった?」


 アリアの気軽な問いに、ジェンヌは曇った表情を浮かべた。


「その、アリアちゃんは、どう思う?」


 ジェンヌの問いの意味がわからずアリアは眉をしかめた。


「いや私は行ってないからわからないんだけど」


「結界を張っていたのにわからないわけ? 明かに愚魔の数が増えてたわ」


 ふたりの会話に割って入ったのはリリーであった。


「別にそんな感じはしなかったけど」


「ふーん、じゃああんたの言葉を信じるなら、愚魔たちは数を増やしているのに攻撃を仕掛けてないってことね」


「そういうことね。でもそれ気になる話ね。愚魔たちが増えてるのになんで攻撃が増えてないのよ?」


「そんなのあたしが知るわけないでしょ」


「はあー、実際に愚魔を見たならなんか感じる者があるでしょ? あーあ、あんたに期待した私がバカだったわ」


アリアはわざとらしく大きなため息を吐いた。リリーは明かにイラっとしていた。


「あんた、なんでそんな厭味ったらしい言い方しかできないわけ?」


「それはお互い様じゃなくて?」


 ふたりの間に火花が散った。少なくてもジェンヌにはそう見えた。


 その火花を消すように、リリーがため息を吐きながら視線を外した。


「まあ、いいわ。あんたといがみ合ってももう意味ないし」


「はあ、どういう意味よ?」


「……私たち世代の聖女の最上の幸福はフランク王子との結婚。あたしもそれを目標にしていたわ。でもね、今回の遠征でわかったわ。もう戦いは終わったんだって」


 アリアは首を傾げた。


「は? どういうことよ?」


「フランク王子の護衛任務をしたこの三日。王子はずっとあんたのことばっかり聞いてきたわ。これまでもあんたにアプローチはあっただろうけど、今回のはもう別ね。確定したのよ。次の王妃はアリア、あなたよ」


 リリーはそっけなく言った。一方、アリアは複雑な顔をしていた。


「うーん、やっぱりそれは拒否できないものなのでしょうか?」


 アリアはなぜか敬語になっていた。


「無理よ。それに王妃になれるのよ。拒む理由がある?」


「いやー、なんというか、フランク王子が良いい奴っていうのはわかるけど、気が合わないというか……」


 リリーはわなわなと震えた。


「あんた、どこまで本気なの!?」


 リリーは怒声を上げた。


「いや、常に本気だけど」


 アリアは弁明した。


「聖女は皆フランク王子のお嫁になることを夢見てたのよ。それなのに選ばれたあなたがそんな態度、他の聖女たちはどう思うかしらね?」


「そうだよアリアちゃん。他の聖女たちの気持ちを考えて。皆、フランク王子と結婚したかった。でもそれは叶わなかった。アリアちゃんという強力なライバルがいたから。それなのに当のアリアちゃんがそんな嫌そうだったら皆報われないよ」


 ジェンヌは笑顔でそう言った。しかし、アリアは一ミリも納得がいかなかった。


「ふたりだからはっきり言うわ。他の聖女たちがどれだけ王子に熱をあげているかなんて関係ない。王子は良いお人だけれど、恋心は一切抱いていないわ。もし私に自分の伴侶を選ぶ権利があるなら王子は選ばない、王妃になれるとかの特典があったとしても。だって好きじゃないから」


 アリアの目は真っすぐ純粋であった。リリーはため息を吐いた。


「あんたが頑固なのはわかってたわよ。それでもフランク王子との結婚は避けられないわよ。あんたに拒否権はない。それはわかってるでしょ」


 王政の国で王子の求婚を拒否することは不可能であった。


「それくらいはわかってるわよ。」


 そう言いながら、アリアは不満そうであった。


「どうだか。まあ、本気かどうかはこれからわかるわ」


「どういう意味よ?」


 アリアは眉をしかめた。


「さっきも言ったでしょ、フランク王子にあんたのことを根掘り葉掘り聞かれたって。はっきりと好きではないと言うフランク王子からの猛烈なアプローチに頑固なあんたが耐えられるかって話よ」


「猛烈なアプローチって……」


 アリアはうんざりした表情であった。


「フランク王子帰り道言ってたよ。もっとアリアちゃんのことを知るため努力するって」


「努力? その努力って何よ?」


「きっとアリアちゃんに毎日会いに行くってことだと思う」


 アリアは青ざめた。


 その翌日から、ジェンヌ、リリーの話通りフランク王子が毎日アリアに会いに来るようになった。本当にフランク王子は自分と結婚することを決めたのだとアリアは自覚した。数日後にはフランク王子とアリアが婚約したという噂が国中に広まっていた。アリアはフランク王子から正式な話をまだ頂いてはいなかったが、噂の出どころは国王だと証言する人が何人もいたので、この婚約には当人の意思は関係ないものだと悟った。


 アリアはもうこの流れを止めるのは不可能だと諦め、覚悟を決めフランク王子のアプローチを受け続けた。


 しかし、そのアタックはあまりにしつこすぎた。


 フランク王子は毎晩、ある時はアリアの休みの、朝、昼に現れた。そうは言っても決してアリアの部屋には入らず、アリアの窓の前にある木の上に上り、窓をノックしてアリアを呼ぶのであった。そして、アリアへの愛の詩を語るのであった。しかし、時折フランク王子の本音が垣間見えた。


フランク王子の本当に結婚したい相手は……。


 フランク王子も不本意に結婚を受け入れている。そのことを理解した瞬間、アリアはフランク王子との結婚も前向きになれた。


 それでも、フランク王子の猛アタックには呆れた。


 フランク王子のアプローチは更に熱を帯び、アリアの仕事の時以外はいつもアリアに会いに来た。それはアリアの寝る魔を惜しんで、いや奪って行われた。結果、アリアは寝不足になっていた。アリアはそれでも我慢した。あと少し耐えれば王妃となり、この寝不足生活が終ると信じ。


 そして、アリアが16歳を迎えるまで残り一ヶ月、運命の日が訪れる。


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