11.アリアの会談③ 魔法
「それでアリア聖なる力ってなんなんだい?」
落ち着いたはずなのに説明する言葉に悩んだアリアは指先で頭をトントンしながら言葉を絞りだした。
「えーとですね、聖女、いや、西における聖女たちが愚魔と戦うときに使う不思議な力です。こう、体内のこの辺から生み出されるエネルギーというか、なんというか。といっても、王子たちも使っていましたよね?」
一方、腕を組んで考えていたレイドはさらりと答えた。
「察するに、アリアが言ってるのは聖なる気のことだね。つまりは呼び名が違うだけで東でも西でも同じ力を使って愚魔と戦っているということだね」
「そのようで、実はそうではないみたいなんですよ……」
アリアは唇を尖らせなんとっも言えない顔をしていた。
「どういうことだい?」
「えーっとですね、なんというか力の根っこは一緒だとは思うんですよ。でも使い方が全く別なんです」
「別?」
レイドは眉をしかめた。
「はい、別です。これは東の騎士の方々を見た私の予想になるのですが、王子たちは聖なる力……じゃなかった、聖なる気を体内に掛け巡らせ、そして体表に張り巡らせることで肉体を強化しているのですよね?」
アリアは実際に地震で騎士を見て、感じたことをそのまま、率直に伝えた。
「驚いた。よくわかったね」
レイドは意外にも言葉の通り目を丸くし、心底驚いているようであった。
「私には聖なる気が見えていたので。でも、まさか、あんな使い方があるとは思っていませんでしたが」
「ふーん、あんな使い方か」
「あっ、すいません」
己の失言を自覚し、アリアは慌てて頭を下げた。
「いや、いいんだ。ただ、じゃあ西ではどんな使い方をするのかが気になってね、教えてくれるかい?」
アリアはゆっくりと顔を上げると、迷いながら口を開いた。
「そうですね……ただその前にひとつ先にお聞きしていいですか?」
「なんだい?」
アリアが視線の先を絵に戻すと、つられてレイドも絵を見た。
「この魔女は一体どんな攻撃をしたんですか?」
何が効きたいのか理解しかねたのか、レイドは少し間を置いてから口を開いた。
「見た目通り蛇だからね。巨大な尾を叩きつけたり、巻き付いたりの攻撃は勿論、手の爪もナイフのように切れる凶器そのものだったらしいよ。でも、特筆すべきは魔法だね」
「魔法ですか?」
アリアは帰ってくると予想していた言葉でありながら、あえて聞き返した。
「そう魔法。実を言うとね、この絵だと魔女はひとりなんだけど本当は何体かいたらしいんだよ。その1体1体が別の魔法を使ってきたらしい、炎とか、雷とかのね。この絵のモデルになった魔女は最も手強かったんだけど、この魔女は氷の魔女だったと言われているよ」
聖女と同じだとアリアは心の中で関心した。直後に感心している場合ではないと自分に言い聞かせた。
「そうですか、そうですよね……魔女ですもんね……」
どう切り出すべきか悩むアリアを見て、レイドが先に切り出した。
「その反応、まさかとは思うけど……」
しかし、切り出しておきながら結局肝心なところで言葉を止めてしまった。言葉を選ぶのを諦めたアリアがレイドの続きを引き継いだ。
「そのまさかです。西では魔法のことを聖なる力と呼んでいます」
「人間が魔法……そんなことありえるのか……?」
真剣な顔でそう呟くレイドを見てアリアは意を決する。
「見た方が早いはずです。ここで聖なる力をお見せしてもよろしいでしょうか?」
「……ここで大丈夫なのかい?」
「指先に火を灯すだけなので」
「そうか、それならやってみてくれ」
アリアは念のためレイドから少し離れ両手の指先を合わせた。そして、ゆっくり離してから右手の小指を立てた。次の瞬間、小指の先に小さな火が現れた。
「……驚いたな。本当に魔法が使えるなんて」
「レイド王子、これは魔法ではなく聖なる力です」
アリアはそう告げ指先の火を消した。
「そうだったね、すまない。でも、正直魔法との違いがわからないよ」
「……実は私もそう思ってました」
2人は真剣な表情のまま目を合わせ、少しの間を置いてから同時に顔を逸らして笑った。
「だったら、そんな真剣な子で言わないでくれよ、アリア」
「すみません、なんかきっちりしといたほうがいいのかなと思いまして、でも私も昔から同じことを思っていたので、つい」
「しかし、これで西の聖女を見たら魔女と思えの意味がわかったよ。言葉の通り魔法を使える女性だったというわけだ」
レイドはもう遠慮なく聖なる力を魔法と呼んだ。
「……それだけならいいんですが」
魔法という呼び方を受け入れたアリアは深刻そうな顔で言う




