その瞳こそが
てっきり、事務的な手続きや私の身辺調査のようなものを行うかと思っていた。
でも、それにしては、ルカニア様がどこかそわそわしている気がしたのだ。
「ああ、それは……」
「それは?」
「あなたに見せたい場所があるんだ」
……どこだろう?
守り手や、王太子の婚約者に関わる場所かしら。
「もうすぐつくから、答えはもう少し待っていて」
「わかりました」
言いにくい場所なのかな。
でも、きっと、悪い場所ではないだろう。ルカニア様のことをほとんど知らないけれど、優しい人だと思うから。
疑問に思いながらも、ルカニア様についていく。
廊下を抜けてエスコートされながら、階段を上がって、階段の上にある扉を開ける。
するとーー。
「わ、ぁ……!」
穏やかな心地のいい風が頬にあたる。
城を中心として大きく広がる街並み、街並みに反射する陽光、澄み切った青空ーー。
雄大な景観に思わず息を呑んだ。
さきほどまで、空を覆っていたはずの雲は一つもない。
「……きれい」
本当に美しいものを見た時、人は言葉をなくしてしまうみたいだ。
「……よかった」
安心したような声に、視線を景色から隣のルカニア様に向ける。
「ルカニア様?」
「あなたに、この景色を見せたかったんだ。あなたは、もともとリーフデの民ではないだろう? そんな中、突然守り手になることになった」
青銀の瞳を見つめながら、ルカニア様の言葉に耳を傾ける。
「それでも、あなたは俺たちと来てくれた。改めて、守り手を引き受けてくれてありがとう。……そんなあなたに俺が一番美しいと思うものを見せたかったんだ」
一番美しいと思うもの。
ルカニア様の大切な景色を、見せてくれたんだ。
「そして、俺が守るべき美しいこの場所の中に今はあなたもいる」
「ーー……」
胸の中に火が灯る。
まだシュバルツに選ばれたという肩書きだけの私だ。そんな優しい言葉を向けられるような存在ではない。でも、だからこそ、肩書きに恥じないように、ルカニア様の隣に並び立てるようになりたい。
足りないことも未熟なことも、すべて克服して、恥じない私になりたい。
せっかく得られたこの熱をもっと燃やして、いつか私も、誰かをーールカニア様を助けられるように。
「私は……」
ぐっと手を握りしめる。
その優しさにその期待に、応えられる私になりたい。
「ルカニア様、この美しい光景を見せてくれて、ありがとうございます。私は、その優しさに誇れる私でいたい。あなたにただ守られるだけの存在ではなく、隣で支えられるように」
そのために学ぶべきことも、すべきことも、きっとたくさんある。
責任の重みに逃げたくなる日もあるかもしれない。それでも、そのたびに、きっと私はこの美しい光景を思い出すのだろう。
「ーーアオリ嬢」
ルカニア様が、私の名前を呼んだ。
そして、ゆっくりと目を細める。
「……ああ、眩しいな」
ーー細められたその青銀の瞳こそ、きらきらと輝いていて眩しかった。
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