決意
「アオリ様……?」
案じる声に、思わず俯いていた顔を上げる。
イーズの美しい緑の瞳は、他の誰でもない私を映していた。
「……イーズ」
そうだ、ーーもう、すべては過去のこと。
そして幸いにも私はこの場所、リーフデ国で居場所を作る機会を得た。この機会を活かせるかどうかは、私次第だ。
過ぎたことをいつまでも握りしめるのは、疲れるし、何より時間がもったいない。
私が生きるのは今なのだから。
「心配をさせてしまってごめんなさい。考え事をしていただけなの」
イーズに微笑むと、ほっとしたようにイーズも微笑み返してくれた。
「ところでーー」
ルカニア様の訪れを待つ間、イーズと他愛ない話をする。
好きな花、感動した物語、得意な楽器……そのどの話も、姉と比較することも、すり替えることもなく、ただ私と話してくれた。
ーー凍えた指先がじんわりと温かくなっていく。
その熱は、当たり前に与えられるものではないものだと知っている。だからこそ、得られた今をなくさないように、私も変わらないと。
改めて決意を固めていると、他の使用人がルカニア様の到着を教えてくれた。
「……お話してくれてありがとう、楽しかったわ」
「こちらこそ。アオリ様と好きなことをお話しできて嬉しいです」
イーズに微笑んで、立ち上がる。
もう、寒気は完全になくなっていた。
◇
「おはよう、アオリ嬢」
ルカニア様が微笑む。
「はい、おはようございます。ルカニア様」
私もルカニア様に微笑み返した。
「俺と一緒に来てもらえるか?」
「はい、もちろん」
ルカニア様にエスコートされて、廊下を歩く。
王城の中をルカニア様と歩いていても、探るような視線を感じない。それどころか、温かな視線が私たちに向けられていた。
「あの……」
思わずルカニア様を見上げる。
「どうした?」
「ルカニア様、ありがとうございます。私のこと、既にある程度説明してくださっているのですね」
「!」
目を見開いた後、ルカニア様はゆっくりと瞬きをした。
「その通り……だけど、よく気づいたな」
「皆様の視線が、優しかったので」
昨日は既に夕日が出る時間だったから、すれ違う人も少なかったけれど。
なにせ、昨日の今日だけに。
ルカニア様がエスコートする見知らぬ女……という扱いを受けても仕方がない気もする。
「そうか。あなたが嫌な思いをしていないのなら、甲斐があったな」
柔らかく微笑んだルカニア様に胸が温かくなる。
「ありがとうございます。……ところで」
「ん?」
「私たちはどこに向かっているのでしょうか?」
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




