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運命の番の妹様は、溺愛されて幸せです!~今更、私が番だったと言われても困ります~  作者: 夕立悠理
二章

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凍てつく心

 墓地に住まいを用意できるはずがないし、イーズがここで嘘をつく必要もない。


 ーーきっと、隣国では幸せになれるわ。

 少女のような姉の笑みを思い出す。


 ーーあなたの雪だるまも、かわいいわよ。

 不恰好な雪の塊を誉めてくれた言葉は、柔らかい。


 ーーほら、こっちに来ないと寒いわ。

 一緒に潜り込んだ薄い布団は、確かなぬくもりがあった。


 全てが嘘というには、あまりにも。

 あまりにも……血が通っていて、だからこそ、混乱する。


「アオリ様?」

「あ、ああ……いえ」


 新聞を置く。姉は今頃式の真っ最中だ。

 姉に呼び出されたのは、3日前。式の準備で、忙しかったはず。

 だから、隣国リーフデのことをあまり調べられないままだった?

 いや、姉の口ぶりだと、前から用意しているようだった。姉は存外抜けているところがあるから……それで、それで……。


 頭の中で必死に言い訳を考える。

 姉は唯一祖国で私を案じてくれた人だと思っていた。

 だから、その前提が崩れるのが、とても怖い。


 姉は誰からも愛され慕われていた。そんな姉が私を邪魔だと思う理由がない。

 私たちは姉の願いで、城に住んでいた。

 姉が一言、もういいよ、と言えば、私はあのおんぼろで温かかった家に帰っただろう。


 ……だから。

 だから、これは何かの間違いや手違いで。



「……イーズ」

「はい」

 緑の美しい瞳は、心配そうに私を見つめていた。

「ガリアンは……墓地の他にはなにもないの? 人の住めそうな場所とか」

「そうですね、死者が穏やかに過ごせるように木や花は植えられてはいますが……」


 ーー花を見せたかったのかしら。


 なんて、ひどく楽観的なことを考える。


 当然、花はチェムターの王城にも咲いていた。


 暖かな日差しが差し込んでいた窓の外は、いつのまにか分厚い雲が覆っている。


「そっか……そうなのね」

 指先が凍えそうなほど冷たい。


 ちらちらと視界に雪が舞う。

 あの一面の銀世界を、覚えている。寒いねって言いながら、雪で遊んでいたあの日。

 鮮やかな赤の髪に黄金色の瞳をした美しく恐ろしい人と出会い、私たちの運命が決定的に変わったあの日。もうあのときには、私は姉に嫌われていたのだろうか。

 それとも、城で不興を買ってしまった?


 自問をしても答えはでない。そうわかっているのに、思考を止められない。

 走馬灯のように姉との日々が、脳裏を流れていく。


 体の芯まで冷えるような寒さが、心を震わせた。

「ーー……」

 祖国にはもはや未練はない。でも、姉に、確かに感じた気遣いさえもーー。

 私には与えられていなかったんだ。

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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