駆け抜ける(レナード視点)
駆ける。
ただ、会いたくて。
その目に私を映して欲しくて。
その結果が、愛ではなく怯えなのだとしても。
それでもいいから、会いたかった。
ーー愛したかった。
ーー大切にしたかった。
ーー償いたかった。
欲望を抱えながら、駆け抜ける。
怪物の住まう魔の森を、ただひたすらに。
「……気配が、ない」
……しかし。
番に接近する気配がひとつもない。幸福感に満ち溢れない。焦りだけが積もっていく。
「そんなはずはない、そんなはずはーー」
生きているはずだ。私の番、愛しい番。
私の生まれてきた意味、私の全て。
だって、もしも……死んでしまっていたら。
私には、生きている価値がない。
竜王国の番は大切に大切にされる。それは、誓いでもあるからだ。
最愛を大切にできる竜が治める国であると、神に示すための。
唯一の至宝すら大切にできない竜に価値はない。
それだけの覚悟を持って選んだはずの番。
それなのに、なぜ、私は間違えたーー?
「神秘を使い尽くした……」
あの女が言った言葉がふと頭をよぎる。
誰が? 私が?
竜の力を使い切った?
だからこそ、番を偽られたことにも気が付かなかったというのか?
「いや、そんなことよりーー」
あの女の言葉はいい。
それよりも今も怯えている私の番を、見つけ出さなければ。
どこにいる?
怯えるなら、私のそばで。
泣くならば、私の腕の中で。
そう誓ったはずなのに。
「どこだ、どこに……」
番をこの森に追放してから早一日。
あんなに細い足で、この森を踏破し、隣国に辿り着くのは不可能だろう。
だから、きっとこの森にいるはず。それなのに、一向に番の姿は見つからない。
頭の中に最悪がよぎる。
何度首を振って追い出しても、その最悪は私の頭の中に絡みついて離れない。
「違う、違う……生きている、生きているはずだ」
まだ君を愛せていない。
まだ何一つ伝えきれていない。
後悔も、懺悔も、償いも、愛も。
森の中を彷徨いながら、必死に痕跡を探す。
「……あ」
森の中間部、布が木の枝引っかかっていた。
「ーー!」
見間違うはずもない。その布は、最後会ったときに番がきていたドレスの一部。
ここまで歩いてきたのか。
たった一人で、何を思っただろう。
私を恨んだだろうし、辛く苦しい想いもたくさん感じたに違いない。
馬から降りて、布を強く握りしめる。
その布からは、微かに番の気配を感じた。紛れもなく本物の多幸感に、泣きそうになる。
布から感じ取れる気配を追いながら、さらなる奥へ。
けれど、ある一点を境に番の気配がぱたりと途切れた。
「死んだ……いや、違う」
死んでいるならば、番の多幸感など感じ取れない。だから、生きてはいるはずだ。
そうであるならば、考えられるのはーー。
「何者かに、拐かされた?」
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