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運命の番の妹様は、溺愛されて幸せです!~今更、私が番だったと言われても困ります~  作者: 夕立悠理
一章

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駆け抜ける(レナード視点)

 駆ける。

 ただ、会いたくて。

 その目に私を映して欲しくて。

 その結果が、愛ではなく怯えなのだとしても。

それでもいいから、会いたかった。


 ーー愛したかった。

 ーー大切にしたかった。

 ーー償いたかった。


 欲望を抱えながら、駆け抜ける。

 怪物の住まう魔の森を、ただひたすらに。


「……気配が、ない」


 ……しかし。

 番に接近する気配がひとつもない。幸福感に満ち溢れない。焦りだけが積もっていく。


「そんなはずはない、そんなはずはーー」


 生きているはずだ。私の番、愛しい番。

 私の生まれてきた意味、私の全て。


 だって、もしも……死んでしまっていたら。

 私には、生きている価値がない。


 竜王国の番は大切に大切にされる。それは、誓いでもあるからだ。

 最愛を大切にできる竜が治める国であると、神に示すための。

 唯一の至宝すら大切にできない竜に価値はない。


 それだけの覚悟を持って選んだはずの番。

 それなのに、なぜ、私は間違えたーー?


「神秘を使い尽くした……」


 あの女が言った言葉がふと頭をよぎる。

 誰が? 私が?

 竜の力を使い切った?

 だからこそ、番を偽られたことにも気が付かなかったというのか?


「いや、そんなことよりーー」


 あの女の言葉はいい。

 それよりも今も怯えている私の番を、見つけ出さなければ。


 どこにいる?

 怯えるなら、私のそばで。

 泣くならば、私の腕の中で。


 そう誓ったはずなのに。


「どこだ、どこに……」


 番をこの森に追放してから早一日。

 あんなに細い足で、この森を踏破し、隣国に辿り着くのは不可能だろう。

 だから、きっとこの森にいるはず。それなのに、一向に番の姿は見つからない。


 頭の中に最悪がよぎる。

 何度首を振って追い出しても、その最悪は私の頭の中に絡みついて離れない。


「違う、違う……生きている、生きているはずだ」


 まだ君を愛せていない。

 まだ何一つ伝えきれていない。

 後悔も、懺悔も、償いも、愛も。


 森の中を彷徨いながら、必死に痕跡を探す。


「……あ」


 森の中間部、布が木の枝引っかかっていた。


「ーー!」

 見間違うはずもない。その布は、最後会ったときに番がきていたドレスの一部。


 ここまで歩いてきたのか。

 たった一人で、何を思っただろう。

 私を恨んだだろうし、辛く苦しい想いもたくさん感じたに違いない。


 馬から降りて、布を強く握りしめる。


 その布からは、微かに番の気配を感じた。紛れもなく本物の多幸感に、泣きそうになる。



 布から感じ取れる気配を追いながら、さらなる奥へ。

 けれど、ある一点を境に番の気配がぱたりと途切れた。


「死んだ……いや、違う」

 死んでいるならば、番の多幸感など感じ取れない。だから、生きてはいるはずだ。


 そうであるならば、考えられるのはーー。

「何者かに、拐かされた?」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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