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運命の番の妹様は、溺愛されて幸せです!~今更、私が番だったと言われても困ります~  作者: 夕立悠理
一章

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私の全て(レナード視点)

 観衆の歓声も、讃美歌も、まるで聞こえない。

 目の前が怒りで真っ赤になる。

 ーーだが、そんなことより。

 そう、どうでもいい相手への怒りの発露よりも、私にはしなければならないことがある。


「はやく、行かなければーー……」


 かわいそうに。

 今も魔の森で怯えているだろう、私の番。

 神の国で見初めたたった一人。

 私が愛すべき、守るべき、唯一の人。


 竜王とは、その本性はすなわち竜。

 だから、私には翼が……、翼、が……。


「……?」


 おかしい。

 翼が生えない。それどころか体の全てが、ただの人のように何も変化が起こらない。起こせない。



 呆然と人の形を保った手を見つめる。


「……かわいそう」

 そんな私を憐れむような声が聞こえた。


「神秘を全て使い尽くしてしまえば、ただ人なのね」

 神秘を全て使い尽くす?

 そんなことをした覚えがない。

 それに、こんな女の言葉に耳を傾けている場合でもない。


 なぜだ、なぜ翼が出ない?

 早く、番を救い出さなければならないのにーー。


 焦れる心とは裏腹に、何をやっても私の姿は変わらない。


 私の番、怯えた瞳でいいからもう一度私を映して欲しい。

 今度こそ、君を愛させて欲しい。

 二度と傷つけない。

 溶けるほどに愛するから。


 そのためには、早く迎えに行かなければならないのに……どうして。



「たとえば、初めて見たはずの景色に感じた既視感」


 目の前の女は歌う様に語りかけてくる。

「たとえば、初めて会うのにまるで見覚えがある人々」


 ねぇ、と囁き、女は続ける。

「そんな体験、ありませんでしたか?」


 覚えのある体験に、耳を傾けたくなる。

 だが、耳を傾けるべきではない。この女は、私の番を騙り、そのせいで番は傷つけられてしまったのだ。

 その原因たる女の言葉は、聞いてはならない。

 きっと、また惑わすことが目的だろう。



「ーー……」


 何度やっても、私の手は人のまま。……それならば。


「レナード陛下!」


 観衆のざわめきも、女の驚愕も、聞こえない。

 いや、聞こえてはいるのだろう。それでも、そのすべては関係がなかった。


「陛下!」


 慌てふためく重鎮たちも、私を止める騎士たちも、すべてを振り切って駆け続ける。


 王家の馬を飼育する厩舎まで行き、手近な馬に飛び乗った。


 早く、早く、一刻、一秒でも早く、救い出さなければ。

 私が微笑まず蔑ろにしたから、私に微笑まない私の番。

 たとえ、君が私を嫌っていようと。愛することはないのだとしても。

 それでも、必ず、見つけ出して迎えに行く。

 それこそが、私の生まれた意味で、目的で、すべてなのだから。

 

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
番を騙ったせいで傷つけられたとかこの女が原因とか、一切自分の非を考えない他責思考、なんなら番の事を考えず自分の都合ばかりでアオリを心配しているんじゃなくて失敗した自分を哀れんでいるのではないかと言う身…
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