その性を(レナード視点)
(レナード視点)
紙吹雪が宙を舞う。華やかな歌声が空気を震わせる。
その全ては、素晴らしい今日のために。
これ以上なく、大切で、最良の一日になるべき今日のために、整えられたものだった。
「ね、陛下?」
小首を傾げて、私を見つめるスカーレット。
あんなにも愛おしいと好きだと叫んでいたはずの心は、今や急速に冷え切っていた。
「……はやく、」
早く魔の森に行かなければ。
そうでなければ、私の本当の番は、愛すべき私の番は。
心ばかりが急くのに、体は暴風雨の中を立ち尽くすかの様に力が出ない。
「大丈夫ですよ、陛下」
ーー大丈夫? なにが?
大丈夫な要素など何一つはない。
まるで慈愛のこもった、それこそ、聖女のような表情で、ただのスカーレットは微笑む。
そう、ただのスカーレット。
番ではない彼女に意味はない。それどころか、気を抜けば、殺してしまいそうだった。
「……あの子はあなたを愛さない。何があろうと。それだけは決まっているのですよ」
「ーー!」
「あら、怖い顔。私を殺しますか? それもいいですね」
スカーレットは告げる。まるで、楽しむ様に、嗤うように。
「でも……あの子はどう思うかしら。あの子の姉である私を殺した陛下を、愛せるかしら?」
ーー姉、そうだスカーレットは、我が番の肉親なのだ。
「姉なのに、大事にしなかった……」
いつも寂しげに目を伏せた番を思い出す。
私たちが二人でいる時、家族の輪に入れない時、使用人たちに噂されている時。
いつも、彼女はその美しい瞳を伏せていた。
「『私』は、大事にしましたよ? あの子ほどではなくても、少なくとも陛下、あなたよりは」
だってねえ、と笑いながらスカーレットは続ける。
「穏便に、優しく、他の国に逃してあげるはずだったのに。国外追放したのは、あなたでしょう?」
「!」
「言ったでしょう、陛下。あの子は、あなたのその性を愛さない。番以外はどうでもいい、番でさえいれば愛する。そんな性を受け入れられない」
まるで、未来でも見通すかの様に、スカーレットは断定した。
「あなたが神の国で見初めたあの子の優しさは、あなたに牙を向く。あなたを愛さないという結果によって」
「……れ」
ーーそんなこと、わからない。
私が大切にできなかったのは、偽られたからだ。偽られたから、大切にできなかった。
本当に愛すべきだったのは、彼女だったのにーー。
「黙れ、スカーレット。お前が、我が番を語るな」
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