確信
守り手になるということは、シュバルツの教育者としての責任、そして王太子の婚約者としての責任、背負うべきものはたくさんできる。
「ルカニア様もシュバルツも私に優しくして下さいました」
優しくされたから頑張る。それだけだと、子供の様な理由だ。
でも、きっと二人は私が守り手じゃなくても、優しくしてくれたのだと思う。だからこそ、私はその優しさが嬉しかった。
優しさは、透明人間の様な私がずっと触れられなかったものだったから。
「私は、二人にも、二人以外にも、優しくありたい。もちろん、過酷な決断をする必要もあるでしょうけれど……その必要がないときは、二人の様に善意を差し伸べられる人でいたい。……なんて、甘すぎる考えかもしれませんが」
私の話に割り込むことなく、耳を傾けてくれていたルカニア様は、ゆっくりと首を横に振った。
「ありがとう、アオリ嬢。あなたのその善性を、損なわせない俺たちであり続ける」
ルカニア様はそう言って微笑むと、私の手の甲に口付けた。
「ーーあなたの全てを大切にすると、誓う」
「!」
男性に手の甲とはいえーー口付けられたのは初めてだ。思わず、頬に熱が集まるのを感じる。
『ルカニア、かっ飛ばしすぎ』
「え? あ、ああ! すまない。感極まって、また同意も得ずーー」
「……ふふ」
さっきまであんなに格好よかったのに。急にあたふたとしだしたルカニア様に肩の力が抜けた。
「アオリ嬢?」
「いえ。……ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします、ルカニア様」
「こちらこそ、よろしく頼む」
微笑んで、見つめ合う。きっと、この人となら大丈夫ーー胸に浮かんだ言葉に、強い確信を持てた。
◇
ーーその後。夜も遅くなってしまったので、ひとまず、私のこれから滞在することになる部屋に案内されることとなった。
「ここがあなたの部屋だ」
私の部屋はどうやら、シュバルツのすぐ隣らしい。教育係として対応しやすそうだから、少し安心した。
「はい。ありがとうございます」
「あなたの専属の侍女はーー」
ルカニア様が呼び鈴を鳴らすと、すぐに侍女服を見に纏った女性が出てきた。
「はい、お呼びでしょうか?」
まとめ髪に、緑の瞳が特徴的な綺麗な女性だ。
「アオリ嬢、こちらはイーズ。あなたの侍女となる」
イーズは、私……そして、シュバルツを見て目を瞬かせたが、すぐに、うなずき、礼をした。
「イーズと申します、アオリ様」
「初めまして、イーズ……」
なにか敬称をつけようか迷った結果、呼び捨てになってしまった。でも、イーズは特に気にした風もなく、頷いている。
よかった、それで正解の様だ。
「イーズ。わかっているとは思うが、アオリ嬢は、守り手だ」
「はい。守り手様をお任せいただき、ありがとうございます、ルカニア殿下。誠心誠意お仕えいたします」
「ああ、頼む。……アオリ嬢」
どうしたんだろう。
ルカニア様は、私に向き直ると微笑んだ。
「もし、何か困り事で同性の方が相談しやすければイーズに。大抵のことはなんでもできる。そして、困り事があってもなくても、俺やシュバルツのことも頼ってくれ。俺たちは、いつだってあなたの力になる」
「……! はい、ありがとうございます」
温かい言葉に胸が熱くなる。
「ああ。……また明日も説明や何やらで忙しくなる。今日は、ゆっくり寝るんだよ」
『ふわぁあ。僕も眠いや、おやすみ、アオリ』
「はい、おやすみなさい。ルカニア様、シュバルツ」
二人の後ろ姿を見送って、部屋に入る。
すると、イーズが真剣な瞳で私を見つめた。
「アオリ様、湯浴みの前にーー、お召し物を脱いでいただけますか?」
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