もう一つの役割
『シュバルツって呼んでよ、アオリは僕の守り手なんだからさ。敬語もいらない』
「わかったわ、シュバルツ」
シュバルツの方を見て、頷くと、シュバルツは嬉しそうに尻尾を振った。
「それでーー、リーフデ国の武人の正体が、帝獣ということでしょうか?」
「その通り。シュバルツは人の形もいずれ取れる様になる」
ルカニア様の言葉に首を傾げる。
「……いずれ?」
「ああ。シュバルツは、幼体なんだ。幼体だと、人の形は取れないし……俺があなたが発狂してないことを何度も確認したのを覚えているか?」
シュバルツの目を見たあとに狂っていないか確認されたことは、記憶に新しい。
「はい」
「幼体は力の制御が効かない。だから、無意識のうちに力を垂れ流してしまう」
そうだったんだ。あれ、でも……。
「私が大丈夫だったのは?」
「ああ、それはーー」
『アオリを守り手に僕が選んだからだよ!』
ルカニア様が説明するよりも早く、シュバルツは元気に答えてくれた。
『守り手と王族には僕の力を跳ね返すーー加護?みたいなものがあるんだって』
なるほど。それなら……納得、かな?
その件に関してもう一つ気になることがあるとすればーー。
「今のシュバルツに、霊体化?が必要ないということも気になります」
「霊体化すれば姿が見えなくなる……他人をおかしくさせることがなくなるんだ。だから、今までは城で霊体化させていた。でも、守り手がいると、帝獣の力が安定するから無意識に力を垂れ流す心配がほぼなくなる」
『アオリのおかげだね!』
シュバルツの頭を撫でる。
そうすると、嬉しそうに尻尾を振って全力で喜びを表現してくれた。その様子が、可愛らしくて癒される。
「そうだったのですね。それで、その守り手……というのは?」
「守り手は、帝獣の力との親和性が強い女性が選ばれる。力に関しては、契約してしまえば特に何もすることはないんだが……他にもう二つ守り手には大事な役割があるんだ」
大事な役割、の言葉に思わず背筋を伸ばした。
「まず一つ目、このシュバルツは見ての通り、まだ幼い子供みたいなものだ。無邪気にも残酷にもなれる」
「……はい」
「だから、シュバルツの教育……情操教育をしてほしい」
なるほど?
シュバルツはいずれ、この国の武の頂点に立つ。その時に、善悪の判断がつかなければ、ただ力を振るうばかりなってしまうだろう。そうならないための、教育係、というわけね。
「わかりました。……もう一つは?」
「それが……」
急にルカニア様が言いにくそうに口ごもった。
どうしたんだろう?
そんなに大変な仕事なのだろうか。
「どんな仕事でも、私にできることならやり遂げます」
祖国と縁を切った以上、私の居場所はここにしかない。
その覚悟をもってリーフデにはきたのだ。
そう伝わる様に、まっすぐにルカニア様の瞳を見つめる。
「……っ、ごほん」
ルカニア様は、なぜか少しだけ赤い頬で咳払いをしたあと、頷いた。
「すまない、あなたの覚悟をみくびっているわけじゃないよ」
大きく深呼吸をして、ルカニア様は私を見つめた。
「守り手のもう一つの役割はーー」
青銀の瞳は、そらされることなく私を映している。その瞳に見惚れていると、ルカニア様が突然跪いた。
「王太子の婚約者なんだ」
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




