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運命の番の妹様は、溺愛されて幸せです!~今更、私が番だったと言われても困ります~  作者: 夕立悠理


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喪失(レナード視点)

(レナード視点)


 ーー私たちを祝福する様に、澄み渡る青空には雲ひとつない。

「……陛下」

 私の愛しい番が……スカーレットが私に向かって微笑む。

 今日は、私が人生で最も待ち侘びた日と言っても過言ではなかった。

 今日こそ、愛しい番との結婚式が執り行われる日。スカーレットと出会って、まもなく10年が経とうとしていた。ようやくとしかいいようがない。


 そもそも、番とは、神の国で生まれる前の魂の時点で強く惹かれた相手だ。

 この魂を愛し尽くしたいとそう誓った運命の相手にその誓いを果たす日。そうともなれば、本物の竜の血を色濃くひく、竜王族の直系にとって、番との婚姻は何よりも甘美で幸福に満ちた瞬間というのも頷ける。


 番に会うまでは、話半分に聞いていた亡き父の話も、今では、これ以上なく実感をもって感じられる。


 その至福のときは、すぐーーそこだった。



「スカーレット」

 私は愛しい番に向かって、微笑み返した。

「とても……とても綺麗だ」

 黄色がかった赤の瞳に、無垢を表す純白のドレスがよく映えている。

 この式は竜王国の王たる私と王妃になるスカーレットの結婚式だ。そのため、衣装替えも何回かあると聞いている。

 シミひとつない白に銀糸の刺繍が施されたドレスは、目に眩しかった。それなのに、あと数度も新しい装いの番を見ることができる。そう思うと、自然と口角が上がった。


「ふふ、ありがとうございます」


 スカーレットはゆっくりと頷いた。

  

「ところで、レナード陛下……」

 スカーレットが私の頬に触れた。

 愛しい熱を感じる。


 この式は、国民に見える様に映像魔法で王都に映し出している。


 さすがに、大きな映像魔法に音声まで乗せることはできなかったがーー、この姿も民たちが眺めていることだろう。


 それならば。


 私もスカーレットの頬に手を添えた。

「……レナード陛下は、何も感じませんか?」

「どうしーー」

 なぜそんな顔をすんだ、スカーレット。

 まるで、愚かなものを憐れむような、そんな瞳を。

 けれど一瞬の瞬きにより、再び向けられた瞳はいつもの瞳だ。

 なんだ……気のせいか?


 結婚式前に不安になる花嫁もいるという。

 それならば、この結婚式の後に愛しい番の不安を取り除いて見せなければ。


「では、誓いの口付けをーー」

 進行役の神父の言葉に合わせ、私は愛しい番の顎を上げ、その唇に触れようとした。

 その、瞬間。

「!?」

 しかし。幸福感に包まれるはずだった私の中に現れたのは、違和感だった。

「……なぜ」


 体を離そうとした時、力強く引っ張られ体勢を崩す。ぶつかるような格好で、唇が重なりあう。


 花嫁からの熱烈な口付けと同時に歓声と花火が上がる。


 けれど、私の中にはずっと抱えていた『番が側にいる』という多幸感が消え、残ったのは強い喪失感だった。

 その結果が指し示すのはただ、ひとつ。

「……、スカーレット、きみはーー!!」

 誰なんだ。私の番ではないのか。これほど永い年月を共にしたのに、なぜ気づかなかったのか。


「私は、レナード様の『番』です。そして、今日からあなたの『花嫁』でもあります」

 そういって、スカーレットが微笑む。


 違う、違う。番のはずがない。そうであるならば、この胸に空いた穴は何だというんだ……!!


 あまりの喪失に胸がちぎれそうになる。


「ふふ、かわいそうで愚かな愛しい陛下」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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