連携
八十尺様の足元でシキが戦っている。
とはいえ、こっちも戦闘の達人なわけではないので、向こうを気遣いながらというのは難しい。
【戦士】スキルを手に入れたけどまだそんなに高いわけでもないし……。
いや、スキルトレーナーで手に入れたときはlv01だったのに、たこパが終わった後で確認したらlv05になっていたのはびっくりしたけど。
邪神の解体だけでそんなに上がったのか?
序盤レベルでラスボスと戦って生き残ったぐらいのことだったってことだったりするのかな?
なんにしろ、姉には感謝……だよね?
追いかけてくる白髪を夕凪の炎で燃やしながら逃げ回り、強い一発を打ち込むタイミングを探る。
焦りは禁物。
アクションゲームと同じだ。
焦って殴り続けたって、こっちの攻撃で一発ダウンになるような難易度調整になわけもない。
冷静に、動きを読んで、確実にダメージを積み上げる。
それが理想だ。
「旦那様、ましろにも手伝わせてください」
スーツの内側で真白がそんなことを言った。
「どういうこと?」
「こういうことです!」
真白の声と共に夕凪に反応がある。
飛んでいる僕の周りに水が現れ、そして瞬時に凍った。
氷の礫となったそれらが八十尺様に飛来していく。
高速で飛ぶ氷弾の連続射撃が命中した。
「おお、すごい」
「夫婦の指輪なのですから、妻のましろにも使えるのです!」
「妻ですから!」と、その部分を強調する。
ホテルでのことを根に持ってるのかな?
まぁでも、僕の中の真白はあのサイズだし、そしてあのサイズの女の子に手を出すような真似はできない。
僕も未成年だしね。
これはもう時間に解決を任せるしかないわけで……って、そんなことを考えている場合じゃないか。
飛び回っている間、真白の氷弾が機関銃のように連射され続ける。
「そんなに撃って大丈夫?」
「はい!」
と、真白の声に疲れた様子はない。
「最近、ずっと強い霊力を取り込んでいましたから問題ありません」
「疲れたら言ってよ」
僕の方は追いかけてくる白髪から逃げたり、燃やしたりするだけで手一杯になってしまっている。
長い髪はいくら燃やしてもすぐに再生してしまっているみたいで、追いかけてくる髪の勢いは止まらない。
どうしたものかな……って。
考えたせいで集中が乱れたか。
足に白髪を巻きつかれた。
なら燃やすだけだと火を向けようとしたら、その手にまで髪が伸びてくる。
学習された?
ジタバタする間もなく全身をぐるぐる巻きにされて……このまま叩きつけられたりするのか?
そうされた。
空を飛んでいたあいつが髪の毛に巻きつけられ、何度も地面に叩きつけられる。
その度に江戸の雰囲気を模造しただけの街並みが破壊されていく。
さすがあれだけやられたら死ぬだろうな。
「へっ、ざまぁみろ」
シキがそう吐き捨てる。
ミカゲはアタシの獲物だ。
誰にもやりはしない。
たしかにいまは倒せないかもしれない。
だが、いつか倒す。
そうしてミカゲはまた強くなり、それに挑むシキも永遠に強くなる。
その関係を邪魔されてたまるか。
軽くなった呪彩棒アヤアカシを杖にして、シキは荒い息を整えられずにいる。
呪符も体力も使い尽くし、もう戦えない。
だが、戦意だけは失っておらずこの場から去ることはなかった。
結局、足の一本も奪うことができなかった。
無限に呪力を吸い続ける存在……ただの比喩かと思ったが、まさしく無限の如く吸い続けて止まることを知らない。
「へへ……」
思った以上に最強の化け物が生まれてしまったが、シキに後悔はない。
退屈な役目に良い刺激ができたと思うだけだ。
だった……のだが。
「ん? おい」
髪の毛を巻きつけたあいつを散々に打ち据えて辺り一帯を破壊し尽くすと、ずっと立ち尽くしただけだったミカゲが動き出した。
その方向がシキには問題だった。
「おい、ふざけんな」
そちらは入り口がある。
裏東京七区の次、甲乙区へと入るための道が。
ミカゲは吸い取り続ける存在だ。
だから、本能のようなものでわかるのだ。
あちらに行けば、より濃密な呪力が手に入ると。
「ざけんな!」
そんなことはさせない。
あちらに行けば、あれは甲乙区の敵になる。
シキの手から離れてしまう。
そんなことは……。
シキが走り出すが、ミカゲの動きは止まらない。
追いかけるべく走り出したが、すでに疲労は足にまで来ていたシキは簡単に足を取られて転んだ。
「くっ」
考えてもいなかった結果に、シキは大事なおもちゃが他人に取られる思いで悔し涙を流す。
後少しで甲乙区に消えてしまう。
その瞬間……影がミカゲを駆け抜けた。
妖刀・風魔魂を持っているときに使えるスキル【忍者】。
そして忍者ならこれっていう技……空蝉の術。
髪に包まれた振りをして近くに隠れた僕たちは、叩き続けることの無意味を悟って弱点を撃つ方向に作戦変更した。
そして探すと言えばこれ。
ダウジングアイ。
だけど、八十尺様の弱点という条件を提示したのに導きの線はなかなか安定しなかった。
「おそらく、目の前に見えているのは集まった呪力が作り出した幻影のようなものです。本物の義姉上様の欠片は嵐に飲まれた木の葉のように動き回っているのではないかと推測します」
「つまり、流れを予測して攻撃を仕掛けて、うまく取り出さないと行けないわけだ」
「そういうことですね」
ダウジングアイを着けて再変身した僕は再び空を飛び、流れを読み取る。
そうして高く飛び上がり……。
「ストライクブーツ」
足をガッチリと守る脚甲で覆うと、放つ。
そうだね、決めると言えばキックだよね。
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