たこパ調理編
姉の悲鳴を聞いて、邪神を解体したストレスを解消した。
変身スーツがタコの粘液でぐしょぐしょだ。
返信を解除してから、アイテムボックスで待機状態になったスーツをきれいにする。
そうしていると……いや、見ないふりをしていたから本当はスーツの掃除が終わった時にはもうそこにあったんだけど……。
でかい卵が数個並んでいた。
「……これは?」
「卵だよ! ご注文の!」
姉の声にはドヤとヤケが混ざっていた。
「どうしたのこれ?」
「人魚に聞いた竜の巣島に行って無精卵をもらってきた」
「無精卵」
竜って、無精卵を産むんだ。
「ちなみにその島は竜にとってのお見合い会場、出会いの場、ラ●ホ、青●スポットらしいわ」
「野生の生物に謝れ」
前半二つはともかく、後半二つはダメだろう。
「ふふふ、今期はオスが少ないらしくて喪女の会ができていたわ」
「うわぁ」
《《今年》》じゃなくて《《今期》》なんだ。
竜の一期ってどんな長さなんだろう?
「邪神のタコ足一本で交換してもらったのよ。感謝しなさい!」
「はいはい」
とりあえず、たこ焼きは何個ぐらい作るつもりなのかを聞いてから、専用鉄板や鉄串……たこ焼きピック、竜の卵を受け取れる巨大ボウルやそれで混ぜる泡立て器を作る。
たこパって言うし、さっきから人魚人魚って言ってるから、人魚も一緒に食べるんだよなと思っての質問だ。
予想通り、人魚も一緒だった。
コミュ障の姉が人魚とか竜とはいえ、たくさんと話をしたり交渉したりするなんて。
「……なによ?」
僕の沈黙になにかを感じたらしい。
こういう時だけ察しがいい。
「いや、成長したなぁって」
「余計なお世話よ」
「その調子でパーティとか組めばいいのに、ヴァレンナさんとか」
「あのね。これでもお姉ちゃんは超一流の魔法使いなの、そう簡単に私に見合う仲間はいないのよ」
「へ〜そ〜なんだ〜」
「ムキィッ!」
姉と喋りつつ準備を進める。
アイテムボックス内でできる準備を済ませると、真白と一緒に買い物に行く。
量が量なので、運転手さんに業務スーパーに連れて行ってもらった。
日が沈んでいたけど、なんとか閉店前に滑り込めた。
「たこ焼きを作るんですか?」
「うん、そう!」
「やったぁ!」
嬉しそうな真白はやっぱり子供だなぁと思いつつ、サラダ油、和風だし、薄口醤油、みりん、紅生姜、青のり、天かす、ソースにマヨネーズ。
薄力粉も絶対足りないので追加で買う。
あ、入れるパックも買わないと。
業者かな? っていう量になった。
業務スーパーで本当に業者レベルの買い物をすることになるとは。
さすがに運んでもらわないと無理。
つまり輸送料もかかる……と思ったけど、輸送に関しては買い物をしている間に東京堂城家の運転手の人が手配してくれていた。
仕事のできる人だ。
とはいえ、輸送量抜きでも相応のお値段になる。
ここで大活躍するのが真白の持つクレジットカードだ。
当たり前のブラックである。
「たすかります」
「いいんですよ、この程度」
と、真白はニコニコだ。
「もっと頼ってください!」
って言ってくれるけど、あんまり頼りすぎるのもなぁ。
「美味しいたこ焼きにするよ」
「楽しみです」
たこ(邪神)焼きだし、材料の卵は竜卵だ。
きっと美味しい。
美味しいんだよな?
基本、異世界の食用可の魔物は美味しかったから、美味しいと信じる。
食材を持ち込むときにホテルの人やその場に居合わせた客たちに驚かれたけど、問題なく部屋に持ち込むことができた。
その後、ホテルの支配人みたいな人がなんか挨拶に来て……いや、明らかに苦情を言いに来たんだろうけど、部屋の中に件の荷物がないのを見て「???」な顔になっていた。
アイテムボックスに放り込んだ後だったからね。
とにかく準備は整った。
さあ、作るか。
巨大ボウルの中に竜卵を割り入れ……割るのも入れるのも一苦労だったけどなんとかがんばった。
再び変身スーツ大活躍である。
黄身と白身を混ぜ合わせるのも苦労した。
弾力がすごい。
やらなかったけど、もしかしたらトランポリンみたいなことができたかもしれない。
食べ物で遊ばないけど。
なんとか泡立て器で切るように混ぜ、薄口醤油やらみりんやら和風だしやらを混ぜて味を確認。
……うん、美味い!
たぶん卵単体がとてつもなく美味い。
指先に付けて舐めただけで後頭部をぶん殴られるような旨味が襲いかかってきた。
暴力的美味さだ。
ここから薄力粉を混ぜていく。
わかっていたけど、一人工場みたいな状況だな。
ブラックなのかな?
勤務時間実質0時間だし。
時給では絶対に働けないな。
そんなことを考えながら生地を完成させる。
タコ足の一本……の半分をたこ焼き用のサイズに切りまくり、その間に鉄板を温める。
鉄板のサイズはお祭りの屋台で見るような現実的な物にした。
さすがにこっちは普通じゃないと使い勝手が悪い。
後はひたすら焼くのみ焼くのみ。
姉と俺と真白の三人……プラス人魚百体分のたこ焼きだ。
一パック十個として百三人分……最低千三十個をこれから焼くのだ。
時間は過ぎないけど時間がかかるなぁ、もう。
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