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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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炎と蛇



 見えるようになった。

 僕の全身を覆っていたのはお札だった。

 長方形の和紙っぽい紙で、なにかが書かれている。

 だから、呪符なのだろう。


 それが全身にべったりと張り付き、しかも何層にも重なって山のようになっている。

 それが重くて動けなかったみたいだ。


 紙だとわかれば。

 そして、その時になって右手の人差し指に嵌めていた指輪のことを思い出した。

 色々と、遅い。

 だけど、間に合わなかったわけでもない。

 結局飛ばせるようにはならなかったけれど……いまはそれでちょうどいい。

 燃えろ。

 そう念じれば、右の拳から炎が上がり、呪符に触れ……全身を山と覆っていた呪符の全てに一気に火が回った。

 気化した油に火が付いたぐらいの勢いで燃え上がり、上昇気流が燃え滓を巻き上げる。


「ああん?」


 ヤンキーみたいな声をあげて緩く火柱を見上げる赤葉羽シキに、僕は向かっていき……。

 だけど、拳を当てられなかった。


「はん」


 嘲りの笑みを浮かべて、指を鳴らす(フィンガースナップ)

 その瞬間、背後に現れたシキの分身に六角棒で殴られた。


「女は殴れないか? 表の人間は生ぬるいなぁ!」


 体に張り付いた呪符は、全身を駆け巡る指輪の炎が燃やしてしまう。

 さらに数体の分身が現れては殴りつけて消えていくが、結果は全て同じだ。

 スーツは打撃を完全に防ぎ、呪符による妨害は指輪の炎によって弾かれていく。


「ちっ、邪魔臭い火だな」


 赤葉羽邸の塀に立つシキは、忌々しげに僕を見下ろしている。

 隠されていた呪符が見えるようになった僕は、他にも色んなものが見えるようになっていた。

 裏賀輪区には、もっと色んなものがいた。

 空にはオーロラのような光の線が河を作っていたし、その下には手足の生えた人魂のようなものが列をなして踊るように進んでいた。

 その下では下半身から炎のように青い気を吐いて空を飛んでいる人のようなものがいる。

 立ち並ぶ日本家屋の屋根の上では一本歯下駄を履いた一本足のなにかが飛び跳ねているし、軽自動車ぐらいはありそうな長毛の獣が眠っている。

 道路の隅では、半透明の丸いのが群れをなしてこちらを観察していた。


 これが、見える目で見た裏東京の光景なのか。


「戦いの最中によそ見か? いい根性だな!」


 ハッとした時にはもう殴られていた。

 相変わらずの死角から分身六角棒での一撃だ。

 強烈なのかもしれないけれど、このスーツにはもう通じない。

 もう何度もやられているから、いい加減になれた。

 攻撃を避けて、六角棒を掴む。

 すると、その姿は呪符に戻ってバラバラと崩れていった。

 指輪の炎に触れるとあっという間に燃え上がり、火の粉になって昇っていく。


「ちっ! 硬いのが自慢か? それなら……」


 シキの右手がフィンガースナップの形を解いたかと思うと、大きく振りかぶった形を取る。

 シキの手にどこからともなく呪符が集まり、巨大なハンマーができあがろうとしていた。

 打撃面の反対側には霊力が燃えているのか青い炎がある。

 霊力式ジェットハンマー。

 そんなものが出来上がっていた。


「でかいのがあたしの自慢だ」


 ニヤリと笑い、動き出そうとした。


「させません」


 その前に別の声が響く。


「んなっ!」


 複数の蛇がシキの体にまとわりつき、締め上げる。


「なっ、こいつ! 放せっ!」

「これ以上の無意味な戦いは望みません。ですから、一度頭を冷やしてください」


 蛇の体はシキの首にもまとわりつき、そして……。


「死んだ?」


 脱力して塀から転がり落ちてきたシキを、僕は慌ててキャッチした。

 ぐったりしているけれど……あ、息はある。

 蛇はすでに離れ、塀の上に立っている別の人物の袖の中に戻っていった。


 僕はその人物を見上げる。


「……堂城さん?」


 その人物は、巫女服姿の堂城さんにしか見えなかったんだけど……。

 違う。


「真白……?」

「はい、旦那様」


 堂城さん似の彼女はにっこりと笑った。


 謎のイキモノになって逃走した姉の遺体のことはとりあえず置いておき……。

 僕たちは気絶したシキを抱えて赤葉羽邸に戻った。

 どこになにがあるのかわからないので、とりあえず近くの畳の部屋に彼女を寝かせる。


「で、なにがどうなっているの?」


 僕は大きくなった真白を見る。

 いつの間にスーツから抜け出していたのかと思ったけど、シキに殴られて動けなくなる前にはもう外に出ていたそうだ。

 隙を見てシキを捕縛するために。


 それは、まぁいいんだ。


「それより、なんで大きくなって」

「ましろは元々この大きさです」


 と、巫女服姿の真白が胸を張る。

 こうしてみると堂城さんにやっぱり似ている。

 中学生バージョンの堂城さんって感じだ。


「旦那様が見鬼に目覚められていなかったので、本当のましろが見えていなかっただけです」

「ええ……」


 それであんなにちっこく見えていたってこと?

 それもまた……どういう理屈なんだろう?

 謎だなぁ。


「旦那様には見鬼の才があったのに、なぜか中途半端に開眼していたのです。でもいま、完全に目覚められました。これでましろのことも普通に見えますね」


 と嬉しそうに笑う。


 うん、まぁ……。


 ううん……まぁ……。


 悩むな。


「……あれ?」


 どう答えようかと悩んでいると、不意に辺りが暗くなった。

 なにごと?

 

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