え? 終わり?
「必要な情報は全て集めたわね」
真白が指輪を嵌めるのを試していると、堂城さんが宣言した。
「え?」
全て?
「もう調べる必要はないと?」
「そうよ。最初に島の周りを確かめたでしょう? あれでこの島の状況は確認した。それから、あなたが二階に封じられていた詳細を集めてきた。一階になにもないことは、掃除道具を探しているときに確かめたわ。だから、もうこれでおしまい」
「おしまい」
僕はそのことにホッとしつつも、持ち込んだ荷物を見た。
数日分の飲食物とか着替えとか、いろいろ持ってきてるんだけど。
え?
あれ全部無駄になったのか。
「まぁ、弁当は帰ってから食べればいいか」
「早く終わるのはいいことですよ」
「まぁ、長居して楽しい場所でもないしね」
廃墟だし、海水浴のシーズンでもないし、安心して遊べる空気でもないし。
……そういえば最後に遊びで海に行ったのはいつだったかな?
まぁ、いっか。
「おかげでGWに余裕ができましたね」
真白がいくら指を当ててもサイズが変更しない指輪に飽きて僕に返す。
堂城さんにも反応しなかったので、もしかしたら僕しか付けられないのかもしれない。
後で姉に調べてもらおう。
「これでお姉さんの遺体を探す時間も確保できます」
「……うん」
すぐにその話をする真白にちょっと悪い気がした。
「ええと、なにかGWらしいことをしたいんら、付き合うけど?」
「いいえ! 旦那様が活躍されてるのを見られて、ましろはとても楽しいです」
「そっか、ありがとう」
でも、悪い気がするから、帰ったら真白の好きな料理をご馳走しよう。
好きといえば卵料理か?
オムレツとかオムライスとか、巨大厚焼き玉子とか……。
卵料理以外もあるかもしれないし、リクエストも聞いてみよう。
「なにか食べたい料理ある?」
「作ってくれるんですか?」
「そりゃあ、真白が楽しいこともないとね」
「旦那様……」
嬉しそうなので判断は間違っていなかったようだ。
「とりあえず、卵料理が好きなことしか知らないしね」
「卵料理は好きです!」
「卵なら……プリンとかも卵料理になるのかな?」
プリンも入るならケーキとかもカテゴリーに入るのかも。
「真白はプリンが好きよ」
「はい、好きです!」
堂城さんが言い、真白が頷く。
頷いたのだけど……。
「でも、普通のプリンでいいですから」
「うん」
「特大プリンには挑戦しなくていいですからね?」
「特大プリン?」
念押しされて首を傾げる。
それはバケツプリンとかの?
「動画で特大プリンを作っているのを見ていたら、お母さんが私たち用に作ってくれたんですけど……」
「ただのバケツプリンでは面白くないので、タライで作ったわ」
「タライ?」
タライ?
「それはまた……すごいね」
「姉妹だけで食べられなくてお父さんに他の人たちも呼んで……食べ切るのがすごく大変でした」
「あれは達成感がすごかったわ」
「だから、もういいんです。特大プリンは」
やってやった感の堂城さんに対し、真白は疲弊した顔になっている。
「でも、特大料理っていいよね」
僕も動画でたまに見る。
なんかロマンがあるよね。
「でしょう?」
と堂城さんが賛同した。
ちょっと意外だ。
でもタライプリンなんか作るぐらいだから、その適性があるのかも。
「私も動画を見ないけれど、タライプリンを作ってみて感じたわ。楽しいって。だから次の目標は日本一の芋煮会を開催することよ」
いきなり夢が大きい。
「そして日本一のお好み焼きも作るわ」
「どうやってひっくり返すのさ」
「問題はそこなのよ。鉄板を二枚用意して、挟み焼くのはどうかしら?」
「僕の財力では絶対に無理だね」
鉄板を動かすのに重機とかがいるっていう話になるじゃん、それ。
そんな話をしている内に夜が来て、僕たちは夕食に弁当を食べた。
「その指輪、使ってみませんか?」
夕食が終わった後で、真白が言った。
スマホも圏外の場所なのでけっこう時間を持て余してしまう。
真白がそう言ったのも話題を求めてのことだった。
それに僕も退屈だったし、指輪のことも気になっていたのでちょうどいい。
「指輪を使ったら、魔法が使えるのかな?」
「特殊な気配があるからそういうことができるかもしれないわね」
この前、周辺をまとめて真冬にした人に言われると説得力がある。
「だけど、それは不思議な気配がしているわ。なんだか、そう……莉菜さんのこの護符に共通する感覚というべきかしら?」
そう言って、堂城さんはバッヂを撫でた。
とても大事そうにしているけど、それは姉の全力の作品ではないよ?
だって+5だもの。
前にヴァレンナさんにあげた鎧は+10とかだったし。
急造と全力で素材集めしたのでは違うんだろうけど。
それはともかく……やってみようと外に出る。
ただ、どうやればいいかわからない。
「こういう時は指輪と意思疎通を試みてみるものよ」
「指輪と」
意思疎通?
それもよくわからないな。
とりあえず、姉が作ってくれた道具のスキルを使う時のような感じでやってみる。
堂城さんもバッヂに似ているって言っていたし……。
でも、なんのスキルがあるのかわからない。
アイテムボックスで作ったものは、自然と使い方がわかるんだよな。
僕がアイテムボックスの機能に取り込まれていることが原因なんだと思うんだけど。
これは違うから……。
とにかく……集中してみるしか。
んん……と唸りながら集中しているとなにかを感じた。
それがなにかはよくわかっていないけど、このまま導く感じで……あの魔法使い? は火球を放っていたんだから、火の魔法が使えるんだよな?
そう考えていたら火が出た。
指輪をはめた右手に。
だけど火球は射出されず、僕の右手が燃え続けた。
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