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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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後夜祭②



 意上くんに先導されてやって来たのは、記憶にある場所だった。

 前にシキに連れて行かれた事故物件だ。

 前のときはシキが見えるようにしてくれるまで、ここはただの廃屋でしかなかったんだけど……。


 なんか空から黒い渦が落ちてきてるんだけど?


 なんだこれ?


 あ、そういえばあの指輪をお腹に付けたままだったと、制服の下から手を入れて固定に使っていた養生テープを剥がす。

 よくこんなのそのままにしてたな、僕。

 慣れって怖い。


 霊力(魔力)を吸う指輪を着けて俺の保有総量を減らすことで真白が幼女に見えないようにしていた。

 つまりこの状態なら俺の霊視能力もちゃんと働くってことか?

 とはいえ外してすぐに見えなくなるわけではなくて、真っ黒い渦はいまも見えている。


「さあ、着いた」


 と、意上くんは僕たちに振り返って言った。


「今回の肝試しはお化けを呼び出してどれだけ耐えられるかっていうものだ」


 彼の腕が背後の廃屋を示す。


「この家は近所でも有名な事故物件でね。詳細は省くけど、いままで三組の家族から自殺者を出させて追い出している本物だ」


 へぇ、そんなことがあったのか。

 シキはそういうの説明をしないから知らなかった。


「この家にはその自殺した霊と、彼らにそうさせた悪霊が存在する。そいつらをこの目で見えるように、ちょっとした儀式をしようと思っているんだ。だからここからボクの指示に従ってもらうよ」

「「「わかった」」」


 僕以外のみんなが同じ声音で応じた。

 もうすでに向こうの術中に嵌まっているっていうことか。

 それなら、このまま従ったふりをしておこう。

 ダウジングアイをいま持ってないから、姉の遺体の欠片がどこにあるかもわからないし。


 最終的に脅して聞き出すってなりそうだけど、それなら向こうの作戦を蹂躙してからの方が心を折りやすそうだし。

 う〜ん、僕もシキみたいな戦闘狂思考になってないかな?

 心配になってきた。


「じゃあ、行こう」


 僕が悩んでいるのに気づかず、意上は満足げに笑って中へと案内する。


「これからやるのはかくれんぼだ。だからみんなはボクが指定した部屋で隠れていればいい。呼び出すのはボクがやる」


 前にも見た廃屋の中に土足で上がる。

 埃まみれだから素足は勘弁だからいいんだけどさ。

 それから「お前はあっち」「お前はそこ」と一階にある居間や応接間、台所なんかを指定して参加者を一人ずつ部屋に入れていく。

 そして二階に上がっても同じことを繰り返す。

 高橋くんもここで部屋に入った。


「で、君がここだ。尾羽」


 と、最後に残った奥の部屋を僕に示す。


「なにが出てくるか、恐怖に震えて待っているといいよ」

「……」


 なにか答えた方が良かったのかもしれないけど、もしかしたら僕も術にかかって答えられないと思っているかもしれないと、黙って部屋の中に入った。

 フローリングの部屋の中は半端に片付けられた状態で放置されていた。

 ベッドや机なんかもなく、床の上にはブルーシートが敷かれて吊り下げ型の電灯とかエアコンなんかが外された状態で置かれている。

 二段に分けられた押し入れがあるから、隠れるならここかな?

 ていうか、隠れる必要はあるのかな?


 なにをする気か知らないけど、たぶん、僕は最後に驚かされるんだと思う。

 外から聞こえる音でたっぷりと怖がらせるんだろうな。

 驚かせるだけで済むのかどうか知らないけど。


 とにかく、待ってみるか。






「くふふふふ」


 尾羽亮哉を最後の部屋に入れた意上は、抑えきれない笑声を溢しながら廊下を進み、一階に戻った。

 向かったのは浴室。

 ここには誰も入れていない。

 そこに意上が入る。

 バスタブの蓋の上に目当てのものがある。

 クレーンゲームの景品にあるようなアニメのぬいぐるみ。

 尾羽亮哉のクラスで行われていたゲームの景品だ。

 これが尾羽亮哉の所持品であるかどうかはどうでもいい。

 少しでも、あいつに縁があるものならなんでもいい。

 ほんのわずかでも縁があるなら、それを手繰り、尾羽アキヤに辿り着いて見せる。


「さあ」


 隠し持っていたナイフを取り出し、人形の腹を割く。


 そこに……。


「ボクの想いを受け取れ!」


 綿が覗く人形の腹に向けて意上が口を開けた。


「うえ……‼︎‼︎‼︎‼︎」


 激しい吐瀉音が響く。

 だが、その口から飛び出るのはわずかな胃液のみ。

 大きなナニカが喉の奥を塞ぎ、それ以上外に出さないようにしている。

 やがて、喉が異常に膨らみ、それが口から姿を見せる。

 赤黒いイモムシ状の形になったそれは時間をかけて意上の口から這い出すと、人形の腹に胃液に濡れた先端を向けた。


 そうして、今度は人形の中に入っていく。

 明らかに人形よりも大きな異形の存在は、しかしそんな物理法則は些細なことだとでもいうように、人形の中に綺麗に収まり、そして腹に開かれた傷までもピタリと閉じてみせた。


「……」


 吐き出し終えた意上は白目となってその場に倒れる。

 残された人形は内側の動きによってモゾモゾと動く。

 それは、着慣れない服を体に合わせるための動作に見えないこともない。


 やがて、人形は立ち上がる。

 人の形はしていても関節の存在すら曖昧な手足を使って進み、浴室の扉を開けると外へと出た。


 さあ、かくれんぼの鬼が動き出す。


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