後夜祭③
余裕があったら「84話とある怪談②」を確認してみよう!
ーーーーーーーーーー
しばらくはなにもなくて退屈だったのだけど、少しして静かになった廃屋の中に「うおっ」とか「ぎゃあっ」とかいう悲鳴が響いた。
なにかが動き出したみたいだ。
とりあえず待ち構えるにしても変身しておいた方がいいかな?
なにが起きるかわからないし、変身しておこうか。
怪我とかしたくないし。
そう決めて、変身する。
略唱紋が現れ、「解錠」「蛇殻武装」と唱えれば変身は完了だ。
完了……なんだけど。
いつものように姿が変わって終了……とはならなかった。
「うわっ!」
いきなり目の前が真っ黒になった。
目が見えなくなったとかではなくて、顔を守っているバイザーに真っ黒いものが張り付いている。
動いているのがわかるから、これは気体か?
「もしかして、呪力か?」
この廃屋に集まっていた呪力か?
え?
なんでいきなり?
外ではすごいことになっていたのに、中に入ったら見えなくなっていた。
きっとこの事故物件のどこかに隠されてた姉の遺体の欠片に吸われているんだと思っていたんだけど、違うのか?
なんでいきなり見えるようになった?
あ、これ違う。
見えるようになったんじゃなくて、やって来たんだ。
僕のところに。
僕に向かって、流れてきてるってことか?
そう考えると、変身スーツを通り抜けて冷たいものが入り込む感触があった。
止まる様子はなく、どんどん入り込んでいく。
「う、うわああああああああ!」
叫んでも無意味だ。
どんどんどんどんと、呪力が僕の中に入り込んでいった。
あれ?
これってもしかして……。
減らした霊力。
↓
空いた容量。
↓
行き先を見つけた呪力たち。
的な?
いや、なんで姉の遺体の欠片に行かずに僕のところに?
こんなもん吸い込んだらなにが起きるんだ?
慌ててももう出来上がった巨大な流れを止めることはできず、僕は耐えるしかできなかった。
人形は動き出す。
膨大な闇が人形に注がれるのが意上にはわかった。
闇は、すなわち力だ。
増え続ける力……本物の力の存在を感じ、意上は喜びに震えた。
「きっ……きひひひひ…………」
腹の中に生まれた空洞感はなくならないが、それを上回る愉悦で笑いが溢れる。
意上の肉体は浴室に放置されたままだけれど、その意識だけは人形と繋がって廃屋の廊下を進んでいた。
さあ、まずはこの怪異を完成させよう。
意上が参考にしたのは『ひとりかくれんぼ』だ。
用意した人形に爪や髪、米などを詰めて霊の依代とし、かくれんぼという遊びを通して人形に霊を降ろす。
本来の『ひとりかくれんぼ』は鬼となった人形を出し抜き、遊戯に勝利することで儀式を終了、人形を破壊することで降霊そのものを終わらせる。
だが、そのかくれんぼを人形の勝利で終わらせればどうなるか?
多くの怪談はその部分に触れない。
人形が勝利すれば語り部がいなくなるのだから、語られるはずもない。
この廃屋に配置した隠れた者たちを捕まえるたびに、人形の怪異は完成し、強くなっていく。
これはそういった呪術の儀式だ。
そうなった。
そうであると信じている。
意上は信じた。
本物が信じれば本物の呪いとなる。
あの蛙がそう言ったのだ。
だからこれは、本物になる。
見ていろ! 尾羽亮哉!
意上は自身が怪異そのものになることを自覚し、突き進む。
「みいつけた」
その宣言と、触れることで儀式は一つ先に進む。
一階に配置した生徒たちを捕まえた。
奴らは全員倒れた。
最後に捕まえた生徒は、一番廃屋から逃げ出しやすい位置にいたくせに、なにを血迷ったのか一階の奥に逃げ込んだ末に失禁して気絶した。
情けない姿だ。
そして、それだけに痛快だ。
儀式に必要なのは鬼となった人形が勝利したという事実のみ。
かくれた者たちの命は必要ない。
故に気絶しただけのはずだが、死んだところで問題ないと意上は思っている。
というよりも、もはや彼らの生死に興味がなかった。
力を手に入れたのだ。
だから、警察だろうとなんだろうと、もう意上には逆らえない。
もしかしたらあの蛙のような妖怪? になってしまったのかもしれないが、それだっていいじゃないか。
不自由な人間なんてごめんだ。
なにをしても楽しくない。
努力してももっと上がいることを知らしめられるだけ。
自分の惨めさを見せつけられるだけの人間なんてごめんだ。
この力があれば、きっと堂城香澄だって自由にできる。
それだけではなく、尾羽亮哉と共にいた堂城香澄に似た女も……。
「くひひひひひ……」
堪えられない笑みを吐き出しながら人形は廊下を進む。
そうしていると。
「うわあああああああああああ!」
いきなり階段から悲鳴が聞こえてきた。
バタバタとした足音が近づいてくる。
二階に隠れさせた一人が、我慢できずに逃げ出したのか。
聞こえてくる音で恐怖が限界に達したのなら、是非とも捕まえてその恐怖を取り込んでやろう。
いや、一人として逃すことなく、完璧にこの遊戯を終わらせてやる。
そう思って、追いかけるべく先に進む。
階段を駆け降りた彼は廊下を進み、あと一歩で外に出られるというところでこちらを見た。
振り返った生徒……高橋だ……が、人形を確認して恐怖で顔を歪ませる。
自分に怯えている。
あれ?
いや違う。
見ている視線が高い?
これは階段を見ている?
視線に誘われ、人形に入った意上もそれを見た。
大量の髪の毛が階段を埋め尽くしていた。
な〜に、これ?
ドカァァァァァァァァン!
突然の爆発音が響き、またも視線を引っ張られる。
爆発したのは玄関だ。
近くにいた高橋は吹き飛ばされて廊下で気絶している。
そしてそこには釘バットのようなものを肩に担いだ女子生徒がいた。
「バケモンはどこだ!」
まるでナマハゲのようなことを叫びながら、そいつは土足で上がり込んでくる。
そしてこちらを見て、にやりと笑った。
よろしければ、励みになりますので評価・ブックマークでの応援をお願いします。
下の☆☆☆☆☆での評価が継続の力となります。
カクヨムで先行連載していますので、よろしければそちらの応援もお願いします。




