文化祭③
飲食を出し物に選んだクラスやクラブは中庭に出店することになっている。
火の管理とかが同じ場所でできることと、飲食の場所を一つにまとめられるから衛生管理が楽とか、そんな理由だと思う。
その中庭の中央にフードコートのようにテーブルが並び、その周りで屋台なんかが出されている。
周りの屋台での買い物を済ませると、立花さんが確保しておいてくれた場所にありがたく座らせてもらう。
まだ堂城さんたちは来ていない。
「ていうか、普通に母とか娘とか言ってたね。大丈夫なの?」
合流したとき、普通にそんな会話をしていた。
「ああ、そうですね。でも……」
「でも?」
「普通の人は信じないですよ」
「ううん、まぁそうかも」
堂城さんが高校生(17)
真白、見た目的に同い年ぐらい(16〜17)
杏朱、中学生(13〜15)
藍・翠が小学校三〜四年生(9〜10)
年齢差が母娘じゃないよな。
義母ルートならあるかもしれないけど、実母ルートはないよね。
そして義母だったとしても顔が似過ぎているわけで。
「姉妹が遊んでいるようにしか見えない……か?」
「それに、周りにどう思われようと気にしないですし」
「そうかもね」
そんなことを話しながら、料理クラブが作った菓子パンを食べている。
「みんなが来てから食べればよかったのに」
「いやぁ、霊力が回復して見え方が変化したら大変じゃない?」
「むう」
真白がテーブルに置かれた大きなお重をチラチラ見ている。
お腹が空いてるみたいだな。
「食べる?」
「我慢します!」
菓子パンをあげようとしたら、断固として断られた。
でも、お腹は鳴る。
聞こえていない振りをした。
「お待たせ」
そうこうしていると堂城さんたちがやってきた。
真白抜きでも満足できたようで、ニッコニコだ。
「もうお腹空きまくりだよ〜」
「杏朱がサッカーで本気出し過ぎた」
「杏朱が悪い」
「サッカー部がストラックアウトなんかしてるのが悪くない⁉︎」
「熱中したのは杏朱」
「杏朱が悪い」
「このガキども〜」
けっこう感情豊かな杏朱に対し、藍・翠の双子は淡白だ。
でも口は悪そう。
「まぁまぁお嬢様方、席料代わりに周囲の屋台のご飯も買っていますし、今日は婿殿の料理もある。楽しみましょう」
立花さんが間に入り、睨み合う杏朱と藍・翠を宥めた。
みんなお腹が空いていたのか、ご飯の言葉に素直に従う。
中央にドンとあるのは僕が作ったお重だ。
真白に預けておいたのがテーブルの番をしていた立花さんの手に渡り、そしてここに置かれることになった。
最初はいつもの旧茶道部の部室で食べるのかと思ってたんだけど、こんなところでか。
大義名分として屋台のご飯を買っているけど、明らかに主役は僕の作ったお重。
今更だけど、いいのかこれ?
まっ、気にしても仕方ないか(思考放棄)。
前に堂城邸にお土産としてワイバーン肉を持っていったり、弁当を作ったりしたのを堂城さんが食べたりで、なんか僕の……ていうか異世界素材料理が堂城家で話題になっていたっていうから用意してみた。
唐揚げとか卵焼きとか、たくさん作るのに向いてそうな奴しか作ってないけどどうかな?
あとおかずだけ。
噂でおにぎり屋をやる屋台があるって聞いていたので、ご飯はそこで獲得するつもりだった。
さすが立花さん、ちゃんと購入してくれていた。
ていうかでかいな。
鮭、昆布、明太子とかの海鮮系の具がたくさん入った海賊おむすびみたいだ。
「うわっ、美味い!」
「ううん、さすが莉菜さんの獲った素材」
「美味し」
「美味し」
みんなにはちゃんと好評のようでよかった。
「旦那様の作った料理は美味しいのですよ」
真白もドヤりながらちゃんと食べている。
忙しいな。
「お兄ちゃん、あたしもお兄ちゃんのお弁当が欲しい! 毎日作って」
「義兄、僕も」
「僕も」
「だ、ダメですよ! 旦那様のご飯はましろのです! 今日は特別なだけです!」
「姉ちゃん、ずる〜い」
「姉さんはずるい」
「ずるいね」
「ずるくありませ〜ん〜」
姉弟がじゃれつく楽しい光景だけど。
ん〜やっぱり真白は子供っぽいなぁ。
そんな僕の顔を真白に見られた。
「あっ、あっ、旦那様がまたましろのことを子供っぽいと思っている!」
「思ってないよ」
「その顔が思ってます!」
ご飯はまたそのうち堂城家にお土産を持っていく約束をすることで解決した。
食事の後はまた別々で文化祭を見て回った。
その後も楽しく過ごし、真白たちは先に帰った。
僕たちはもちろん、後片付けがある。
「打ち上げ行く人〜メッセージリンクチェックしといてね〜」
後片付けをしている時にそんな声が聞こえた。
メッセージリンク?
なにそれ知らん。
でもまぁいいか。
最初から行く気はないし。
集めた廃材を抱えてゴミ捨て場に向かう。
指示してある通りにゴミを分別し、教室に戻ろうとしていると誰かの視線を感じた。
見回してみると、同じようにゴミを捨てに来ている生徒の中に僕をじっと見ているのが一人いた。
あれは……誰だ?
覚えがない。
同じクラスになったことはないと思うし、なにかで絡んだこともないはずだ。
だけど、なにか覚えがある目だ。
僕が見ても目をそらしたり、この場を去ったりしない。
無視してもよかったんだけど、なぜかそのときは近づいてしまった。
「僕になにか用?」
「……調子に乗るなよ」
「うん?」
「あんなので調子に乗るなよ。どうせお前は、すぐにダメになるんだ」
よくわからないことを言っているけど、だけどなにか、ピンと来るものがあった。
「もしかして、藁人形の人?」
僕がそう聞いても、彼は答えなかった。
だけど、その不健康な頬のこけ方がなにかを感じさせる。
「あの釘はダーツの先に再利用させてもらったよ。ありがとう」
僕がそう言うと、少しだけギョッとした様子を見せた。
だけどすぐに怒りの表情を取り戻し、ポケットからなにかを取り出し、押し付けてきた。
それは乱雑に折り曲げられたコピー用紙だ。
「ふん。それなら……ここに来てみろ」
「なんで? 行くわけがない」
「来なかったら、それでもいいさ。だけど、僕の呪いは本物になったんだ。今度は逃さないから」
本物?
「今度は、絶対だ。きひ……いひひひひ……いひひひひひひ…………」
堪えられなくなったのか、変な笑いをこぼし続けながら彼は去っていった。
「ううん」
彼の言っている呪いとかはどうでもいいんだけど……なんだろう、なにか引っかかるような?
「あっ」
思い出した。
あの目、真白と入ったお化け屋敷で遭遇したお化け役の目だ。
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