文化祭①
ついに文化祭がやってきた。
校内公開も無事に終わり、今日は一般公開の日だ。
もちろん僕は普通に登校して、普通にクラスの出し物を手伝う。
真白がくるのは午後に近い時間からなので、午前中の店番をさせてもらうことにした。
堂城さんも午前の当番になった。
「あれ? もしかして付いてくる気だったりする?」
「娘と一緒に文化祭を回るのが夢だったの」
ノータイムで答えられてしまった。
そんな夢を抱く母親なんていないと言いたい。
が、こんなところで堂城さんに娘がいる話なんてしてたら、僕が孕ませた疑惑まで浮上してくる。
そしてそんな噂が広まろうものなら……。
学校の連中に恨まれるのはいまさらなのでどうでもいいんだけど……。
清十郎さんに殺されるかもしれない。
それが一番怖いな。
そういうラブトラブル的な意味では外部からの客が堂城さんを見てどういう反応をするのかも気になる。
ナンパとかされたりして。
ただのナンパならいいけど、強引な奴がいたりして。
そんなことになった日には堂城さんはともかく周りがどう動くやら。
怖い……けど。
高校の文化祭なので、外部の客は生徒から渡された招待券を持っていないと入れない。
見知らぬヤンキーが乱入してきて堂城さんをナンパして〜〜みたいなイベントは起きないと思うんだけど、さて、どうかな?
一応、生徒に扮した? 侵食した? 断鬼の蛇たちもいるしね。
問題は起きないとは思うんだけど……。
ともあれ、客が入ってきた。
校門から入ってきた人たちが受付で招待券を渡して金券を交換したりしてからクラスやクラブの出し物を見て回る。
僕たちのクラスがやっている水風船ダーツは好評だった。
水風船がダーツで割れるのは爽快だし、わかりやすいからか小さい子供とかがよくやりたがってくれる。
割ったときに水がビシャってなるのが、悪いことしてみるみたいで気持ちいいよね。
見てて僕もダーツを投げたくなった。
そして、そんな中でやっぱり堂城さんは活躍した。
主に小さい子供に対して。
すごく優しく付き添って投げさせて、うまくいかない子へのフォローなんかも上手にできていた。
子育て経験があるなってバレそうなぐらい扱いが上手い。
そして、学校にいるだけでは絶対に見せない笑顔まであったりする。
ああ、これはやばい。
他の男子たちだけでなく、女子まで堂城さんに見惚れている。
前から女子にも堂城さんファンはいたんだけど、これは新境地のファン層が誕生してしまうのではなかろうか?
……まぁ、いっか。
たとえそんなことが起きたとしても、僕は関わらないようにするだけだ。
「あの〜私もさせてもらえますか?」
「あ、は〜い」
割れた水風船の回収とか、新しい水風船をセットするとかしていると女性に声をかけられた。
「よろしくね」
「はい、こちらです」
女性の差し出す金券を受け取り、投げる位置に案内してダーツを渡す。
「水風船が割れた数で景品があります。数えるのは僕がしますね」
「ええ。よろしくね」
女性は大学生くらいかな?
落ち着きのある、笑顔を絶やさない感じの人だ。
……ちょっと怪しいな。
「ええと、じゃあ」
とか言いながら手首のスナップだけで投げたダーツが目に見えないような速度で飛んで、後ろの板を突き破りそうな勢いで刺さってるんだけど?
もちろん全命中。
「どこかで殺しの修行でもしてたんですか?」
全命中の景品が置いてあるコーナーに案内しつつ、そんなことを聞いてみる。
「あははは、そんな〜」
女性は笑いながら、特大のぬいぐるみを選んだ。
クレーンゲームで見かけるような人気アニメのぬいぐるみだ。
「ちゃんと、人を助ける立派な仕事をしてるのよ」
「そうなんですか」
大学生ではなかったらしい。
「それではね、尾羽亮哉くん」
そう言って、彼女は名乗っていない僕の名を意味深に言って教室を出ていく。
その出口のところではシキが立っていた。
あいつ……僕らと一緒に午前を担当してるはずなのにね!
「退魔師関係の人か」
シキが女性と一緒に去っていくのを確認してそう判断する。
まぁ、深く考えても仕方ないので放置することにした。
「こんなところに顔を出してなんのつもりだ。アンコ?」
「あら、私が自分の名前を嫌いなのを知っていてそんなことを言うの? 相変わらず困った子ね」
後ろから付いてくるシキにそう呼ばれ、アンコと呼ばれた女性は困った笑みを浮かべた。
「アタシの見張りならあいつらは関係ないだろ」
「ふふふ、シキったら自意識過剰ね」
「はぁ?」
「この私が、あなた如きの監視で動くわけないでしょう?」
「……チッ」
固まった笑みの向こうにある冷たい眼光を受けて、シキは顔を逸らした。
「……あなたが手に入れたアレだけどね」
再び前を向いて歩くアンコがポツリとそう呟く。
周りの雑音に埋もれる程度の声量なのに、不思議とシキの耳には届いた。
「特別な人間を解体したほんの一部なのよ。そしてそれは、好事家によって高値で取引されて、世界中に散らばったのだけど……その一つが最近、この街に流れてきたそうなの」
「お前、それを追いかけてきたってのか?」
「ええ」
と答えたアンコはシキには見せない笑みを浮かべた。
「その行く末を見届けたくて」
「チッ」
善的な雰囲気などまるでないアンコの言葉に、シキはまた舌打ちするのだった。
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