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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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VS百鬼夜行②



 フェンリルは一頻り咆哮した後で姿を消した。

 消したけど、雪嵐の壁はまだ残っている。

 効果時間を過ぎるか、僕が追加で魔力(霊力)を消費すれば効果時間の延長ができると姉が教えてくれた。


「どう? 落ち着いた?」


 シキと百鬼夜行の戦いが始まったところで堂城さんがそう言った。


「あ? 堂城さん? いや、なんか……ずっと考えがまとまらなくて大変だった……んだけど」


 そういえば、落ち着いたかも。


「呪力というのはその名の通り呪いに使われる力なのだけれど、元は霊力が悪感情のフィルターを通して変化したものを媒介にして呪いに使うようになったものだから、どうしても感情を掻き回すのよ」

「え? でも裏賀輪区だとこんなにならなかったような?」

「あそこは対策されているから」


 ああ、なるほど。


「やっぱりそういうのがあるんだ」

「まぁ、長くいれば、ああいう風になってしまうのかもしれないけど」


 と、堂城さんは冷めた目でシキの戦いを見ていた。

 その言い方にはたっぷりの皮肉が込められていそう。

 百鬼夜行の姿は決して戦いに向いているとは思えないものも多いのだけれど、金棒を振り回すシキに真っ向から襲いかかっている。


「制御できているように見えていたとしても、それを観察する者の目まで影響を受けていれば、そのうちなにが正しいかなんてわからなくなるものじゃないかしら?」

「もしかして、堂城さんが連中を嫌いなのは、そういうところだったり?」

「さあ? 嫌いな相手だから、悪いところしか見えていないだけかもしれないわね」


 堂城さんはシキが嫌いなのではなく、シキの背後にある組織が嫌いなのだと前にも言っていた。

 記憶を引き継いでいるから因縁があるとかなんとか。

 そして、記憶を引き継いでいるから、今と昔の違いとかも見えているのかもしれない。


「そんなことより、いまはあの百鬼夜行をどうにかすることを考えたらどう?」

「いや、シキが勝って終わるんじゃないの?」

「そうなればいいのだけど」


 なんか期待していない感じだな。

 シキの戦いに視線を戻そうとして、その端で這いずっている姿が目に入った。


 あ、マッハさんのことを忘れてた。

 マッハさんは腰を抜かしながら端っこに逃げている。

 僕らのところには来ないな。

 堂城さんの目が冷たいからかな?


「もしかしてだけど、マッハさんになにかしてる?」

「してるのは私ではなく、清十郎さんでしょうね」


 涼しい顔で清十郎さんの名前が出てきたけど、なんで?


「あの男は過去に女に対してなんらかの罪を犯したことがあるんじゃないかしら? 私にはそういう男が近寄れないようになっているから」


 つまり、性犯罪をしそうな人間が堂城さんに近づくと、自動でなんらかの防御行動が行われると?

 清十郎さんがそうしていると?


「……愛だね」

「そうね」


 すっごい重い気もするけど、堂城さんが受け入れているのだからいいんだろうね。

 しかし……。


「マッハさんが善人ではないとは聞いていたけど、そんなことをしていたなんて」

「他にもしているわよ」

「え?」


 堂城さんはすでにマッハさんの調査を済ませていた。

 それを聞いて、僕は呆れた。

 先ほど出ていた性犯罪だけでなく、カツアゲ、万引き、強盗……そういう犯罪を色々と行っていた。

 中学高校と悪さをしてきた結果、そのまま悪い連中と繋がっていったって感じらしい。

 僕に話した夜行さんに憑かれた経緯も違った。

 知らない人の蔵に忍び込んで盗んだ結果なんだそうだ。


 ただ、問題はこれを調査した方法だ。

 普通に探偵を雇ったとかではなさそう。

 堂城さんのところで人とは違う目を使って調べた結果のようだ。

 それでは人間社会の警察は動けないんじゃないかな。


「だから、これが終わったら自首させるわ」


 堂城さんはなんでもない顔で言った。

 たぶんそれは、本人を改心させてとかそういう方法じゃないんだろうな。

 彼女の冷めきった表情がそれを否定している。

 堂城家のコネで警察を動かすのか、あるいは心霊的な力によるそうなのか……どっちでもできそうなのが怖い。


「自首であの男の罪は多少軽くなるかもしれないけど、あの男の情報で芋蔓式に引っ張り出された連中がどう思うか……それが減らされた罰の代わりになるでしょうね」

「あ〜」


 なんか、報復とか、そういうのがありそうね。 

 兄貴とか言われて調子に乗っていたら、そういうところでの防壁に使われていたりしたのかな?

 調子に乗らなくてよかった。

 まぁその時には真白を巻き込まないように堂城さんに怒られていたのかもしれない。


 そんなことを考えている間にもシキと百鬼夜行の戦いは続いている。

 激しい戦いだ。

 百鬼夜行の妖怪たちは夜行さんを中心にしてどんどん増えていっているし、そしてシキの姿は僕たちからは見えない。

 それでも居場所がわかるのは、群がる妖怪たちが激しい打撃音と共に爆発するからだ。

 吹っ飛び、四散する。

 グロい光景が視界に展開されることはなく、妖怪たちは黒い霧に戻る。

 そしてその黒い霧は夜行さんのところへ戻っていき、そしてまた妖怪の姿を取っている。


「あれってキリがないんじゃ?」

「殴るたびに封印作業は行われているから少しずつは消えているはずよ」

「それでも大変そうだ」

「……それでもやりたいんでしょう」

「まぁ、そうなんだろうね」


 チラッと見えたシキの顔はイキイキとしている。

 東京で出会った時のことを思い返してみても戦闘狂であることは間違いないんだろうけど……。


「途中で力尽きたりしないよね?」

「そうならないことを祈るばかりね」


 その時にはやっぱり、僕たちが戦わないといけないんだろうか?

 キリがないのは嫌だなぁ……そう思っていたのだけど、シキはやり切った。

 百鬼夜行を構成するすべての妖怪を叩き潰し、そして夜行さんの頭を叩き潰して呪符の束に変えてしまったのだった。

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