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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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文化祭の前に



 文化祭の準備が進んでいき、学校の中にはあちこちに準備物が積まれて乱雑な雰囲気が出ている。

 おかげで……落ち着かない。

 ああ、整理したい。

 それらはこれから始まる文化祭に向けて置かれているんだから、決して散らかっているわけではないとはわかっているのだけど……だけど!


 まぁ、こんな気持ちになるのはあと数日の我慢だ。


 そういえば、下駄箱の藁人形プレゼントが止まったな。

 金属素材を無償でプレゼントされているんだと気付いた時には「これぞ発想の転換!」と思ったのだけれど、止まったのはそれ以来だから思い損になってしまった。

 こんなにも僕の気持ちを弄ぶなんて、きっと悪い奴なんだろう。


 ……なーんて思考を遊ばせているのには訳がある。

 いまは放課後。

 僕たち……僕と堂城さんとシキは、昼ご飯を食べる時に使う旧茶道部部室で待機している。

 なにをしているのかと言えば、学校に人がいなくなる時間を待っているのだ。


 百鬼夜行退治を、今夜行うのだ。


 学校は部活もあるし、そしていまは文化祭の準備で普段は早めに帰るような生徒まで残っていたりする。

 それでも学校にいられる時間というのは決まっているのだけど、人の目が多い時期であることには違いない。

 よく考えなくても時期は今日じゃなくてもよくない? と思うのだけれど、シキが「今日やる」と言って聞かない。

 堂城さんも「運勢としては問題ないわね」なんていう。

 だから、学校から人がいなくなるまでここで待つことにしたのだ。

 どうせ時間を潰すならクラスの出し物の手伝いでもすればいいのにと思うかもしれないが、考えてみてほしい。

 堂城さんが手伝うと言ったらどうなるか?


 張り切る男子。

 イラつく女子。

 崩れ去るクラスの連携。

 ギスった空気が文化祭当日まで引きずられた日にはどうなってしまうことやら。


 ……そもそも、僕が手伝いに行くと言ったところで、堂城さんが付いてくるとは限らないんだけどね。

 これもまた、無駄な思考遊びだ。


「運勢ってどういうこと?」


 スマホを見るのにも、思考遊びにも飽きてしまったので堂城さんに質問する。

 シキの方はアヤアカシとかいう名前の金棒をすでに出していて、「話かけんな」オーラをバリバリに出しているのでどうにもならない。


「運勢は運勢よ」


 と、堂城さんは答えになっていない答えを返した。


「ええと、つまり……占いってこと?」

「そうね。私の場合はカレンダーとその日の天気の状態を見たりして、それとなく今日はうまくいく日、とかそうじゃない日、とかを見分けているわ」

「へぇ。それなら今日はうまくいく日なんだ」


 僕の言葉に、堂城さんは軽く首を傾げるだけにとどめた。

 いや、どういうことなのかな?


 なんか思惑とかある感じ?


「ええと、今日やることって夜行さんとかいう妖怪をマッハさんから出して、百鬼夜行をここに出現させて……」

「アタシが戦(や)る」

「ということだよね?」


 こんな時だけ、シキが会話に混ざる。

 で、そのまま混ざるのかと思ったらまた目を閉じて集中? に戻った。


「ええそうね。私はどちらかといえば見届け人。尾羽くんは結界を作る役ね」

「うん」


 そういう話のはずだ。

 だけどなんだろう?

 なにか堂城さんは堂城さんで、なにか思惑がある?

 ううん?


「ふう」


 息を吐き出し、頭を振る。

 深く考えるのやめよう。

 前に堂城さんも言っていた。

 知らない誰かの思惑に踊らされるのは馬鹿らしいって。

 第三者の思想に影響を受けている時点ですでに踊らされているような気もするけれど……そもそも、この状況下での僕は主体的な人間ではないはずなんだ。

 なら、それが堂城さんであれシキであれ、他者の考えに左右される必要はない。

 自分の役割を淡々とこなしてしまえばいいのだ。


 つまりはフェンリルにワオーンと吠えてもらって結界を作ってもらうだけの役割が、ここにいる僕なのだ。

 それならその役目を黙ってこなすだけだ。


 それからもうしばらく待つと窓の外が暗くなり、その前後で学校の中に溢れていた音も減っていき、ついに聞こえなくなった。

 その途中で下校を促す放送も流れたりした。


 それからもうしばらく待っていると、警備員の格好をした人が部室にやってきて「全員外に出ました」と告げた。

 この警備員は堂城家の関係者だそうだ。


「警備会社の警報システムも切っています」

「ええ、ご苦労様」


 堂城さんが警備員に返し、目を開けたシキがスマホからマッハさんに連絡する。


「時間だ。すぐ来い」


 それだけ。

 愛想なんてかけらもない。

 僕たちは校舎を出て校門前に車を停めたマッハさんと合流する。

 中に引き入れたマッハさんと共に運動場に移動した。


「ここでいいの?」

「ええ。念の為に、学校外からはこちらに意識を向けないようにしておいたわ」

「おお、認識阻害」


 堂城さんが当たり前のように言ったが、それってすごいことなのではないだろうか?


「さあ、問題はここから」


 堂城さんが僕とシキを見る。


「結界を張るのは百鬼夜行が出現してからよ」


 と、これは僕に言った。


「覚悟はいい?」


 これはシキに。


「当たり前だ」


 そう答えたシキは、唐突にマッハさんの背中に腕を突っ込んだ。

 

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