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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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予防の茶葉クッキー



 ハッと気がつくと、堂城さんの車の後部座席に寝かせられていた。


「旦那様!」


 心配顔の堂城さんが叫ぶ。

 あれ?

 これ堂城さんに膝枕されているのか?

 でもおかしいな?

 なんで堂城さんが「旦那様」と呼ぶ?


「ああ……もしかして真白?」

「はい、ましろは真白です!」


 やっぱりそうなのかな。

 そんな僕を見て、「はわわ! 頭を打っている⁉︎」と動揺している。

 こんなことを堂城さんがするとは思えないから、やっぱり真白なのだろう。


「堂城くん、大丈夫?」


 車の外にいたらしい堂城さんがドアを開けて覗き込む。

 うん、やっぱり堂城さんが二人いる。

 前に見えた中学生バージョンとも違うな。


「大丈夫じゃないかも」

「え⁉︎」

「堂城さんが二人に見える」


 と、膝枕している方と、車の外から覗いている方を交互に見る。

 膝枕してくれていて、表情豊かな方が真白だな。

 間違いない。

 だけど、その点を除けば双子かってくらいにそっくりだ。

 中学生バージョンどころの話ではない。


 冷静に考えて……たぶんフェンリル召喚で大量のMP(霊力)を消費したのが原因じゃないかなと思う。

 裏賀輪区で中学生バージョンを見た時もそうだったし。


「それなら、霊力が回復したらまた元に戻るのかな?」

「っ⁉︎」


 僕がこの状態になった原因を予想して呟くと、真白は血相を変えて堂城さんを見た。


「お母さん!」

「ええ、わかっているわ。立花」

「はい!」


 堂城さんが助手席に、立花さんが運転席に急いで座る。

 そして車が走り出す。


「あの?」

「家まで戻る時間が惜しいわね。近くのラブホに運びましょう」

「いや、おい?」

「ダメです。旦那様は霊力を戻さずに元気だけ戻してください!」


 そう言って、真白は僕の頭を押さえて無理やりお腹の方に顔を向けさせる。

 なにその無理注文?

 そして柔らかくていい匂いなところが……ううん。


「この際、雰囲気は無視です!」

「お〜い?」

「よかったわね、尾羽くん、真白。私、ラブホは未体験よ」

「その情報は要らなかった」

「親の性事情とか知りたくないです」

「その情報を知ったことを知られたら、私、ご当主に殺されませんか?」


 うん、立花さんの心配が一番切実だな。

 それはともかく……。

 このままだと僕の貞操が危機だ。

 なんとかしなければ。

 霊力を回復して、真白がいつも通りに見えるようになればいいんだよな?

 回復する方法……いままでの説明からして、霊力って体の内側から湧くものじゃなくて外からやって来たものが体内に留まるんだよな。

 外から。

 つまり……。

 そういえば、たしかポケットに。

 あったあった。

 試しにパクリと。


「旦那様? なにを食べてるんですか?」

「うん」

「うんじゃなくて……なにを⁉︎」

「ああ……よし」


 真白がいつものサイズに戻った。


「うん、これはもうラブホは無理だね」

「なに食べたんですか⁉︎」

「エルダーシダの茶葉クッキー」


 エルダーシダの葉っぱで入れたお茶が免疫力向上、風邪予防に効果的って聞いたし、普通に味が美味しかったから他に流用できないかなって作ってみた。

 最初は水飴に混ぜて飴にできるかなと思ったけど、なんかうまくいかなかったから、葉っぱを粉になるぐらい砕いてクッキーに混ぜてみたんだよね。

 口に残る葉っぱの感触はよくないけど、味はさっぱりとしてて美味しい。

 そして異世界の食べ物だからか、霊力もちゃんと回復した。


 風邪予防のつもりで作ったクッキーで、まさか貞操の危機を防ぐことになるとは。


 ていうか、クッキー一個で召喚魔法一発分のMPを回復と考えると……どれをすごいと思えばいいんだ?

 クッキーの方か?

 召喚魔法の省エネ設計の方か?


 それはともかく。


「ぐうう……」

「そういうわけで立花さん、目的地変更でお願いします」


 悔しそうな真白をなでなでしつつ、立花さんに声をかける。

 幼女を連れ込む趣味はない。

 っていうか、そんなことをして癖が歪んだらどうしてくれるのかと言いたい。


 後……膝枕の感触が変化していないのは黙っていよう。

 まだ霊力が足りないからかな?

 それとも一度感じた感触は、離れたりとかの変化がないと更新されないとか?

 更新って言葉を使うと、なんかこの世界がデジタルな欺瞞で出来上がっているような不安感に襲われるな。

 シミュレーション仮説だっけ?


「霊力が減ると真白の望む姿が見えて、戻ると尾羽くんの望む姿が見えている、ということかしら?」


 助手席の堂城さんはもう落ち着いている様子で、そんな推論を口にした。


「つまり、尾羽くんはそっちの癖があると?」

「やめて」


 人を危ない人のように言うのはやめて。


「私はそれでもかまいません!」

「本当にやめて」


 違うから。

 ていうか、真白が幼女に見えているのは、たぶん、最初にそう思ったからだと思うんだよな。

 あの、捕まってた時に。

 なんで子供だと思ったのかとなると……怪談に出てくる怖い存在って、女か子供が多いし、あの時は声が若い女に聞こえたし、だから子供なのかなって……。

 それが原因だと思うんだけどな。


 ていうことを話した。


「怪談……全ては怪談が悪いと」

「たしかに、幽霊ならおっさんより女子供の方が非現実感が強くて怖いかもしれませんなぁ」


 真白は怒りに震え、立花さんは理解を示してくれた。

 そして真白はいい加減、膝枕を解除してくれてもいいんだよ?


「ダメです!」


 そうかダメなのか。

 仕方ないので、帰るまでそのままにした。

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