ゴールが変わっていた
堂城さんとシキの仲を改善する方法はないのだろうか?
そんなことを思ったけど思いつかないまま今日も学校が終わり、真白の待つ団地に帰る。
「おかえりなさい!」
「はい、ただいま。なにか変なことはなかった?」
「なにもありませんよ」
「そっか。お昼の弁当はどうだった?」
「とても美味しかったです!」
「ならよかった」
真白から昼の弁当の感想を聞いて、部屋に鞄なんかを置いてからアイテムボックスに入る。
今日はなにもありませんように……。
「あったかーー」
目の前に、大きな骨の模型があった。
なんか博物館とかに置いてある恐竜とかマンモスの骨の模型を想像させる。
「姉ちゃん」
「お、アキヤ。見た? これ見た?」
「見たもなにも、入った瞬間に目の前にあったんだけど?」
「ふふふ〜ついに完成したのだよ」
「いや、完成って……これってあのフェンリル? の骨だよね?」
「そう!」
「生きてるのを探してたんじゃないの?」
「それね〜」
残念そうな声色で結果を察することはできた。
「巣の跡みたいなのは見つけられたんだけど、どうも移住したっぽいんだよね。きっとこいつが不死王に捕まったのが原因だよね! おのれ不死王許すまじ!」
「そっか。それで、この骨の標本を作ったと?」
「違うんだなぁ、ただの標本とは違うのだよ」
「どう違うのさ」
「なんとこれは召喚獣なのだ!」
「召喚獣って……F●の?」
「そう●Fの」
「ええと、つまり……召喚したらすごい攻撃とかしてくれると?」
「それもできるけど、もうちょっと応用が効くかな。ほら犬だから、相手を追いかけてみたり、散歩したり、ワシワシしてみたり、牙攻撃、爪攻撃、冷気属性咆哮攻撃とか。召喚に付き命令一回、時間制限ありって感じ」
途中で召喚獣ではしなさそうなことが入っていたけど?
ああ、ペットが欲しいっていう初期の理由がまだ残っていたって感じかな?
「そしてこれは、アキヤの要望も叶えるのだよ」
「要望? もしかして」
「そう! 決戦のバトルフィールドだよ」
「じゃあ、召喚したら、このフェンリルが作ってくれるってこと?」
「そういうこと」
「ていうか、僕が召喚できるの?」
「できるはずだよ。ほら、変身スーツも召喚できているんだし」
「ああ……なるほど」
なんで変身できているかも謎だし、納得するしかない。
魔法?
いや、魔法にだって理屈はあると思うんだけど……その理屈も理解できてないしね。
「アキヤなら大丈夫だと思うけど、一応変身スーツを着ている時だけ召喚できるように調整しておこうか」
「わかった」
僕には頷くしかできない。
よくわからないので姉の判断に任せるしかない。
「なら、後で試してみるよ」
「そだね。感覚もわからないだろうから、いきなり本番はやめた方がいいかもね」
フェンリル標本と召喚魔法? の開発に没頭していたからか今回はそんなに散らかっていない。
……いや、出し入れした道具が散らかってるな。
どうして元の場所に戻るように設定されていないのか。
こんなすごい物が作れるのに、どうしてそういう細かいところは効率的ではないのか?
姉だからか?
そんな疑問を抱きつつも片付けを済ませる。
その間に変身スーツの改造も終了し、召喚機能が追加されたのだった。
夕食の席でそれを真白に報告すると、目をキラキラさせて「見たい!」ということになった。
蛇要素はないけどいいのかな?
まぁ、いいのかもね。
「テストするのであれば、誰にも見られない、誰にも邪魔されない場所がいいですね!」
真白はさっそくスマホを手に取った。
三十分もしないうちに堂城家の車がやってきて、そこには当たり前に堂城さんもいた。
「あの件の解決方法ができたのでしょう? 私も見たいわ」
それはそうかもしれない。
けど、真白を真ん中に置いて嬉しそうに話をする様子は娘と会うチャンスはどんなものでも逃がさないと思っているっていうか、そっちがメイン目的だろうって感じがする。
どっちでもいいんだけどさ。
車は山の中の道に入り、それから『私有地立ち入り禁止』の看板がある道へと入った。
「ここなら多少うるさくしても大丈夫よ」
「ここは?」
「堂城家の私有地。昔はここにも屋敷とかあったのだけど、いまは使っていないの」
「ふうん」
屋敷はあったというけど、それらしい名残はない。
ただ、それなりに手入れはされているんだろう。
その証拠に、車が停まった広い空き地は背の低い雑草が少し生えている程度で周囲の木々に侵食された様子がない。
「よし、じゃあやってみるか」
変身。
そして……召喚!
「うおっ」
ズルッと……全身からなにかが引っ張り出されたような感覚がした。
召喚魔法なんだからMPを消費したのかな?
これはその感覚?
でも、右手の指輪から火を出したりしても、ここまで激しい感覚はなかったんだけど……。
そう思っている間にすぐ側で白い風が起こり、その中心になにかが姿を現す。
「ひっ」
そこに現れたのはとてつもなく大きな白い犬だった。
これが、フェンリルか。
「は、早太郎だ」
運転手をしていた立花さんがそんなことを言う。
早太郎? 昔話の?
なんでそうなると思っている間に、フェンリルが吠えた。
召喚する時になにをして欲しいかは頭に浮かべていたので、改めての命令は必要ないみたいだ。
吠え声が風を呼び、僕たちの周りに氷雪を混ぜた風の壁が生まれる。
風の渦の中心に僕たちがいる感じなんだろう。
「なるほど、これなら外には逃げられないわね」
堂城さんも納得したようだ。
「なんで早太郎なの?」
「恐ろしい霊犬の代表みたいなものなのよ」
僕の疑問に堂城さんが答えてくれる。
普段は温厚なのだけれど、一度敵(獲物)と定めたら自分の命も顧みずに襲いかかるのが霊犬なのだそうだ。
なるほど。
そういえば早太郎も目標の妖怪を倒した後は亡くなっていたっけ?
「それで……これはいつ解けるの?」
うん。
風の壁がなくなってくれないと、俺たちも外に出られないよね。
「効果時間が切れるまで……」
って、それはいつなんだ?
そういえば聞いていなかった。
「尾羽くん?」
「あははは」
僕はそっと目を逸らした。
効果時間はわからなかったけど、変身を解除したら召喚も解除された。
そして僕はぶっ倒れた。
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