文化祭の準備とミノタウロス焼肉弁当
文化祭の準備が進んでいく。
というか、僕たちは最初に買い出し班をしたし、堂城さんは知り合いの伝手だというところからメイド服を持ってきた。
ヴィクトリアンメイド服だっけ?
けっこうガチめな作りに見えるんだけど?
堂城さんの一族にはそういう商売にも手を広げている人がいるそうで、そこにたくさん在庫があるそうだ。
それでも、欲しいと言ったらクラス全員分が送られてくるのはすごいと思うんだけど……。
ともあれ、これで当日は全員がメイド服を着ることが決定となった。
僕は僕で、水風船を割れるようにダーツを改造したからね。
ちゃんと作業はしたのだ。
シキ?
買い出しに付いてきただけで終わり。
まぁ本人にやる気がなさそうだし、それもまたよしなんじゃない?
そういうわけで、僕たちの文化祭準備編は終了しているので始まるのを待つだけだ。
そして僕には百鬼夜行対策が残されているんだけど……。
姉の完成待ちなんだよね。
あれだけ自信満々だったんだから、「できなかった」はないと思うんだけど。
できなかったとしても堂城さんやシキもなんらかの方法を提案してくるはずだし、この件に関しては慌てても仕方ない、という気持ちでいこうと思っている。
それより。
「昼飯! 早くよこせ!」
ウ〜ガルルと唸ってそうな勢いでシキが弁当を求めてくる。
ここはいつもの昼食を食べるところ。
もう昼休憩はここで過ごすのが定番になってしまったな。
「はいはい。今日は焼肉弁当だよ」
「よしっ!」
弁当のレパートリーって、けっこうすぐに尽きるよね。
朝の時間のない時に詰め込まないと行けなかったりするし、冷凍食品コーナーに弁当のおかず系がたくさんあるのも納得だ。
僕の場合、彩り野菜の部分ぐらいしか冷凍食品の出番はないんだけどさ。
だから困る。
僕の料理レパートリーの中から弁当に使える物っていう限定がかかるんだから、少なくなるのは仕方ないんだけさ。
とりあえず、ご飯、卵焼き、彩りの野菜はほぼ定番で、主菜を鳥、豚、牛の順番でルーティンしている。
今日は牛の日だった。
材料に関しては、なんだかんだでアイテムボックスに入るたびに姉がなにかしら増やしているので減る様子はまったくない。
不死王だったかな?
そいつの侵略行為が続いているそうで、モンスター討伐の依頼には事欠かないんだそうだ。
そして、今日の焼肉弁当に使った牛肉はいつものファイアブルではなかったりする。
あれは脂身が多くて、冷めると脂の固まった部分が多くて見た目が悪い。
だから前の時も牛カツにしたんだし。
つまり、新顔の魔物だ。
ミノタウロスだ。
ファンタジーの牛系モンスターと言ったらやっぱりこれって感じだよね。
やっぱりミノタウロスもいるんだって感動したよ。
でも、人型なんだ。
まぁね。
人型を解体するのはオークやオーガでもう慣れたしね。
いまさらモンスターの死体を見てドン引きするとかないんだけどさ。
……最近、ヤンキーとかヤクザとか見かけてもあんまり怖くないんだよね。
鍛えた人がさ「いざとなったら殺せるって気持ちで余裕が持てるようになる」って言っているのをなにかで見たか聞いたかしたけどさ、あれと同じ気持ち。
いざとなったら殺せるし、すごく手際良く解体処分できるっていう気持ちになれる。
やばいね。
うん、やばい。
食欲がなくなる話を思い出すのはやめよう。
ともかく、今日はミノタウロス肉を使った焼き肉弁当だ。
薄切りにして刻んだタマネギと一緒に焼肉のタレで炒めた。
ミノタウロス肉は筋肉質で脂身が少ないので冷めても美味しそうだと思ったんだけど。
「美味い!」
一口で、口の中に旨みと牛肉の甘みが広がった。
けっこう焼いたんたんだけど、それでも肉は柔らかく、噛むほどに味が滲み出てくる。
タマネギとの相性も良い。
弁当にするんだからなるべく汁気が少なくなるようにしたんだけど、成功みたいだ。
丼にどさっと乗せて食べてもいいかもしれない。
「うん、美味しいわね」
堂城さんも満足のようでなにより。
そして、シキは……。
「……」
無言で掻っ込んでいる。
満足みたいだ。
「無事に飼い慣らしに成功しているわね、尾羽くん」
無言でひたすら食べるその様子に堂城さんが満足そうに笑っている。
すごく悪い顔です。
「堂城さんって」
「なに?」
「最初からシキのこと毛嫌いしていたみたいだけど、なにか因縁があったりする?」
「……私にはないわ。ただ、歴史を振り返れば退魔師や、その先祖である陰陽師たちと断鬼の蛇たちが敵対していたこともあるから、反射的に警戒はしてしまうわね」
「ふうん、そっか」
「尾羽くん、私の中にはね、歴代の蛇神の妻たちの記憶が継承されているの」
「え?」
「だから、昔のことと一言で割り切れない時もあるの。だって、記憶だけのこととはいえ、当事者でもあるのだから」
「それって、大変じゃない?」
「大変よ。でも……」
と、堂城さんはなにかを思い出したのかふっと笑みを浮かべた。
「あの時、莉菜さんが私を守ってくれた。だから選ぶことができた。そうじゃなく、強制されたままだったら、あるいは違っていたかもしれないわね」
「そっか」
姉に恩を受けているっていうし、いまでも姉のことが大好きみたいだけど……堂城さんにとってはそれぐらいに重要だったってことなんだな。
「へ、辛気臭い」
そしてシキはそういうことを言ってしまうから、また堂城さんの怒りを買ってしまう。
なんなんだろうなぁ。
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