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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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100円ショップの駐車場で



 車は蛙を乗せたまま近くの100円ショップの駐車場に止まった。

 途中でフロントガラスから見えなくなった蛙だけれど、外に出てみると車の屋根の上にいるのを見つけた。


 角の生えた蛙だ。

 大きさも普通の蛙どころじゃない。

 フロントガラスの半分が埋まるぐらいの大きさの蛙なんて初めて見た。


「これも悪角?」

「そうだ小僧。小僧は蛇の一族の入り婿か? そちらは……京の退魔師か」


 蛙のままで男の声が響き、僕とシキを見た。

 駐車場には他の車もあるし、店の中にはたくさんの客がいるはずなのに平気で喋っている。

 目撃されても大丈夫なのかな?


「こちらのことをわからなくさせておる。心配するな小僧」

「はぁ」


 僕の心配は見抜かれていたみたいだ。


「それで……いつまで私の車に乗っているつもりかしら?」

「おっと」


 蛙が跳んで地面に降りる。

 空気が冷えていたから、後ちょっと遅かったら車の上で巨大蛙の氷像ができていたかもしれない。


「相変わらず短気じゃのう。蛇姫は」

「なにか悪巧みをしているそうね?」

「それよ。夜行さんの気配を感じて若い者どもがはしゃいでたまらん」

「愚痴を言うためだけに来たのかしら?」

「まさか。そこの京の退魔師がうちの若い者を何匹か捕まえたと聞いてな」

「返さねえぞ」


 シキが即答すると、蛙は顎の下を膨らませて笑った。


「いらんよ。むしろ交渉材料にされてはたまらん。変に封印することなく、きれいに片付けておいてくれ」


 うわ、あっさりと切り捨てた。


「情のないことを」


 堂城さんも不快に感じたようだ。

 だが、それには蛙は笑うだけでなにも言わなかった。


「まぁいいわ。それで?」

「百鬼夜行なんぞ起こされては迷惑だからな。アレをどうするつもりなのか聞いておきたくてな」

「再封印をしてまた誰かに狙われては意味がない。きっちりと消滅させるつもりよ」

「ふうむ。なるほどな」

「なにか?」

「いいや、ならばよいよ」


 そう言うと巨大蛙は跳んだ。

 器用に後ろ側に跳んで、駐車場を仕切る柵を越えるとスッと姿が消えた。


「うまくやる所を見させてもらうよ、蛇姫よ」

「蛙のジジイめ」


 声だけが響く中で堂城さんが忌々しく呟く。


「さあ、買い物をしましょう」

「え?」

「どうして驚くの? そのためにここに来たのでしょう?」

「いや、その切り替えの速さに驚いているんだけどね」

「あの蛙のやることに真面目に付き合っていると疲れるわよ」


 そう言って店に入っていく堂城さんにさっきまでの余韻はない。

 僕は戸惑いながらその背を追いかけた。


「あの蛙とは知り合い?」

「知り合いというほどではないわね。ただ、斜九字(ナメクジ)とは長く断絶していたけれど、悪角(カエル)とはそれなりに交流がありましたので」

「あいつ、アタシが捕まえた蛙どもを切り捨てたな。イカサマか?」

「さて……どうかしら?」

「おい」

「アレは悪角の長老で口が達者なの。簡単に真意を見せたりはしないわ。アレの考えを読もうとするとこちらの動きが鈍るだけ。それならこちらの目的を黙々と遂行した方がましよ」

「ケッ、ウゼェタイプだ」

「そういうこと。こちらはこちらで目的を達成すればいい。奴らがなにかをしてくるなら、その時は捻り潰せばいい」


 店のカゴを取った堂城さんに、僕は買ってくる物をメモした内容を確認して店内を巡る。


「放置するだけなら、顔を出してくるはずもないよね?」

「尾羽くん、相手の考えを読もうとしているわよ」


 ふと呟いた僕の言葉に堂城さんが待ったをかける。


「他者の思惑に踊らされる必要はないのよ。自分のやりたいことをやればいいの。たとえ失敗しようと、後悔しようともね」

「その二つは経験したくないなぁ」


 失敗とか後悔なんて、できればやりたくない。

 だからみんな色々と考えているんだと思うんだけど。

 でも、堂城さんは考えなくていいと言っている。


「失敗も後悔もない人生なんてありえない。必要なのはやりたいこと、やるべきことを迷うことなく行い、そしてその結果を受け入れる覚悟を常に持つことよ」


 すごく深いことを言っているような気がするけど……。

 100円ショップで水風船を大量に買い占めながら言うセリフではないよなとは思う。


「先端が金属製のダーツがないわね」

「やっぱり100円ショップで全部揃えるのは無理か」

「とはいえ本物を買っていては予算が嵩むわね。手作りでなんとかする?」

「先端だけ入れ替えればいいんだし……」


 そう考えて、ふと思い出した。

 あるな。

 金属製の先端候補。

 アイテムボックスにいくらだって材料はあるんだけど、どうせならアレを有効活用しよう。

 どうせ明日も下駄箱に入っているだろうし。


「うん、当てがあるから先端は僕が用意するよ」

「そう? それならお願いするわ」

「……」


 僕たちがそんな会話をしている間、シキはずっと黙っていた。


「どうかした?」

「なんでもねぇよ」


 ムッとした感じでシキが言い返してきたけど、その言葉にはいつものキレが足りない気がした。


「失敗も後悔も受け入れるかよ。ケッ」


 シキが小さく呟いたのを、僕は聞かない振りをすることにした。

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