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戦技祭④

 何とも言えない空気を変えるように、カズトが口を開いた。


「そういえば――戦技祭って、なんで剣士も魔導士もごちゃ混ぜなんですかね? 普通、部門分けませんか?」


 二人が視線を向ける。


「中等部と高等部まで混ざってますし。不親切な設計とというか、フェアな条件じゃないですよね?」


 もっともな疑問だった。

 セレナは静かに頷く。


「形式上は“総合戦闘技術”の競技ですから。武器や魔術の種別では分けない、というのが建前です」


「建前?」


「元々は、剣士と魔導士のどちらが上かを巡って学園内で揉めたのが始まりだと聞いています」


 零が少し驚いた顔をする。


「そんな理由で?」


「最初は中等部同士の争いだったそうです。

それが高等部に飛び火し、学園全体を巻き込む騒動になった。最終的に代表者同士の大規模な決闘で決着をつけ、それが恒例化したものが今の戦技祭です」


 カズトは苦笑する。


「血の気が多いな、この学園……」


「それだけではありません。この国は実戦を重視します」


「実戦?」


「はい。強い者が国を守る、という思想です。

戦う相手は魔物だけではありません。我が国は大国ですが、当然敵国もいます。戦場では剣士とも、魔導士とも戦う。年齢も立場も関係ない」


 一拍置いて、続ける。


「冒険者制度も同じ考え方ですね。出自に関係なく、実力があれば金銭を稼げて国にも貢献できる。

まぁ貢献したいかは人によりますが、ランクが上がれば名誉も得られます。」


 零が静かに頷く。


「確かに、あれもかなり実力主義ですね」


「学園の特待生制度も同様です。才能ある者を取りこぼさないための仕組み。実力が認められれば、相応の学年に編入される。貴族の学生相手に潰されないのも、ある意味では必要条件みたいなものです」


 カズトは思い出す。


「今年入学の特待生もいましたよね」


「あなた達も含めて、ですね。そして戦技祭ではその差も関係ありません。

中等部でも、高等部でも。貴族でも、平民でも。特待生でも在校生でも。

不公平さを含めた総合力を見る場。それが戦技祭です」


 カズトは腕を組み、少し考える。


「理不尽込み、ってわけか」


 セレナは微笑む。


「とはいえ、完全な無差別ではありません。序盤での危険度が高すぎる対戦は避けられますし、ある程度の配慮はあります」


「じゃあ、無茶苦茶ってわけでもないんですね」


「ええ。でも」


 その瞳が真っ直ぐにカズトを見る。


「理不尽をどう越えるかは、確実に見られています」


 零が小さく息を吐く。


「徹底してますね」


「強い国であり続けるためですから」


 静かな断言。


 カズトはふっと笑った。


「ますます楽しみになってきました」


 セレナの視線が柔らぐ。


「あなた達が負けるとは思っていません。でも、油断はしないでくださいね。毎年、イレギュラーな実力者が現れますから」


 零も静かに言う。


「私たちの立場は、強さの上にあります。出るからには、負けられません」


 不公平で、理不尽で、不親切で――

 だからこそ価値がある。


 戦技祭は、ただの学園行事ではない。

 この国が掲げる実戦主義を体現する舞台だ。


 その中心に、自分たちは立とうとしている。


 戦技祭が始まるまでは、あと一ヶ月近くある。

 トーナメント形式である以上、最後に物を言うのは実力だ。


(今よりも、もっと強くならないとな)


 カズトは顔を上げた。


「よし。セレナ様、今から訓練場に行きませんか?」


 セレナが瞬きをする。


「いきなりですね」


「入院で鈍った体を動かしておきたいんです。一ヶ月なんてすぐですし」


 零がじっとカズトを見る。


「あんた昨日退院したばっかりでしょ」


「だからだよ。治ったなら感覚戻さないと」


 少しの沈黙の後、零は小さく息を吐いた。


「分かったわ。じゃあ、私が相手してあげる」


 カズトが目を瞬く。


「えっ、零が?……手加減しろよ?」


「い・や」


 即答だった。


「鈍ってるかどうか確かめたいんでしょ? なら本気でやるわよ。あとあんたが無茶をする前に気絶させてあげる」


 カズトは苦笑する。


「容赦ないな。

じゃあ、まずは零に勝つところからだな」


「は?」


 ぴくりと零の眉が動く。


「入院前でも勝ててなかったのに、何言ってんの」


「目標は高い方がいいだろ?」


 零は小さく鼻で笑う。


「後悔しても知らないわよ」


「それでは私は審判を務めましょう。多少の怪我は治せますが、くれぐれも無茶はしないでくださいね。」

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