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生徒会活動③

 シオンへ補修完了の報告を済ませると、「あら、意外と早かったわね」と少しだけ眉を上げて感心され、そのまま四人で学園の食堂へと向かうことになった。


 学園の食堂は、まるで高級ホテルのビュッフェのような豪華さだった。


 広々とした空間に漂う香ばしい匂いに、セレナの目が宝石のようにキラキラと輝き始める。


 彼女は迷うことなく、一番ボリュームのあるメニューが並ぶカウンターへと迷わず足を進めた。


「補修作業、お疲れ様でした、カズト、零。お腹も空いたでしょう? 今日はシオン生徒会長が奢ってくださるそうですよ」


「あら、私がそんなこと言ったかしら? まあいいわ、初任務の特別ボーナスということで。好きなものを選びなさい」


 シオンの許可が出るやいなや、セレナは注文カウンターの料理人に力強く告げた。


「ではこちらの『特製A5ランク牛の厚切りステーキ』を一つ、いえ、三つください!」


「三つ!? セレナ様、それ全部一人で食べる気ですか?」


「何を言っているのですか。お肉は力の源ですよ? それに、わたしは昨日の特訓でエネルギーを使い果たしていますからね。これくらい、淑女の嗜みです」


 セレナは運ばれてきた山のようなステーキを前に、ナイフとフォークを手に取って満足げに微笑む。


 王女としての気品を維持しながらも、器用に勢いよく食べ進めた。


(あの演習の一件以来、セレナ様は段々と周りを気にしなくなってきたなぁ)


 一方、零はそんなセレナを横目に、少し軽めのサラダとパスタを選びながら、カズトのトレーを覗き込んだ。


「カズトは? あんたも結構体力使ったんだから、しっかり食べなさいよ」


「わかってるよ。それより、シオンさん。さっきの平民生徒たちに聞いたんですけど、あの貴族のグループ、他にも嫌がらせをしてるみたいですね」


 カズトがステーキを頬張りながら話を振ると、シオンは優雅にブドウジュースを口に含み、目を細めた。


「そうね。今回の件で彼らもしばらくは大人しくなるでしょうけれど、根は深いわ。だからこそ、あなたたちの力が必要なのよ」


「(もぐもぐ)まあ、飯も美味いし、これなら頑張れそうかな。」


「全く。あんたは食べ物で釣られすぎなのよ。でも、まぁ。学園生活も、悪くないかもしれないわね」


 そう言いながら、カズトの口の端についたソースをナプキンで拭き微笑む零はどこか満足気だった。


午後の魔法実技演習


 午後の日差しが降り注ぐ演習場。

 

 今度は任務ではなく、生徒の一員としての魔法実技の時間だ。


 カズトは午前中に中等部の生徒をビビらせてしまったことを少し反省し、掌から控えめに水魔法を放った。


「ウォーターショット!」


 放たれた水の弾丸は、穏やかで精緻な魔力操作により、的のど真ん中を正確に射抜く。


 午前中の荒々しい電撃とは打って変わった静かな技量に、周囲の生徒たちも驚きを隠せない。


「あら、カズトにしては大人しいじゃない。じゃあ、私は有言実行。火魔法の練習をさせてもらうわね」


 零はアルケミストのスキルを封印し、純粋な魔力だけで炎を形成しようと奮闘していた。


「火よ! あ、ちょっ、加減が難しいわね」


 不慣れな魔法に苦戦しつつも、持ち前の魔力操作で火柱を上げる姿は、彼女自身のポテンシャルの高さを如実に物語っていた。


 一方、その少し離れた場所では、セレナが聖女のような慈愛の光に包まれていた。


「大丈夫ですよ。すぐに治りますからね」


 演習中に魔法を暴発させたり、転んだりして傷を作った生徒たちのもとへ駆け寄り、回復魔法を施す。


 王女自らの治療に、生徒たちは恐縮しつつも、その神々しい姿にすっかり魅了されている様子だった。


(セレナ様、あっちの方が執行委員の仕事より向いてるんじゃないかな。しかしノってる時のギャップが凄いな)


 カズトがそんなことを考えていると、隣で小さな炎を揺らしていた零が意地悪く小突いてきた。


「ちょっとカズト、何ぼーっとしてるのよ。さてはセレナ様の聖女スマイルに見惚れてたわけ?」


「見惚れてないよ。ただ、あのギャップが凄まじいなと思って。あんなに優しく治療された後に、もし敵対してあのレーザーを食らったらって想像すると、ちょっと同情しちゃうだろ」


「まあ、あのアグレッシブな性格は、基本的に身内向けみたいだけどね。あ、しまった」


 零が放とうとした火球があらぬ方向へ飛びそうになる。


 カズトは素早く水の膜を作り、空中でその火を包み込んで消火した。その時、演習場の入り口付近から、少し騒がしい声が聞こえてきた。


「――おい、聞いたか? 特別執行委員の奴ら、午後は大人しく水遊びをしてるらしいぞ。午前中の勢いはどうしたんだ?」


 噂を聞きつけた別の貴族生徒たちが、ニヤつきながら近づいてくる。


 彼らを不安そうに見つめる周囲の様子を感じ取り、カズトは溜息をついた。


「これ、あまり弱い魔法ばかり見せていると、また調子に乗らせてしまうかな?」


「そうですね、カズト。平和主義も美徳ですが、時には格の違いを見せつけるのも執行委員の務めです。少し、強めに打ってみてはどうですか?」


 治療を終えたばかりの清楚な笑顔のまま、セレナの瞳の奥には「やっちゃいなさい」という過激な光が宿っていた。


「わかりました。じゃあ、ちょっと時間をかけて威力重視で行きます。」


 カズトは標的の木人へと向き直った。


 水分を急速に集め、限界まで「圧縮」。


 さらに水の先端を鋭利な槍へと「形状変化」させ、仕上げに凄まじい速度の「回転」を加える。


「いけ、――『ウォーターランス』!」


 ドォォォォォン!!


 空気を切り裂く高音と共に放たれた水の槍は、木人を木っ端微塵に弾き飛ばし、背後の石壁に衝突して爆発した。


「なっ!? 水、魔法だよな、今の」


 茶化していた生徒たちは、顔に水飛沫を浴びたまま呆然と固まっている。


 カズトは苦笑いしながら、彼らをチラリと見た。


「悪いな。まだコントロールが難しくて。次は君たちの方に飛んでいくかもしれないけど、許してね」


「ひ、ヒィィッ!! 失礼しましたぁっ!!」


 彼らが脱兎のごとく逃げ出した後、埃が晴れた場所には――せっかく午前中に直したばかりの壁に、再び見事な穴が開いていた。


「…………あ。」


「あんた、バカなの?」


 零の冷たい視線が突き刺さる。


「今回はあんた一人でやらせるからね」


「あらあら。カズト、威力を示せとは言いましたが、壊せなんて言っていませんよ?しかも同じ場所なんて、ある意味芸術的ですね。ふふっ、わたしは授業のあと生徒会室にお手伝いに行かなければなりませんので、よろしくお願いしますね?」


 セレナは「頑張ってください」と優雅に一礼すると、足早に去っていった。


 一人残されたカズトは、粉砕された壁を前に、再びコテを握る未来を覚悟して天を仰いだ。

たくさん食べる女の子が好き

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