契約者①
朝日が昇り少しした頃、2人の人物がセレナの元へと呼ばれていた。
1人はヴァルフレア公爵家令嬢のシオン。
短期間でイフリートと契約を結んだ実績から、カズトの精霊契約に適任とされた。
そしてもう1人、見慣れない人物がそこにいる。
彼女の名はエーラ。
戦技祭予選の決勝戦で、カズトと戦った少女だ。
中等部3年の特待生なのだが、しれっと風の精霊であるシルフィードを召喚して見せていた。
魔法が好きで好きで仕方がなく、その身で受けとめたい欲求が強いなんとも特殊な感性を持っている。
予選だったこともあり、カズトの雷魔法の方と本人の言動が目立ちあまり話題にならなかったが、普通なら中途部の生徒が契約精霊を召喚した事は異常である。
セレナは彼女の精霊との出会いを聞く事で、何かヒントが得られるのではないかと考えていた。
「お二人とも、急な呼び出しに応じて頂きありがとうございます」
朝早くからマリアが2人の家を訪ねて、急いで準備をさせて城まで来てもらっている。
一般人のエーラはともかく、公爵令嬢のシオンには本来ならあり得ないほど急な呼び出しだ。
「セレナちゃんのお願いならお安い御用よ。それに、何かあったみたいだからね。私も気になるわ」
「えっと、あの、お気になさらず、、」
慣れているシオンと違い、王族とは縁のないエーラはかなり緊張している様子。
そもそも自分がなぜ呼ばれているのかも理解はしていない。
最悪知らないところで何な気に触ることをしていて、罰せられるのではないかとすら思っている。
「今回は協力をしてもらいたくてお呼びしました。精霊との契約について、お二人の経験を教えて頂きたいのです」
「それは構わないけど、どうして急に?」
大切な妹分であるセレナに精霊について教えること自体は何の問題もないが、こんな朝早くに呼び出してまで聞きたいことなのかと疑問が走る。
「これは極秘のお話になるのですが、零が百足に誘拐されたのです。その救出にあたって現在カズトが精霊と契約を試みています」
「はぁ!?あの零さんが!?冗談でしょ!?」
カズトと同様の反応をするシオン。
エーラはあまりことの異常さを理解している様子はないが、カズトと同様に生徒会特別執行委員である零の噂はよく知っている。
そこから相手は百足の上位幹部、それも複数名である可能性が高いこと、短時間でのパワーアップの必要性があることから、雷の精霊との契約がどうしても必要な事が説明された。
「なるほど、確かに短期間で力を得るには精霊との契約が手っ取り早いわね。それは私が1番実感しているもの」
シオンが納得している隣で雷の精霊と聞いて目を輝かせているエーラ。
魔法に対して異常な執着を見せる彼女は、カズトとの試合でも周囲をドン引きさせていたのは記憶に新しい。
「雷の精霊、いったいどんな子なのでしょうか」
誰もみた事がない雷の精霊に色々な想像を膨らませて自分の世界に入ってしまっている。
「エーラさん、戻ってきてください」
「はっ!失礼しました」
エーラは涎を拭きながら謝罪する。
「と言うわけなので、お二人の精霊の話を聞かせてもらえないでしょうか?長くなると思うので、こちらで座って話しましょう」
案内された席ではマリアが紅茶とお菓子を用意して待っていた。
「それじゃあ、まずは私から話しましょうか」
この場に慣れていないエーラに配慮してか、シオンから話を切り出した。
「私が精霊と契約したのは戦技祭が始まる1ヶ月くらい前ね。あの事件以降、もっと強くならなきゃと思ってかなり無理をしたわ」
シオンは公爵家に伝わる精霊契約の伝手があった事、契約時に精霊から求められた内容などを順序立てて説明した。
「公爵家はイフリートの居場所を把握していたんですね。それにしても一歩間違えれば死んでいたかもしれないなんて、知っていれば止めていたところですよ」
「だから誰にも言わなかったのよ。特にセレナちゃんに知られると大変だから、すぐに出発したわ」
舌を出しながら悪気のない様子のシオンにセレナも頭を抑えている。
「そんなに大変な思いをされたなんて、私の時とは随分違いますね」
精霊契約がそんなに大変な事だとは思わなかったと隣で主張するエーラに、2人が意外そうな視線を向ける。
どんなパターンでも相応の苦労はあるはずなのだが、エーラにはその様子が伺えなかった。
「エーラさんはシオンお姉様とは随分違った契約方法だったのですね。ぜひ聞かせて欲しいです」
「契約方法自体は似ていると思うのですが、私の場合は苦痛とかはなかったので...。
私が契約したのは3年の始め頃です。私は冒険者登録もしているので、あの日は小さな商人の荷物を護衛する依頼を受けていました」
学園に通う学生の中には、冒険者登録をして小銭を稼いでる者も一定数いる。
特に特待生は実力もあり実践経験も積めてお金も稼げるので、学業の合間に冒険者を兼業している生徒は多い。
その中でも整備されている王都周辺の荷運びの護衛は、それほど強力なモンスターとも出会わないので比較的安全な部類に入る。
「最初は順調だったのですが、途中で数体のブラッドウルフに遭遇しました。
そいつら自体は退けられたのですが、その直後にギガントホークに襲われたのです」
大型犬くらいのサイズのブラッドウルフはDランクモンスターなので、数体程度であれば特待生なら問題なく相手どれるだろうが、ギガントホークはCランクの巨大な鳥型のモンスターだ。
空を飛ぶ相手はランク以上に討伐難易度が高く、不意打ちであれば命の危険を伴う。
「上空からの接近に気が付かず、背後から獲物として捕獲されてしまいまして、身動きが取れない体制でそのまま空中に持ち去られました」
「正直死んだと思ったのですが、運ばれている途中で幸運にも他のギガントホークが獲物の横取りを図ったみたいで、暴れた結果空から落とされました」
それは幸運なのだろうかと疑問に思っているセレナだったが、そのままだと巣に持ち替えられて啄まれてたと思えばまだ幸運と言えるのかと自分を納得させる。
ほとんど描写はないですが、街中には普通に定番の冒険者ギルドとかもあります。
なんならそっち視点の話しが本来メインだったので、いつか書ける日が来るといいなと思っています。




