23話
いやあ、真っ向から戦おうとせず、即撤退の判断をするとはびっくり。もっと魔族って好戦的な生き物だと思ってたよ。
リリムさんの結界を目印に転移してこれなかったら逃げられたかな? 結界の強度がどのくらいかわからないから今度試させてもらおう。
「チッ、転移術か。見えない範囲に居たつもりだったが、見誤ったな」
「あら、随分余裕なことね。貴方はここで死ぬのに」
ダリアさんが超好戦的ー。私はもうちょっとお話したいんだけど。
「魔族さんはここに私の偵察に来たのかな? 人間を苛めないって約束してくれるなら逃がすのも私はやぶさかでもないよ?」
「はっ、お前ら人間が俺を逃がすわけないだろうが。そもそも、人間を殺さないわけもないだろう!」
「そろそろ、結界破られ、ます」
おや。思ったより短いかな。これは私が転移使えなかったら逃げられてたねえ。仕方ない、戦うか。
「はあ、仕方ないなあ。暴力嫌いなんだけど、貴方は生き返らせないからね」
『私の一矢はあいつの頭を射抜き貫通し死に至る』
矢が貫通し、空中にいるあいつが死に地に伏せる姿をイメージする。
「さよなら」
しかし、カンッという音とともに矢は弾かれる。
「あれ?」
「あの、音和様……まだ結界、壊れてないです……」
あっ。そっか、結界貫通するイメージ先にしなかったからそっちが優先されたか。イメージに準じないと物理法則とかその辺りの方が優先されるんだよなあ、私の弱いところだね。
「あははははは! 今の勇者パーティの連携はボロボロではないか!」
高笑いされた。いや、確かにそうなんだけどなんかムカつく。そもそも知り合ったの昨日だぞ昨日。
パリンという音がした。
「良し、では俺は報告に帰らせてもらう!」
しかし、そう言うと共に嵐が魔族を襲った。
「ぐおおおおお!?」
「だから逃がしませんわ。確かにまだまだ連携は出来ませんが、貴方程度、個々の能力があれば殺せるんですのよ」
ダリアさんが黙っているのも、魔力に力を込めているのも気付いていたけれど、まるで小さなハリケーンだなこれ……老子さんの一番弟子っていうの納得かもしれない。これだけで死んじゃうんじゃない?
「音和さん、射抜いて下さいまし! あれは動きを縛る程度、殺せはしませんわ!」
「了解」
弓を放つときは真剣に。そうは見えないかもしれないけど真剣に。今度は念入りに。別に高笑いされた恨みとかないけど確実に。殺す。
「今度こそさよなら」
……ふぅ。疲れた。
「やりましたわね」
「はい……すごい疲れました……」
「私も疲れた、甘いもの食べたい」
食事はとりたくないけど今は糖分が欲しい。
結界維持とかは特に疲れそう。私そういうのあんまり得意じゃないからやろうと思ったらへとへとになりそう。
「国民の皆さま! 此度の勇者の実力を見ましたか!? 隠れていた魔族を発見し、殺す実力を既に持っています! 昨日召喚されたばかりだというのにです! 平和を期待していてくださいまし!」
なんかダリアさんが演説している、元気だなあ。
「音和様、手を振ってあげてみたら……?」
あ、なるほど。
軽く手を振ってあげる。笑ってあげられたら良いのかもしれないけど、自分の表情はいまいちよくわからないのでそこは仕方ないということにしよう。
わああああぁぁぁぁ!!!勇者様バンザイ!
うるっさ。
こんなので士気上がるのかと思ったけど思った以上にみんな元気だった。耳が死ぬ。
「ナイスですわリリムさん、音和さん。これで街中に魔族が現れたことよりも勇者の強さが際立つでしょう」
あ、そっか。街中に魔族が現れてたって考えるとマズイのか。
「よく考えてるよね、流石ダリアさん」
「偵察系の魔族は、潜入潜伏が得意、なのかもしれません、ね」
そもそも街に魔族が現れないようになってるんだろうか。空から侵入され放題な気がするけど。後で聞いてみようかな、覚えてたら。
「とりあえず、国民の意識は勇者に向いたのでこれで良いでしょう。あとは父に報告の後、早めに旅に出る必要がありそうですわね」
「連携っていう課題も見えたけど、そっちは旅しながら改善していく感じ?」
あれは偵察系っぽいからきっと弱い魔族なんだろうけど、戦闘系の強い魔族相手に連携なしで挑むのは割と危険なんじゃないかな。
「そうですわね、弱い魔物相手なら連携失敗してもこのパーティなら心配はないでしょうから、道中で練習しながら進んでいきましょうか」
「ですね……私も結界をタイミング見て消すべきでしたし……練習、したいです」
「いや、あれは私の頭が抜けてただけだね、リリムさんは悪くないよ」
結界ごと貫く一矢を放つべきだったよなあ、本当に。自分が苦手なことは頭から抜け落ちやすいの本当になんとかしたい。
空中にいる魔族の動きを封じれるくらい強い結界使えるリリムさんが仲間なんだから、それがある状態での連携は本当に必須だよね。
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