22話
おはようございます。
評価下さった方、ありがとうございます。
そういえばここ武具店の割に服の量あったなあ、と思いつつ店を出る。
「いやあ、たくさん買ったねえ」
「必要なものは買っておくのが一番ですわ」
「でも……この量は、ちょっと全部は持って行けない、です」
「少し買いすぎましたかね? まあ服は消耗品ですから」
店にあるだけ買いきる勢いで選んでいって何を言っているのだろうかダリアさんは。とりあえず馬車に買ったものをぽいぽいと投げ入れておく。
「あら……?」
「どうしたのダリアさん?」
「誰か見てますわね。しかも複数、違う位置から。他国からの間者ですかね。リリムさん何か感じます?」
「すみません、方向だけでも教えていただけたら……」
何かいるらしい。そしてこの手のは私の苦手分野である。あ、いや待てよ。
『魔力さん魔力さん、何か私たちを見てるのいる?』
魔力さんの気持ちは言語として伝わらないけど、なんとなくふんわり伝わってくるものがある。
「人間、人間、人間、人間、で更に離れたとこに魔族が一人いるかな。今の私の右斜め後ろ方向」
「……いますね。纏ってる魔力が違うのが、一人」
何しに来てるんだろ。偵察かな?
「恐らく、勇者召喚されたのを察知して偵察に来ましたわね」
「どうする? 私の弓なら多分届くけど」
見えてはいないから精度はかなり落ちるけど、戦うことは出来るはず。
「街中なのが厄介ですわね。戦闘行為になった場合、一般人に被害が出る可能性が高いですわ。向こうから手出ししてこないのなら、勇者をまだ育ててるという認識のまま帰ってくれる可能性がありますわ。戦って逃げられると、不意を打つことが出来なくなりますし……。倒してしまえれば、勇者以外が倒した、は充分通りますが。監視している人間はおそらく勇者のことを見たいだけなので放置で良いでしょうけれど……」
「えと……逃げ出さないようには多分、出来ます。結界で囲えるので……。音和様が一矢放ったのちに、その場に結界、あとは三人でそこに強襲、出来るかと」
リリムさん優秀だねえ。優秀じゃなきゃメンバーには選ばれないだろうけど。
「ダリアさんどうする? 私は街中のこととかよくわからないから、指示に従う」
「そうですね……リリムさんの案で行きましょう。魔族を倒せるのなら、他の国の人間に勇者の力を見せつけるチャンスとも取れます」
間者に敢えて力を見せて報告させるということね。よくここまで頭回るなあ。
「じゃあ行くよ」
相手のことは見えてない。だから、相手に当てるイメージは難しい。ならばどうするか。
『あの位置にまっすぐ高速で飛んでいく矢』を放てば良い。当たれば良し、避けられてもリリムさんがカバーしてくれる。
魔力さんが教えてくれる、当たっていない。
「外した、リリムさん」
「はい……っ。住まう世界を区切ります!」
◆
めんどくさい任務を任された。下級魔族はこういうときに損することが多い、早く中級に上がりたいものだ。
ただ、新しく召喚された勇者を監視するだけという退屈な任務。ただし、勇者が鍛えられている場面のときは離れ、姿を隠す。
その道のベテランばかり集めて勇者を鍛えるというからな、下級の自分一人じゃ荷が重すぎる。だから、街中にいるときの姿を今はこうして監視している。
遠見の術が得意な自分には、勇者を見つけることは容易かった。というか誰でも出来ると思う。あの勇者は馬鹿なのだろうか、あれだけ魔力を使っていたら場所が簡単にわかる。
馬車で移動中でも魔力を使っているとか、今回の勇者はただの馬鹿だと報告しにさっさと帰りたいものだな。
その後は、馬鹿みたいに大量の買い物をして、観光でもしてるのか? と正直言いたい。進言してくれる仲間はいないのか? これならば監視などいらなかったかもしれないな。
「む……?」
少し空気が変わったのを感じた。
「おおおぉぉ!?」
避けられたのは半分偶然だろう。長年監視の任務についていたからこそ、危機を感じ取る能力が高くなっていたから、反射的に身体が動いたと言える。
「なんだあれは、見えなかったぞ。誰だ……?」
再び勇者の方を見る。思えばこれが一番大きなミスであった、さっさと逃げるべきだったのだ。情報を届けるべきだったのだ。
「勇者だと……? さっきまで弓なんて持っていなかった、今回の勇者は召喚系の能力の持ち主か!? いや、考えている場合ではない、この距離を正確に狙いを付けてくる技があるならさっさと逃げるべきだ」
いつ次の矢が来るかもわからん、そして次は避けられる保証なんてないのだ。
撤退、するつもりで移動しようとしたが、ほぼ移動できなかった。
「結界だと……この距離でいったいどうやって……!? くそ、力技で破って逃げるしかない!」
距離を考えればまだ時間的猶予はあるはず。これは逃がさないための結界だろうが、魔力の効果は離れれば離れるほど落ちる。なら破ってさっさと逃げれば良い。
「いや、逃がさないけどね?」
だが、結界に気を取られている間に、勇者とパーティメンバーだろう二人がもうすぐそばにいた。
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