第二話「いやいやよ」
俺はコーヒーを一口飲み、熊谷に声をかけた。
「おい!例の件だけど、、、。」
熊谷は慌てて駆け寄ってきた。
「有原さん、何か進展があったんですか?」
俺は呆れてうなだれた。
「進展も何もお前、何も考えていなかったじゃあないか、、、。」
「ははは、すみません。でもこの会社を良くしていきたい、という意味では有原さんと同じですよ。」
「だからと言ってなあ、、、。会社の朝礼で何か新しいプロジェクトを立ち上げたいという話だけで無策で俺のところに相談するのはさすがにどうなんだ。」
「少年漫画の主人公っぽいですよね?」
俺は大きくため息を吐いた。
「まあ、いいか。とりあえず案はあるにはある。微生物さ。」
「微生物?うちはたしかに水処理の薬品会社ですが、どういったものを考えているんですか?」
「コストをできる限り下げての微生物の育成剤開発だ。まあ、これから説明するよ。」
「、、、すごい。これなら低コストで微生物を増やせそうだ。」
「だろ?味噌やヨーグルトの生産で出てきた不要な製品液をウチで回収する。それをうちの専門知識で微生物の育成剤とする。菌は微生物の栄養になるし、おそらく条件次第では糸状菌等、廃水処理で悪さをする微生物も抑制できる可能性もある。もともとうちには大量のラボテストで培った分析のノウハウもあるしな。」
「さっそく提案書を書いて上司に提出してみましょうよ。」
「、、、ただなあ。一発で通らないと思うぞ。」
「えっ、なぜですか?」
「画期的な提案は理解できない、気に食わない、でだいたい潰されるんだ。熊谷、お前は上司と仲良いか?」
「、、、普通ですけど。」
「それならお前と仲が良く、かつ上の立場にいる奴に報告してもらえるように説得しろ。結局、人はわからなければ情で動くものなんだよ。」
「、、、わかりました。」
熊谷は少しニヤリと笑って
「でも有原さんも結構情で動いてますよね。私のこと気に入ってるんですか?」
「、、、あまり無駄口叩くと協力してやんねーぞ。」
「すみません。わかりましたー!」
熊谷が嵐のように去った後、俺は1人、残りのコーヒーを胃に流し込み
「、、、ああ、苦え。苦え思い出だよな。」
と、熊谷のことと自分を重ねて
「ああもう、いやなもんだわ。だから人間ってやつは苦手なんだ。」
少し毒吐いて、夜遅くまで資料を読み漁った。




