第6話【霊点回避!定期テスト】前編
『作者の気持ちなんて分かるわけねェだろ!むしろ物語に自分の思想を載せるなんて異常者のする事だぜ。現実とロマンは別に分けて考えるのがマナーだ。主人公と作者は同一人物なのか?自分を投影しているのか?気持ち悪ィったらありゃしねぇ!!そんな精神異常者が何を考えて物語を作ったかなんて分かりゃしねェんだよ。人間はいちいち自分がモダン派かロココ派か考えて生きてンのか?』
「別にそんな難しい話はしていないだろ。いいか、作者の心情なんて大体結末にまとめてあるんだ。ほら見てみろ、なんて書いてある?」
『ミソスープ…』
「そうか。二度と口を開くな」
『√57……』
「お前現代文って知ってるか?」
学生と言えばテスト期間である。
レイラは学園の空き教室を借りて自習をしていたのだが、そうしたらいつの間にか霊達に絡まれ勉強の邪魔をされていたのだ。
勝手に横から口を挟まれるのでうるさい事この上ないが、フラワーが『いいな…アタシは学校に少ししか通えなかったから』と少し重い話をしてくるので、あまり無碍に出来なかったのである。
『レイラちゃんって頭良いわよね。前回のテストの成績も素晴らしかったわ』
『レイラに負けたスートの顔見たかよ!ちょーバカ面。ありゃ傑作だったぜ』
「大したことではない。結局満点では無かったからな、私もまだ未熟という事だ」
『なんと謙虚なのでしょう。現状に満足せずに進み続ける貴女の姿……、まるで極寒の氷柱のように、鋭く美しく幻想的です』
霊達は真剣にレイラを褒めていた。
レイラは「テスト前に氷とか言われるのちょっとやだな〜」と思ったが、まぁ彼に悪気は無さそうなので黙っておく。
「別に私は、前世の記憶で成り立ってるだけだ」
この世界の教養・発展は、前世の日本よりも乏しい。
数学も現代文も日本の高校生レベルだし、科学に至ってはあまり発展していないので、中学生で習うような内容である。日本で言う「英語」に当たる言語授業も無い。
正直前世の知識を持っている身からすれば授業は復習のようなものだし、コツコツ取り組めば試験対策は充分なのだ。
勿論これを一から学ばなければならない他生徒は大変だろうし、それ故レイラは、自身の高成績を謙虚な意味で「当然」だと認識していた。
だからこそ中途半端に手を抜く気もない。
『あらまぁ、本当に謙虚……逆に苦手な教科はあるのかしら』
「あるぞ。歴史や地理は未だに難しい。」
レイラは教科書に視線を落としたまま、カーシマからの問かけに答える。
彼女が地理や歴史を苦手とするのには理由があった。
国や世界が異なれば当然今までの歴史も用語も地形さえも異なるので、前世の応用が利かないのだ。
むしろ応用どころか、前世の知識と混ざってしまうため、混乱しやすくなってしまうのである。
故に苦手…と言うか、不得意なのだ。
『地理や歴史ねぇ……。そうだわ、テスト当日に私達が手伝って差し上げましょうか。分からない問題が出たらこっそり教えてあげるの。』
『おお、いいじゃねーの。アタシらは何十年…下手したら百年とかこの国にいるからな。歴史のそのものと言っても過言じゃないぜ』
「それは過言だろ」
レイラはカーシマとフラワーからの提案に首を振った。
確かに霊能力を使えばカンニングなどし放題であるし、満点を取ることも可能だろう。
しかし、テストとは自身の実力を測るためのものだ。小賢しい真似をして点を取ったとて、それは自分の為にはならないだろう。
それに、前世さえ持たない生徒達が一生懸命向き合っているのだ。自分が実力以外の力で無双してしまっては、彼らに顔向けが出来ない。
「卑怯な手を使って得た勝利に何の意味がある。それで高得点を取ったとしても、私は何も誇れない」
『ふ〜ん、そういうモンかね。アタシは喜んじゃいそうだけどな』
『ふふ、そうね。素敵なことよ。誇れる自分でいたいってことよね。』
「別に、そこまで大層な話では無いがな」
『流石ですレイラ嬢。貴女はいくら悪意に晒されようと、常に気高い白百合なのですね。僕はそんな貴女だからこそ…ぽ…、ぽぽ……、ぽいを、したのです』
「ポイって何だ。金魚掬うやつか」
そうしてレイラは、勉強を再開する。
歴史の教科書を覗き込んだ霊達が懐かしそうに会話をしていて、たまに耳を傾ければ『この時マジで食糧難でよォ』『どの時代も飢饉は辛いですね…』『草とか食ったぜ』『?普段食べてるものよりは健全じゃない』『なんだ、草ですか。クソの言い間違いではなく?』『…?アタシが普段からうんこ食ってると思っている……?』などと経験してきた話や、『この法律はこの頃から出来たのですね』『その法律ね、私の死因とも関係してるのよ』『そなんだ』『やっぱり人が死ぬと歴史って動くのねぇ』『ワハハ(爆笑)』『ドワッ(爆笑)』と関わりにくい話をしているのが聞こえてきた。
レイラはなんだか、ラジオみたいだと思った。




