第3話【やはり幽霊は最悪だ】
第3話【やはり幽霊は最悪だ】
引き続き、レイラの部屋にて。
『お前の親父の部屋覗き見してきたけどよ、テラは謹慎処分ってやつ?らしいぜ』
「そうか。まぁ概ね想像通りだな。」
『なんだか軽いわね。レイラちゃんが陥れられてたらもっと重い処分だったでしょうに』
「……まぁ、あくまで今回はテラの「虚言」という収集になるからな。実際にアナベリ人形を見たのが私とテラしかいないから、盗みの証拠もないし、仕方がない』
『そう。なんだか納得いかないわね。』
「だとしても、下手に騒いで私に追求が深まるのも面倒だ。テラ自身が "何故自分が自白したのか" という真相にに気付いてしまう可能性もある。軽症でとどめてやろう」
フラワーが覗き見をしてきた結果、レイラの父は義弟をしばしの謹慎処分と決めたらしい。彼女に降り掛かっていたリスクと比べれば随分生温いが、これに懲りれば暫くは呪物を仕掛ける気にはなるまい。
それに当分は、父母から義弟への信頼は大きく下がるだろう。発言への信憑性がなくなるし、レイラとしては面倒を回避出来るので、まァ悪くない。
ちなみにあの後、物凄く小さい声で「コーク・リリーさんお帰りください」『帰れコーク・リリー!』『コーク・リリーさん帰ってくださいね。待って、私の片肘を持っていかないで。いや片乳も持って行かないで。というか何で片乳なんですか。首とかでしょ普通』と三人で唱えたのでコーク・リリーさんは帰ってくれた。降霊術は後始末も大事なのだ。
『まァよく分かんねぇけどよ!たまにはそんな日もあるぜ!切り替えてこうぜ!』
「お前はいつもよく分かってないだろ」
『おいレイラ身体貸してくれ!ベッドで跳びたい!』
「……暴れすぎるなよ」
レイラは立ち上がり、フラワーの傍に寄る。
普段だったらこんな怪異界の暴れん坊に身体を貸したくもないのだが、今のレイラは作戦が成功して気分が良いし、それに彼女の力も…多少は、多少の多少は役に立ったので、礼をするべきだろう。
彼女はフラワーの身体を触り、「口寄せ!」と声を上げた。
これぞ霊能力の一つ、【口寄せ】である。
霊を自身の身体に憑依させて、その意志を言葉や行為する術のこと。早い話、霊に身体を貸してやる事が出来る。
フラワーはレイラに身体を借り、久し振りに感じる肉体の感覚にはしゃぐ声を上げた。
「うおお実体!実体だぜ!おい尻を出すな、さっさとベッドに行け、跳べ、尻をしまえ、そして出て行け。レイラぁ…そんなに焦らすなよ、生者には分かんねーぜこの興奮は!」
『レイラちゃん、お尻はしまった方が良いわ』
「私の意思で出してると思われているのか…?屈辱だ……」
レイラの身体が部屋の中を走り出して、それからベッドに勢い良くダイブをする。自分の身体がボヨンボヨン跳ねて、視界の端に銀髪が舞うのが映る。
「お嬢様。廊下まで音が響いております」
「アッ、おいバカ降りろ!痛ェッ!お前何で自分の頬叩くんだよ、叩くだろ!お前が気付くのが遅いからだ!」
「お嬢様…?」
「ほほ、いますぐ降りますわ。嫌だよまだ跳ねさせろよ!嫌だよじゃないが?うるせーアタシはあと三時間は跳ねるぞ。死ぬわそんなの、私まで霊体になるぞ」
「お嬢様…!?」
「今すぐ口を閉じろ!ケツを閉じる?ケツを閉じてどうする口だバカタレ!」
「お嬢様……!!」
あまりの騒ぎに苦言を呈しに来たメイドが、現場を目撃しよろめく。容姿端麗のミステリアス令嬢がベッドでボヨンボヨンしていたら怖いし、挙句一人で会話し始めたらもっと怖いのでそりゃそうである。
このまま目撃され続けたら何らかのトラウマを作ってしまいそうなので、カーシマが急ぎポルターガイストを発動し、扉を閉めてメイドを追い出した。その隙にレイラはフラワーを強制的に身体から追い出し、ベッドから降りる。
「おい!侍女に私が狂ったと思われたぞ!」
『何故……?』
「何でそんな「本当に何で…?」みたいな顔が出来るんだ。怖い、やめろ、せめてショボンとしろ」
『レイラちゃん〜…メイドさん他の人に話しそうかも…』
「おおお詰むまでのスピードが早すぎるだろ。良いか、今から口止めしてくるから絶対騒ぐな、走るな、尻を出すな、なんなら成仏してろ、破ったら殺すからな」
『死んでるのに…』
レイラは部屋を追い出し、先程のメイドを追いかけた。
せっかく義弟の策略をやり込めたのに、これでは「レイラ魔女疑惑」が再燃である。
これだから霊は嫌なんだ。助けて貰った礼をしたつもりが、根本をパーにされている。というか、助けて貰った倍以上に困らせられている気がする。
(絶対に、絶対にいつか成仏させる…!!)
のんびりスローライフの為に、この霊能力はいつか絶対に枯渇させる。そして霊達ともおさらばしてやる。
レイラはそう決意を新たに、走る足を進めるのであった。
第3話【やはり幽霊は最悪だ】
第3話完です。




