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新宿  作者: 竹仲法順
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第95話

     95

 2017年5月29日午後4時2分。月井、今村、それに蓜島も事件現場であるビジネスホテルの客室にいた。互いに撤収に備えながら、作業を続ける。加納猛は本件の重要参考人となり、新宿山手署が緊急手配した。しばらくは捜査員も逃亡中の加納を追うことになるだろう。

 警察も管轄を抜けると、途端に土地勘がなくなってしまう。やはり現場のデカは大変だ。月井も今日一日捜査に加わってそれを痛感していた。明日以降どうなるかは分からないのだが、ひとまず一日の仕事が終わりに近付くとホッとする。

 ホテル内には夕日が入ってきつつあった。夏の日は何かと暑い。歩いてなくても汗が出ていた。もちろん、どこにいても、刑事は夏、汗だくになる。上下ともスーツで何かと蒸すのだし……。

 月井はタブレットのキーを叩きながら、捜査記録を録る。今村はスマホを見ていた。各々仕事にIT機器を使っている。デカは大変な仕事だ。激務をこなしても、公務員としての待遇だけで給料は安い。幹部候補などになる人間は、ほんの一部のキャリア組だけで、月井も今村もノンキャリアである以上、大きな出世はまず望めない。

 午後5時3分。撤収命令が出、月井たちは現場を出て歩き出す。午後6時から捜査会議だ。一日絶えず立ち回ると、疲労が出る。努力や精進などをしながら、毎日を送っていく。人間としては極当たり前のことなのだが、さすがに下積みが続くと辛い。月井も今村も刑事としての立場ではあくまで巡査部長職なので、階級は低いのだが、やったことは必ず報われると思っていた。そう考えないと、警察官という仕事はやれない。ハードワークに身の危険も加わるのだし……。

 新宿の街を歩く。署の前も絶えず人通りが多く、今夜もこの街は盛り上がるだろう。そう思い、署刑事課へと入っていった。会議を前に、胃が痛くなるようなストレスも感じながら……。(以下次号)


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