第93話
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2017年5月29日午後1時32分。月井は客室出入り口のドアノブを調べた。すでに鑑識が事件発生直後、指紋や掌紋等を採取していて、データは取られている。ホシは必ず触れているのだから、岡田殺害の犯人の候補は挙がるはずだ。拭われていても、微量は残っている。殺人事件など、わずかなパズルピースから芋蔓式にホシが割れるのだった。もちろん、月井もそこを見ている。デカの勘だった。原点回帰的なのだが……。
全捜査員が現場に入る際、白手袋を嵌めていて、警察官がホシじゃないとすると、残った指紋・掌紋の持ち主が犯人ということになる。ドア近辺や窓のサッシなど、入念に調べ続けた。一応、鑑識課員が二名ほど出入りし、再調査となる。
暑い季節でも警察官は淡々と職務をこなす。月井も今村もいろんな意味で疲れていた。連日、短眠で仕事が続くのだから……。月井もデータを記録したタブレットで、警視庁刑事部鑑識課のデータベースを閲覧し、採取された事件関係者の指紋や掌紋などを確認していく。
高木梨帆の右手親指と人差し指の指紋もあった。それにもう一人、全くのノーマークだった人間の指紋と掌紋が出てくる。加納猛。岡田の男性秘書で、会社の金銭管理などを担当している人間だった。
「……加納猛。捜査線上に浮上してきましたね」
月井が呟くと、今村も蓜島も頷く。蓜島が、
「マル害の秘書の加納猛をマークしろ」
と言う。すぐに現場の捜査員が動き出した。加納が岡田をビジネスホテルに訪ねて、殺害してもおかしくない。月井が指紋・掌紋照合済みの画面を閉じて、軽く息をつく。警察は加納を岡田徹殺害事件の重要参考人としてマークし、今後動くつもりでいた。引き続き、現場の捜査を続ける。ほぼ休む間もなく……。(以下次号)




