第91話
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2017年5月29日午前11時2分。月井たちはずっと客室内にいて、改めて検証作業などを続けた。月井本人はタブレットを使い、事実関係を整理していく。室内には事件当時の模様がそのまま残っていた。それにこの部屋はヤマが解決してない以上、しばらくは警察官が絶えず出入りし、厳重な現場保全がなされる。
蓜島が、
「月井巡査部長は、捜査畑じゃないんでしょう?」
と訊くと、月井が、
「ええ。街の張り込みなどが主体です」
と返す。
「道理でこういった場に不慣れなわけだ。……岸間警部があなたを現場に差し向けたのは、なぜでしょうね?」
「いえ、それは分かりません。まあ、いろんな経験をさせておくということじゃないでしょうか?」
「それならいいんですが……」
蓜島が言葉尻を濁し、また視界を見渡す。そして軽く息をつき、白手袋を嵌めたまま、立ち尽くした。
「蓜島巡査部長」
「何です?」
「この客室が密室だったということは、犯行後に誰かが外から鍵を掛けたということですよね?」
「ええ、多分」
「ドアノブから指紋は検出されましたか?」
「出てると思います。すでに鑑識が採取してるはずですが……」
「その指紋や掌紋が、事件解決の重大な手掛かりになるんじゃないでしょうか?」
「まあ、原初的で原点回帰的な推理だけど、合ってるとは思いますね」
「じゃあ、後で鑑識関係者に聞いてください。一体誰の指紋・掌紋が残ってたかを」
「分かりました」
蓜島が頷き、また息をついて辺りを見る。屋内のカーペットやテーブルなどに残っていた血液や体液、毛髪などは鑑識が採取し、科捜研で鑑定していると思う。後は状況を推理するだけだ。月井は警察官であるにも拘らず、こういったことが苦手だから、別の刑事に任せて、自分自身は本件に関するデータを集め続けた。直に昼になる。今村と食事などをしながら、話すつもりでいた。今村も事件捜査そのものや、探偵のようなキレのある推理に不慣れで、月井とは何かと馬が合う。似た者同士で。(以下次号)




