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新宿  作者: 竹仲法順
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第86話

     86

 2017年5月29日午前3時。セットしていたアラームが鳴ったので起き出し、ベッドを出る。着ていたアンダーシャツを脱ぎ、洗濯済みのものに着替えて、ワイシャツに袖を通す。ネクタイを結び、上着と充電を完了させたタブレットを持った。何かと疲れているのだが、コーヒーを一杯淹れて飲み、部屋を出る。

 マンションの駐車場に行き、車の運転席に乗ってエンジンを掛けた。まだ午前4時前だ。早朝から出勤する。デカは基本的にハードワークなのだし、月井も条件は付けられない。確かに仕事自体、軟じゃないのだが……。

 今日から現場だ。捜査本部で朝の捜査会議に参加した後、岡田社長が殺害されたビジネスホテルへと向かう。今村も同伴するから、月井もいつも通り、きちんと警察官としての職務を果たすつもりでいた。特別なことはないのだ。単に事件現場で捜査員として捜査するだけで……。

 午前4時過ぎの新宿区は繁華街である歌舞伎町が賑わっているだけで、後は寝静まっているような感じがする。月井にはそう思えていた。違和感はない。街を走りながら、いろんなことを具に感じ取る。デカは心理や状況等を読むことに掛けては達人の域にあって、月井も例外じゃない。

 午前4時25分。月井は新宿山手署に着き、駐車場に車を停めて刑事課にある捜査本部に向け、歩いていった。足取りは重たい。夏の暑さが刑事たちの動きを鈍くしていた。月井もノンキャリアで巡査部長の身だから、これから昇進試験を受けて、階級が上がっていく。

 もちろん、今の地位に甘んじることはない。警察は階級がモノを言うのだし、先輩刑事で上の方まで行っている人もいる。一課長の両角もそうだ。いざとなれば、一課のトップにまで行くノンキャリもいる。そういった人たちの努力は相当なものだろうが……。

 捜査本部の出入り口からは、室内のエアコンの冷気が漏れ出ていた。また今日も新たな一日が始まる。しっかりやるつもりでいた。疲労やストレスは体内に蓄積されているのだが……。(以下次号)





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