第79話
79
2017年5月28日午前7時2分。月井も今村も朝食を取ってなくて、空腹を覚えていたのだが、刑事課フロアに栄養補給用のアイソトニックウオーターのペットボトルが数本置いてあり、軽く含みながら、糖分などを取る。
捜査本部からは一課長の両角や他の警視庁幹部がすでに去っていて、岸間たち班長クラスの人間たちや雑務担当の婦警などが数名いて、新宿山手署は回っている。月井はタブレットのキーを叩き、情報収集しながらも、疲労を感じ取っていた。
事件は二人の害者が出て、警察サイドが右往左往している。だが、月井はヤマ自体を楽観視していた。岡田や高木を葬った人間は必ず警察の捜査網に引っかかる。だから、余計な動揺はしなくていいと思っていた。もちろん、現場の捜査員は必死になっているのだろうが、月井はそれも含めて焦らないという選択肢を取る。
刑事事件はホシとの格闘だ。いざとなれば、拳銃や警棒などで武装し、犯人確保に掛かる。今回の二件の事件も殺人なのだが、物証は驚くほど少ない。デカたちは身構えてしまう。どうしても、だ。そういった時に平常心で事件を追いかけられるかが、最大の命題だと思う。乱暴な方法を取る前に、一つずつ可能性を潰していくことが重要だった。特に事件現場にいる警察官には慌てず動いてもらうことが大事である。月井は常に冷静だった。デカとして透徹したように……。
午前8時20分を過ぎると、フロアにいた刑事たちも徐々に作業効率を上げていく。捜査本部内には無線の鳴る音と、パソコンなどのIT機器の作動音などが混じって聞こえてくる。月井もタブレットのキーを叩き、事件に関する情報を仕入れ続けていた。接続していたUSBに得られた情報を随時コピーしながら……。(以下次号)




