第80話
80
2017年5月28日午前9時4分。月井と今村は互いにタブレットやパソコンのキーを叩きながら、事件に関する情報集めをする。体はだるい。冷房でやられるのだ。普段からずっと外回りばかりで、肉体に熱を帯びることが多いから、こういった時はしんどい。ワイシャツの上から、一枚羽織ることもあった。寒いぐらいで。
目の前の作業に集中する。疲労は大きい。岸間が近くに来て、
「月井君、作業ははかどってるかな?」
と訊いてきたので、
「事件前夜の岡田社長の行動は何かと分かり辛いですね。苦戦してます」
と返す。岸間が今村の方に目を転じ、
「今村君、君はどうかな?」
と訊いた。
「ああ、私も高木梨帆の行動の経緯を調べてるんですが、分かりにくいことがありまして」
「ホステスは不規則な生活が続くからね。……マル害が誰に襲われて水死したかが、肝心なところなんだが――」
一呼吸置き、今村が、
「――入念に調べてみます」
と返して、パソコンの画面に目を戻し、キーを叩き続けた。事件はベールに覆われている。真っ黒に染まってしまっていた。月井も今村も常に耳で無線を聞きながら、作業している。地味な仕事が続く。こういったことをこなすのも警察官の職務の一つだ。現に捜査本部内にも庶務などを行うデカがいて、皆、文句一つ言わず作業に専念する。
午前10時を回り、月井がいったん席を立って休憩する。今村もコーヒーメーカーからコーヒーを一杯注ぎ、飲んだ。互いに疲れている。一息つけば、また仕事だ。通常通りに。昼は署の外のどこかで外食するつもりでいた。空腹も限界に来ると、出来る業務もこなせなくなるので……。(以下次号)




