第77話
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2017年5月28日午前3時。アラームが鳴り、月井はベッドから起き出してワイシャツに着替え、スーツを着た。夏場でもデカはスーツ姿だ。慣れていて気にならない。キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲み、タブレットとスマホを充電器から外して持つ。カバンを持ち、そのまま部屋を出た。
連日、短時間しか眠れてなくて疲れる。だが、刑事はほとんどがそうだ。皆、慢性的な寝不足である。仕方ない。朝淹れるコーヒーはエスプレッソで、ブラックで飲むと、目が覚める。
駐車場から車を出し、新宿山手署の方向へと進めた。ハンドルを握りながら、早朝の新宿を走る。変わったことはない。単に朝の街は空いているというだけで……。月井も疲れていた。だが、仕事が始まる以上、そうも言ってられない。
午前4時3分に署に着き、刑事課の捜査本部に入って、フロアにいた岸間に挨拶する。
「班長、おはようございます」
「ああ、おはよう。……作業開始してくれ」
「分かりました」
月井は頷き、空いていたデスクに座って、持っていたタブレットの電源を入れる。そしてキーを叩き始めた。今日は内勤だ。ずっと捜査本部にいると、ピリピリした感じになるだろう。だが、基本的にどんなことを言い渡されようと、従うしかない。警察でも下っ端というのは扱いが悪い。一々気に掛けてないのだ。所詮コマの一つに過ぎないのだから……。ノンキャリアの一警察官なのだし……。
午前5時を回ると、捜査員が多数出勤してくる。事件捜査中の警察署の朝は何かと喧しく、癇に障るものがあった。決して礼儀正しい刑事ばかりじゃない。アバズレのような人間もいる。気に留めてない。人間など百人いれば、百通りの人格があるのだし……。仕事を続けた。今村が来るのを待ちながら……。(以下次号)




