第59話
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2017年5月26日午前9時。新宿のオフィスビルで、会社の業務などが開始される時間だ。月井も今村も街を練り歩く。歌舞伎町を見て回りながら、岡田社長殺害事件のことを考えていた。現場となったビジネスホテルには依然、警察官が張り付いている。警視庁サイドも応援を出すつもりでいるようだ。事件捜査に力を入れるために、である。
月井たちも朝の新宿には慣れてしまっていた。特に月井は新宿を張るのを普段から本業としている。警視庁の捜査一課の刑事の中でも、予備捜査員の身だ。靴底が磨り減る。知力や体力など、警察官としての高いスキルや捜査能力を持っていても活かす場がない。
ルールーの前に行くと、野際兼子が店の前の掃除をしていた。月井が、
「おはようございます」
と言うと、
「あら、刑事さん。このところもずっと見張りですか?」
と返してくる。
「ええ。我々もずっとこの街で見回りやってましてね。……お店は通常通り営業されてますか?」
「はい。おかげさまで」
「仁子ママも来られてます?」
「ええ。うちは梨帆ちゃんが亡くなってからも特に変わってないんですよ。夕方開けて、真夜中まで営業して、明け方には閉めるっていう」
「そうですか」
月井が一言そう言った後、頷き、
「無理されないように」
と言葉を重ねて歩いていく。今村も一礼し、付いていった。互いに思う。野際姉妹は何かを知っていると。知人が口封じで殺害されているのに、あの平然とした態度はどうか?月井も今村も感じていた。きっと裏で何かあると。だからと言って任同し、取り調べるわけにはいかないのだが……。(以下次号)




