第39話
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2017年5月24日午前3時。アラームが鳴り、月井はベッドから起き出して部屋着を脱いだ。上下ともスーツに着替え、キッチンでアイスコーヒーを一杯淹れて飲む。髪を軽く整え、髭も剃ってから、カバンを持って自宅マンションを出た。まだかなり早い時間帯である。だが、デカは移動の際、夜間や明け方の時間を使う。
車が新宿区内の道路を駆け抜けていく。月井はハンドルを握って運転しながら、新宿の街を見た。まだ、歌舞伎町はネオンが灯っている。夜眠らない街だ。明け方には喧騒も収まるのだが……。
午前4時15分。新宿山手署に着き、建物裏手から刑事課にある捜査本部へと向かう。帳場に入ると、岸間や他の班の班長がいて、パソコンに向かっていた。
「おはようございます、岸間班長」
「ああ、君か。おはよう。……お台場署の讃岐警部から内々に話は聞いてる」
「今日からまたよろしくお願いします」
「ああ、分かってるよ。……朝の捜査会議まで2時間ぐらいあるから、空いてるパソコン使いなさい」
「分かりました」
月井が頷き、近くの空いているパソコンの前に行って座った。マシーンを立ち上げて向かい、キーを叩く。朝から事件についていろいろ調べた。直に今村も来るだろう。毎日長時間拘束なので、疲れてしまう。だが、事件解決まで弱気なことは言ってられない。
午前5時を過ぎると、デカたちが次々と出勤してきた。月井はキーを叩きながら、調べ物を続ける。別に気分が上がろうが下がろうが、仕事は続く。刑事など、所詮そんなものだ。月井も半ば悟りきっていた。あまり考え過ぎず、淡々と職務を続ける。
午前5時15分。今村がやってきた。
「おはようございます、月井巡査部長」
「ああ、おはようございます、今村巡査部長」
「朝早いですね」
「ええ。午前3時起きですから」
月井がそう言って、パソコンのディスプレイに目を落とす。疲れていたのだが、スーツを着ているから、身は引き締まる。すぐさま今村も空いているパソコンの前に座り、データ保存用のUSBを差し込んで、仕事を始めた。
夏の事件捜査は過酷なのだが、慣れるとそうでもない。もちろん、疲れは溜まる。月井も時折席を立ち、コーヒーを淹れて飲みながら、意識を覚醒させた。寝不足なのだが、気を入れて仕事する。暇はない。目の前の自分のことで手一杯で。(以下次号)




