第29話
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2017年5月22日午後2時10分。月井と今村はお台場署刑事課の捜査本部にいて、出されたコーヒーを飲みながら、所轄の捜査員が戻ってくるのを待った。讃岐が、
「月井君、君は確か新宿区担当だよな?」
と訊いてくる。
「ええ。普段はずっと街に張り付いてます」
「今回の新宿での岡田徹殺しが、そのまま高木梨帆殺害へと至ったのか?」
「そうですね。……私は二つの事件の関連性を徹底して調べるべきだと思います」
「まあ、そうだな。……よくない連中が尊い人命を奪ったことも大いに考えられるし」
讃岐がそう言い、苦い顔をする。月井は昔から知っているから、この男の表情の特徴を心得ていた。大抵こういった苦い顔の時は腹が立ってしょうがないといった感じである。今村は胃腸の調子が本復したようで、コーヒーを啜りながら、頭の冴えた快適な顔をしていた。
午後2時25分。捜査員が捜査本部へ入ってきた。まだ立ち上がったばかりで、正式な旗揚げは一課長の両角や理事官の田川など、上の人間が来てからである。
午後3時から最初の捜査会議が開かれた。両角も田川も、他の上の人間も来ていて、気が引き締まる。会議の最後に、讃岐が、
「本件は新宿歌舞伎町のクラブ、ルールーのホステス高木梨帆が何者かにより口封じのため、殺害された可能性が高いヤマだ。何としてでもホシを挙げる。解決できなければ、警視庁の信頼と捜査力は地に落ちたも同然だ。しっかりやってくれ。では散会!」
と言うと、捜査員が各々立ち上がり、散っていく。会議は目立った物証等が出た話もなかったのだし、現段階ではまだ捜査が始まったばかりだ。月井が、
「讃岐警部、我々新宿山手署組は?」
と言うと、讃岐が、
「ああ、君たちはパソコンで情報収集してくれ。普段は外回りに慣れてると思うのだが……」
と言い、捜査本部にあるデスクトップ型のパソコンを貸し出す。月井も今村もしばらくずっとマシーンに向かい、キーを叩きながら、検索などで情報を洗い出した。高度なIT社会は情報機器が発達していて、分からないことなどほとんどない。
午後4時32分。月井がいったん席を立ち、コーヒーを淹れ直して飲みながら、作業を続けた。今村もパソコンに向かっていて、よく見ると、目が充血している。別に疲れすぎてるわけじゃないようだ。事件について地味に調べている。
高木梨帆は港区のマンションから蒸発した後、今度は同じ港区のお台場にて水死体で見つかった。やはり岡田徹殺しで、志村浩と結託して殺害を実行した後、何者かにより口を封じられたのか?ずっと気になっていた。もちろん、お台場の現場から証拠品などが出るのは時間の問題だし、鑑識や法医学班が解析や司法解剖などをすれば、高木がどういった形で死に至ったのかはすぐに分かることなのだが……。(以下次号)




