第26話
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2017年5月22日午前9時40分。月井と今村は車に乗り、品川に本社がある帝都物産を目指した。短時間で着くだろう。朝のラッシュは終わっていて、余裕を持ち、月井が車両を運転する。
午前10時15分。車が本社前に着き、月井たちは車両を出た。そして社ビルへ歩き出す。エントランスに入り、受付で警察手帳を提示して、志村浩が出勤しているか、座っている女性に尋ねると、すぐに志村のいる第一物流係へと通された。
髪を整髪剤で綺麗にセットして、デオドラントの香りを漂わせた、色黒の30代男性がすぐにやってくる。
「私が志村ですが」
「ああ、初めまして。警視庁捜査一課の月井です」
「新宿山手署刑事課の今村です」
「刑事さんが私に何の御用で?」
志村の視線の行く先を見ながら、月井が軽く頷き、
「岡田徹さん、ご存知ですよね?」
と訊いた。
「岡田……徹?聞いたことのあるような、ないような名前ですね」
「つい先日、殺害されたんです。新宿のビジネスホテルの一室で」
「……」
「ご存知ですか?」
「うーん。私も自分の仕事が手一杯で、ニュースなんかもろくに見ないんですよ。ましてや殺人事件なんて、全く知らないですね」
「そうですか。……実はあなたのDNAが現場から検出されましてね」
「DNA?」
「ええ。我々警察はあなたが事件に関与したんじゃないかって疑ってまして」
「ちょっと待ってくださいよ。いくらなんでも、私がその岡田って人を殺すなんてあるわけないじゃないですか」
「令状を取って捜索するか、任意で聴取してもいいんですよ」
「……」
志村が黙り込む。今村が、
「高木梨帆さんって方をご存知ですか?歌舞伎町のルールーってクラブのホステスさんです。この人の毛髪も現場に落ちてました」
と言い、口元を引き締めた。志村が、
「その高木って女性も知らないな。歌舞伎町には行くけど、ルールーってクラブには行ったことありませんよ」
と言って息をつく。額がジンワリ汗ばんでいる。精神性発汗だろう。だが、これだけで警察に出頭してくれとは言えない。物証は単にホテルにあったDNAだけだ。警察も乱暴な捜査は出来ないのである。
「仕事に戻らないといけないので、今日のところはこれでいいですか?」
志村がそう言って一礼し、フロアにあるデスクへと歩いていく。月井たちも志村が何かを知っていると踏んだ。具体的に事件に関することかどうかは別だったが……。月井が今村と歩きながら、
「……何か隠してますね」
と囁く。今村が頷き、二人は揃って車へと向かった。ほんの20分ほどの時間だったが、収穫はあったと思える。月井の意識は確信に至っていた。十分なほどに。(以下次号)




