第八話
「相棒ー!なんてっこた…」
いつも通り、枝拾いに水汲みなど終えた後、アリスとコミュニケーションをとっていたら、相棒の行方が明らかになった。
「レン…ゴメンね…」
アリスがとても申し訳なさそうに謝罪してくる。『大丈夫だよ』と返答しても落ち込んでいる。そんな顔をさせたかった訳ではないのだけれども…。
真相はこうだ、薪にされた。以上。それ以上でも、以下でもない。
森の外で情けなくも助けてもらったとき、アリスはちょうど枝拾いをしにきたら、俺を拾ったという訳だ。おそらく枝が足りなかったので、そのまま相棒を燃料にしたのだろう。俺としては助けて貰った恩の方が圧倒的に大きいので、そんなに落ち込まないで欲しい。いや、そんなに叫んだ俺が悪いか…。
「アリス、本当に気にしてないんだ。叫んでゴメン、その元気だしてくれ!」
美少女の同居人となれば、顔色はどうしても窺ってしまう。男として恰好よくいたい。ややヒモだけど……。雰囲気は明るく楽しくだ。しかし、こうも一緒の時間が長くなると、言葉は通じなくても、ニュアンスで伝わる事も増えてきた。誤解も増えるだろうが、今のところ万事上手くいっている。
「レン、ありがとう、それじゃあ行ってきます。」
今日は数日に一度の頻度である外出だ。もちろん俺はお留守番である。毎日せっせと刺繍を施したハンカチをどこかに売りに行くのだろう。この家の大黒柱である。大変情けない。
「アリス、気を付けて、行ってらっしゃい」
そういってアリスを送り出した。
(アリスが返って来るまで大体二時間程…今日は何をするべきか…)
日々のルーティーンは最初こそ時間がかかっていたが、怪我や体調も元通りとなれば、そんなに時間はかからない。アリスみたいにお金になる技術もないので、今日は枝を集めて箒を作成し、家の中を掃除することにした。
「よし、掃除はこんなもんか?箒はいざとなれば薪になるから…まぁ邪魔にはならないだろう。よろしくな新しい相棒」
そんな独り言を言いながら、箒を外に置きに行くと、ちょうどアリスがルンルン♪という感じで帰ってきた。最初期に比べるとお互い明るくなったと思う。食事なのか、人との関わりなのか、いやその両方だろう。
「アリスお帰り、荷物が多いな?」
「レン、ただいま。」
アリスは沢山お買い物してきたからか、ホクホク顔である。
(しかし、こんな大荷物で帰って来たのは初めてだ。何を買ってきたんだ?)
家の中に入って、アリスが荷解きをして俺に服と手斧を渡してきた。服はアリスが着ているような麻ではなく、布でできた服だ。上下別れていて長ズボンと長袖である。
「え?俺に?本当にいいのか?ありがとう!!」
アリスは嬉しそうにコクコクっと頷いて、さらに手斧で薪を割るジェスチャーをしてきた。
(枝拾いは正直効率が悪くなってきていたし、薪なら効率もいいし、売りに行くこともできるかもな)
「本当にありがとう。これでバンバン薪割って来るよ!」
これで薪が売り物になるのなら、やっと収入源をアリスだけに頼らなくていいのだ、やる気に満ち溢れること、この上ない。
「服、一緒、薪売れる、一緒に行こう?」
アリスからそんな提案があった。どうやら喪服では怪しまれるのだろう、現地の服を着ていくのが一番馴染むはずだ。だから最初は同行禁止だったのだろうか。
「アリス、俺の為にありがとう。自分のモノは買ってないのか…?」
そう、こんな状況で自分のモノだけだと少々バツが悪い…。そう思っていると『外に出てて』とアリスがいう。分かったと、素直に外で待機していると、アリスが着替えて出てきた。
「アリスも買ってたのか!よかった。それにその服もよく似合ってるよ!最高だ!」
アリスも布でできた服を買っていたようだ。今まで通りワンピースタイプであるが、麻と比べると体のラインに沿って流れるそれは、アリスの魅力をより一層引き立てている様だ。色は茶色だ。もっと女の子らしい色が似あうだろうが、今の暮らしだと茶色の方が都合がいいのだろう。
(よし、次の目標は生活の質向上と、アリスにお返しだな!)
別にそういう関係ではない、だがアリスを幸せにしたいとそう強く思った。文字通り命の恩人だ。麻の服が普通かと思った事もあったが、今日のをみるとやはりそうではないらしい。一人で苦労をしていたのだろう。手斧も貰ったからには絶対に目標を達成してみせる。




